表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/207

112. オルケード

 翌朝、ルイとエマはオルケードの国立図書館へと向かった。


 ルイの怪我はすっかり治り、エマは初めて見る雲の上の国の散策に心を躍らせていた。


 宿の扉を開けて外に出ると、彼女の目に飛び込んできたのは、絵本のように広がる幻想の風景だった。


「わあ……!」


 辺り一面に雲が広がり、その上に整えられた歩道がふわりと漂う。雲でできた塔のような建物が点在し、虹で編まれた橋が空中をまたいでいる。淡い光がどこからともなく差し込み、街全体が神秘的な輝きに包まれていた。


 エマは思わず立ち止まり、足元の雲をそっと触れた。


「ぷにぷに……!」


 指先が弾む感触に驚き、次は恐る恐る足を乗せる。


「この雲の上、踏んでも本当に落ちないの?」

「大丈夫だ」


 ルイは短く答えると、先に歩き出した。


 エマはもう一度足を押しつけ、今度は大胆に跳ねてみた。雲の感触はふかふかのクッションそのもので、優しく受け止めてくれる。


「わあ、これ楽しい!」


 エマは思わずぴょんぴょんと跳ね回り、ルイに駆け寄った。


「図書館に向かうぞ」

「はーい!」


 元気よく返事をし、二人は肩を並べて歩き始める。


 少し歩いたところで、ルイがふと立ち止まった。


「肩車でもするか?」

「えっ!? ……べ、別にいいよ!」


 エマは顔を赤らめて首を振るが、ルイはお構いなしに彼女をひょいっと肩の上に乗せた。


「わ、わわっ!」


 一瞬の驚きの後、エマは高い視点から見渡せる景色に目を輝かせた。


「すごい! こんなに遠くまで見えるんだね!」

「楽しそうだな」


 ルイの口元に笑みが浮かぶ。


 エマはふいに真剣な表情になり、口を開いた。


「ねえ、ルイ。ちょっと聞きたかったんだけど……」

「どうした?」

「旅のお金……ずっとルイに払ってもらってたけど、これまでどれくらい使ったの?」


 ルイは肩越しにちらりとエマを見上げた。


「気にするな。エマの実家に何年も世話になったお礼だ。それに、俺には莫大な遺産がある」

「そ、そっか……ありがとう……」


 エマは心の中でこれまでの旅を振り返り、少し身震いした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ