表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/207

118. ゼピリア族

 その後、ルイとエマは魔法のほうきに乗り、ニヴェラの後を追った。


 ニヴェラは元の人間の姿に戻っていたが、ほうきを使わず空を滑るように飛んでいる。その優雅な動きに、エマは息を飲んだ。


 オルケードの結界を越えたところで、ルイが尋ねた。


「テンペスト・ソルヴィールは、オルケードの外にあるのか?」

「外ではない。オルケードは雲の国。分裂した領域も存在するのだ」


 ニヴェラは冷ややかに言葉を返す。


 ルイがさらに口を開く前に、ニヴェラは怒りを込めて言い放った。


「それより……まだ納得していない。ところでそのガキは何だ?」


 ニヴェラの視線が5歳児の姿に変わったエマを鋭く射抜く。


「あ、私は……その……」


 困惑するエマの肩をルイが軽く押さえ、冷静に言った。


「こいつは俺の妹だ。エマだ」


 ニヴェラはあからさまに眉をひそめた。


「古代魔法具を集める旅に、そんなガキを連れ歩くなんて正気の沙汰じゃない」

「エマは必要な存在だ」


 ルイの声は断固としていた。


「必要だと? 何の理由があって?」

「それは――」


 ルイの答えを遮るように、ニヴェラは不満げに首を振った。


(すごく綺麗な人なのに……めちゃくちゃ怖い……)


 エマは心の中で小さくつぶやいた。


 しばらく飛ぶと、遠くに雲の結界が見えてきた。霧のように白く輝き、その中央に光る何かが浮かんでいる。


 「あれか……」とルイが呟いた。


「あれだ。オルケードの守護者にしか見つけられない場所だ。結界に入ってテンペスト・ソルヴィールを取ってくる。お前たちは外で待て」

「わかった」


 結界の前でルイとエマが待つ中、ニヴェラは結界をすり抜けるように中へと入り、中央に置かれたテンペスト・ソルヴィールを手に取った。


 次の瞬間、彼女はそれを胸元に押し当てた。すると、魔法具が光と共に彼女の体へと吸い込まれていく。


「えっ……!?」


 エマは息を呑んだ。


「さすがゼピリア族。隠す方法も洗練されている」


 ルイの言葉にエマが振り向く。


「ゼピリア族って?」

「風の魔力を宿す一族だ。普段は普通の姿だが、戦闘時には脚がワシの鉤爪になり、背中に光の翼を展開する。彼らは風そのもの。速度では無敵とされている」


 やがて、テンペスト・ソルヴィールを隠したニヴェラが結界を抜け、二人のもとへ戻ってきた。


「テンペスト・ソルヴィールは、私が一時的に預かる。今からソレイナの殿堂へ戻るぞ」


 その声は冷徹だが、どこか使命感が宿っていた。ニヴェラは再び空へ舞い上がり、ルイとエマもその後を追ってオルケードへと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ