102. 新たな目的地
ルイとエマは、古代魔法具『フロスト・ソルヴィール』と『フレア・ソルヴィール』を手に入れたこと、そして闇の魔法使いとの遭遇について学長に報告した。
学長は目を細め、しばらく二人を見つめてから、ゆっくりと頷いた。
「さすがじゃ。二人とも無事で何よりじゃ。そしてその古代魔法具、上手く隠しておるな。ルイくんの首にかけたソルヴィール……ワシの目でも、古代魔法具であると見抜けん。見事な擬装魔法じゃ」
学長は重々しく続けた。
「闇の魔法使いとの遭遇は避けられんと思っておったが……奴らも古代魔法具を集めておるようじゃな。おぬしらが遭遇したのは――」
学長の声が一瞬低くなる。
「ノスヴァルドであった可能性が高い」
エマは息を呑み、ルイは眉をひそめる。
「ノスヴァルド……?」とエマはそっとつぶやいた。
学長はゆっくりと頷いた。
「人の体を乗っ取ることで、奴は長い年月を生き延びておる。狡猾で強大な魔法使いじゃ。その目的は永遠の命と魔法界の支配……おそらく、いずれまたおぬしらの前に立ちはだかることになるじゃろう」
部屋の空気が重く沈む中、学長が突然表情を和らげた。
「ルイくん、知っておろうが――一度、空を目指してみてはどうじゃ?」
ルイは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに少し困ったように視線を落とした。
「目指したいとは思っているのですが……」
「雲の上に浮かぶ国、オルケードのことじゃろう? 雲が動くのと同時に国も動き、たどり着くのは至難の業……そう言いたいのじゃな?」
ルイが頷くと、学長は懐から方位磁石のような魔法道具と封筒を取り出して見せた。
「これが、その国への道しるべじゃ。わしの古い知り合いが手配してくれた。招待状もある。結界が張られておるから、これなしでは国に入ることすらできん」
「本当ですか?」
「その国には、古代魔法具に関する数多くの文献がある。破壊する方法も含め、何かしら役立つ知識が得られるやもしれん」
ルイは深々と頭を下げた。
「本当に感謝します」
「これくらいしか力になれんからのお」
学長はにっこりと笑った。
学長室を後にし、ルイとエマはルイの部屋へと戻っていた。
「次の目的地への到着まで、かなりの時間がかかるかもしれない。必要な物を揃えたら、すぐに出発しよう」
「うん、わかった。少し買い物に行って、すぐに戻るね」
そう言って、エマはクロを連れて久しぶりにアルカナ魔法学校内のショップへと向かった。