10. 新しい友達
翌年の9月、エマはついにアルカナ魔法学校への旅立ちの日を迎えた。
ロンドンのアストラル・ターミナルで列車に乗るため、朝早くから準備を整える。お気に入りのカーディガンを羽織り、ルイから合格祝でもらった銀の髪飾りをつけた。それは繊細な花のデザインで、光に当たると柔らかく輝き、エマのお守りのように感じられた。
アルカナ魔法学校から送られてきた列車のチケットがカバンに入っているのを確認し、両親にセント・パンクラス駅まで車で送ってもらった。
「気をつけてね、エマ」
両親に見送られ、エマは心を落ち着けながらターミナルへと向かった。ルイは学校の寮に滞在しており、今日は初めて一人で人間界から魔法界へ移動しなければならない。
以前ルイに案内された通りターミナルに着くと、『アルカナ魔法学校行き』と書かれた列車があった。
「これが魔法界への列車……!」
エマが見惚れていると、近くの案内人がチケットを確認してくれた。
「こちらの車両へどうぞ。安全な旅を」
エマは感謝の言葉を述べ、車両の中へと入って行った。豪華な内装の座席に腰を下ろすと、まもなく列車が動き出した。窓の外にはロンドンの風景が広がり、それが次第に不思議な霧に包まれていく。
しばらくすると、エマのすぐ近くの席に同い年くらいの女の子が座った。彼女は淡い金髪を肩下まで伸ばし、青いリボンで軽く結んでいた。笑顔でエマに話しかけてくる。
「ねえ、もしかして、アルカナ魔法学校の新入生?」
突然声をかけられ、エマは少し驚きながらも微笑んで頷いた。
「うん、そうだよ」
「私も! ルミナス・カレッジに所属予定よ……あなたは?」
「えっ、私もルミナス・カレッジ!」
その瞬間、二人の間にあった緊張が解け、一気に話が弾み始めた。女の子の名前はソフィア・ラヴィン。先祖代々光の魔法を得意とする魔法使いで、幼い頃から光の魔法に親しんでいたという。
「エマは、何の魔法が得意なの?」
「私はまだ練習中で……。最近、少しずつ炎の魔法が上手くなってきたところ」
「そうなんだ! きっと一緒にいろんなことを学べるね」
ソフィアの明るい性格に引き込まれ、エマは旅の不安を忘れ始めていた――。