101. ドラゴン
列車でアルカナ魔法学校へ戻ったエマとルイは、学長室の前に立っていた。
「またドラゴンがいたりして……」
「まあ、いたとしても大丈夫だ」
ルイは軽く笑い、学長室の扉をノックして開けた。だが、部屋の中は静まり返り、学長の姿はない。
「いないね……」
エマは首をかしげた。
「ここにいないなら、おそらくあの場所だろう」
ルイはそう言うと、杖をひと振りした。次の瞬間、二人はアルカナ魔法学校にある魔法生物の飼育施設の前に立っていた。
施設の空気は冷たく、奥から奇妙な鳴き声が響く。
「学長って、本当に危険な魔法生物が好きなの?」
「変な生物を集めるのが趣味らしい」
ルイが肩をすくめながら答える。
二人は施設の最上階まで登り詰めた。厳重に封印された扉が目の前に現れる。「用心しろ」とルイが言い、ゆっくりと扉を開けた。
その瞬間、エマは息をのんだ。そこには三つの頭を持つ巨大なドラゴンがいた。
目がギラリと光り、鋭い爪が床を引き裂く音が響き渡る。ドラゴンは鎖につながれているが、その巨大な身体が放つ圧力に、エマは立ち尽くした。
「学長、いますか?」
ルイが平然と問いかける。すると、ドラゴンの頭の間から、学長がひょっこりと顔を出した。
「おお、よく来たね!」
学長は満面の笑みを浮かべるが、次の瞬間――。
ドラゴンの爪が学長を襲う。しかし、彼の周囲には透明なバリアが張られており、傷一つつかない。
「それで、旅の調子は――」
学長が話しかける間にも、三つの頭が同時に火を噴いた。だが、彼の笑顔は変わらない。
「……ここでは話しづらいのお」
学長が手を叩くと、瞬きする間に、三人は学長室に戻っていた。エマの顔色は青ざめたままだ。
「エマ、大丈夫か?」とルイが心配そうに尋ねる。しかし、エマは返事をせず、何とも言えない表情を浮かべたままルイを見つめるだけだった。