115. ソレイナの殿堂
翌日、ルイとエマはオルケードへの招待状を書いてくれた人物に会うため、再び街を訪れた。
ルイに導かれてたどり着いた場所は、前日に目にした天空を支える女神の姿をかたどった建物だった。
「え、ここ?」とエマは驚いて声を上げる。
「ああ。『ソレイナの殿堂』だ。この中にいるはずだ」
そう言うと、ルイは女神像の足元にある重厚な扉の横に小さな入口を見つけ、開けた。
中に入ると、目の前には天井へと続く螺旋状の階段が現れた。二人は階段を登りながら、壁に刻まれた古代の紋様と、柔らかな光を放つ魔法の灯火に目を奪われた。
長い階段を上りきると、広々とした円形の部屋にたどり着いた。天井と壁には、太陽、雲、そして天使が壮麗な筆致で描かれ、神々しい模様が柔らかな光に浮かび上がっている。
エマが部屋の中央に足を踏み入れた瞬間、冷たい空気が流れ込み、静寂を裂くように誰かが現れた。
そこにいたのは、長い金髪を背に流し、白と金を基調とした神聖なローブをまとった女性だった。腰には風を象徴する羽根の紋様が刻まれ、腕には金の腕輪が巻かれている。
彼女の瞳は琥珀色に輝き、その視線には冷ややかな威厳が宿っていた。
「我が殿堂を訪れる者たち……名を名乗れ」
その声は柔らかさと威圧感が同居し、部屋全体に響き渡った。
エマは息を呑んだ。目の前の女性の姿はあまりに美しく、しかし同時に凍えるような緊張感を彼女に与えていた。
ルイが一歩前に進み、静かに口を開いた。
「俺の名はルイ。ゼファン・カリストに会わせてほしい」
「ゼファンに……? 何の用だ?」
「テンペスト・ソルヴィールについて話を聞きたい」
「テンペスト・ソルヴィールだと……? お前たちは何者だ?」
「ただの旅人だ」
「旅人、か……」
その言葉とともに、彼女の背中から突然、大きな光の翼が広がり、脚は鷹の鉤爪のように変化した。
「敵はこの場で排除する」
琥珀色の瞳が冷酷に細まり、容赦なき判断が彼女の全身に満ちていた。