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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第六章 エルドラの迷宮森
125/207

125. 魚

 ルディアンは冷静な表情を保ちながらも、わずかに目を細め、しばし沈黙した。そして、慎重に考えを巡らせた末に口を開く。


「どうしてそう思う?」

「……俺のレクス・ソルヴィールがそう告げている」


 その言葉を聞いた瞬間、ルディアンの瞳がかすかに揺れた。驚きを隠し切れず、それでもすぐに平静を装い、表情を整えた。


「なるほど。それで、仮に私のソルヴィールが古代魔法具だとしたら――君はどうする?」

「渡してほしいとは言いません。ただ――必ず守ってください。そして、万が一の時は、俺たちを呼んでください」


 ルディアンは薄く微笑むと、肩を軽くすくめた。


「わざわざそれを言いに来たのか?」

「はい」

「闇の魔法使いたちが動いていることは知っている。だが心配には及ばない。この屋敷には私以外にも、腕利きの魔法使いがいる」


 ルイは短く頷いた。


「わかりました」


 三人は紅茶を飲み終えると、立ち上がりリヴァース邸を去ろうとした――その時、エマが小さな声で呼びかけた。


「あの……」


 ルディアンは立ち止まり、振り返る。


「なんだい?」

「もしかして……ノアくんのお父さんですか?」


 ルディアンの表情に、ほんの一瞬驚きが走る。


「ノアを知っているのか?」

「あ、はい。マーレディア・アカデミーで一緒にボールパーティに行ったりしました!」

「マーレディア・アカデミーで?……そうか、ノアの友人だったのか」


 彼の瞳に柔らかな光が宿り、表情が少し和らいだ。


「その年齢でマーレディア・アカデミーに行ったことがあるなんて、大したものだ。ノアと仲良くしてくれてありがとう」

「いえ、むしろ私の方が助けてもらってばかりで……。もし帰ってきたら、よろしく伝えておいてください!」


 ルディアンは微笑みながら頷いた。


「もちろんだ。ノアが戻ったらまた遊びにおいで」

「はい!」


 そうしてルイ、エマ、そしてニヴェラはリヴァース邸を後にした。


「それで、どうするつもりなんだ?」


 ニヴェラは魚を頬張りながら、ルイに視線を向けて尋ねた。


「どうもしない」

「全部集めるんじゃないのか?」

「集める。だが、すでに誰かの手にあるものを無理に譲ってもらう必要はない。闇の手に渡らない限りはな。まずは他の古代魔法具を集め終わってからだ。その時に、もう一度会いに行けばいい」

「なるほどな」


 ニヴェラは納得したように小さく呟いた。


「物資を調達したら、次の目的地に向かおう」


 ルイの言葉に、ニヴェラは一瞬寂しそうな顔をした。


(ニヴェラって、こんな表情もするんだ……もしかして魚料理が本当に好きなのかも?)


 彼女の意外な一面を知ったエマの心に、小さな笑みが浮かんだ。

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