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地味なお姉ちゃんに毎日可愛いって言ってみた。

作者: 雪解涙雨

閲覧ありがとうございます。

初投稿で色々と拙い所が多々あると思います。

よければ最後まで読んで頂けると嬉しいです。

「お姉ちゃんってかわいいね‼︎」

「可愛くないよ」

「かわいいよ‼︎」


 必死に訴えるけど今日もお姉ちゃんは困ったように笑うだけ。

 お姉ちゃんは自分がかわいいってわかってくれない。

 でも諦めない‼︎

 お姉ちゃんが自分のかわいさに気づくまでおれがずっと可愛いって言い続けるんだ。

 

――

 

「どうしたのソラくん……大丈夫?」


 声のした方に顔をあげるとお隣の小春お姉ちゃんがいた。

 お姉ちゃんも傘を持ってなかったみたいで、制服や髪から雫がぽたぽた垂れている。


「……家の鍵忘れちゃって入れない」

「……お父さんとお母さんは?」

「お仕事」

「そっか……ソラくんも私もびしょ濡れだしとりあえず私の家であったまらない?」

「でも……迷惑かけるかも」

「あ〜……我儘言うとねお姉ちゃん家に1人って退屈なんだ、ママはお仕事だし友達もいないし……だからさソラくんとおしゃべりしたいな」

「……じゃあ、お邪魔します」

「ありがと、お邪魔されまーす」


 そう言ってお姉ちゃんは家に入れてくれた。

 そのあとお風呂を沸かしてくれて、お姉ちゃんと2人で入った。

 湯船の中で幼稚園であった事とか好きなものの話した。

 お姉ちゃんは嫌な顔一つせず聴いてくれた。

 お父さんもお母さんも帰ってくるのは夜だし、自分の話を誰かが聞いてくれたのは久しぶりだった。

 お風呂から出たあとは、乾かしてくれた服をきて、お姉ちゃんと遊んで、お姉ちゃんがつくってくれたハンバーグを食べた。

 ハンバーグをつくっている時にお母さんに電話していたらしく、お母さんもう少ししたら迎えに来るってと言っていた。

 時計の長い針が3から5に変わる頃にお母さんが迎えにきた。


「ごめんね小春ちゃん、そらのこと見てもらって」

「いえいえ、暇だったので……」

「……じゃあまた遊びに行ってもいい?」

「いいよ、おいでー」

「本当に大丈夫?小春ちゃん?」

「全然大丈夫ですよ、ホントに暇なので」

「そっかありがとうね、正直すごく助かるわ……ほら天もお礼」

「うん、ありがとうお姉ちゃん」

「お礼ちゃんと言えて偉いね、いつでもおいでね」


 頭を撫でてくれるお姉ちゃん。

 目があって笑いかけてくれた。

 長い前髪とメガネに隠されている目はとっっても綺麗で、笑顔がすごく可愛かった。

 おれはその時初めて女の子を可愛いって思った。


 それからよくお姉ちゃんの家に遊びに行った。

 お姉ちゃんと遊ぶようになってからお姉ちゃんのかわいい所たくさんを見つけた。

 物知りのお姉ちゃんはいろんな事を知っている。

 僕に話している時はとても楽しそうで普段は見えないお目々がキラキラしている。

 しっかりしているお姉ちゃんは天然さんでたまに変な失敗をする。

 それ間違ってるよと教えてあげると、


「……わかってもん……あえて言わなかっただけだし……」


 そう言って顔を真っ赤にして否定する。

 そんな子供っぽいところもかわいい。

 近くの公園で一緒に遊んでいる時猫を見つけたお姉ちゃんは猫に話しかけていた。


「ニャッニャッ……ンーン……ナァォ」


 猫が鳴くととその鳴き声を真似ていた。

 側から見るとホントに会話してるみたいだったけど、猫は飽きたのか逃げていった。


「あーっ……行かないでぇ……」


 かわいそうと思ったけどそんなお姉ちゃんも可愛いと思った。


 

 毎日お姉ちゃんの家に通って4回目の日曜日が過ぎたあたりで思い切って言ってみた。


 「お姉ちゃん‼︎大人になったら結婚してください‼︎」

「わぁ嬉しいなぁ……でもねそういう事はもっと可愛い娘に言ってあげて」

「お姉ちゃんはかわいいよ」

「可愛いくないよ、小学生の時ブスって言われてたし……今だって直接は言わないけどみんなそう思ってるよ……ソラくんは私しか知らないからだよ。」


 そう言ってお姉ちゃんはおれの頭を撫でた。

 お姉ちゃんは多分、自分のかわいさに気づいてないんだと思った。

 おれは知ってる。

 お姉ちゃんは髪をあげるとお人形さんみたいな綺麗なお顔をしてる事。

 何度か一緒にお風呂に入ってるから分かるけど全然太ってないし、お肌も綺麗だった。

 人前だとあまり話さないからわかりづらいけど綺麗な声をしていて、読み聞かせを聞くのが楽しい。

 何よりおれが知ってる中で一番優しい。

 同い年の女の子なんていつもおれに意地悪してくるから可愛いなんて思わない。

 何よりおれはお姉ちゃん以外の女の子を可愛いって思った事がない。

 だからおれがお姉ちゃんはかわいいんだって教えてあげないと‼︎

 それから毎日お姉ちゃんにかわいいって言い始めた。


 

「お姉ちゃん‼︎今日もかわいいね‼︎」

「……可愛くないよ」

「かわいいよ‼︎」

「……見る目ないよ君」

 ちょっと照れてる?


 

「お姉ちゃんはおれが知ってる女の子で一番かわいい‼︎」

「嘘だぁ……幼稚園にいるじゃんめっちゃ可愛い子……ユウナちゃんだっけ?」

「ユウナちゃん⁉︎全然かわいくないよ‼︎いっつもおれはやりたくないのにおままごとに無理やり混ぜるんだ‼︎おれは犬役がやりたいのにいつもお父さん役で、お母さん役のユウナちゃんに怒られるんだよ⁉︎」

「……可愛いと思うけどなぁ……」

「お姉ちゃんの方こそ見る目ないよ……」


 

「お姉ちゃんって綺麗な髪してるよね‼︎」

「……よくお化け見たいって言われるけど」

「そんな事ないよ‼︎……お姉ちゃんが寝っ転がると髪が広がるでしょ?それが太陽の光に当たるとすごくキラキラ光るんだ‼︎宝石みたいに‼︎」

「……ふーん……ありがとう」

「どーいたしまして……あとお耳赤くなってるの可愛い‼︎」

「うるさいよ」

 


「お姉ちゃんって小さな春って書いてこはるって言うんだね‼︎お姉ちゃんにぴったりな名前だし、かわいい‼︎」

「……別に気を使わないで良いよ……よく言われるもん、こんなに暗いのに小春って……名前負けじゃんって……」

「そんな事ないもん‼︎……雨に濡れて寒くて、心細くて、不安で、そんなおれをお姉ちゃんはおれが遠慮しないように気を遣ってくれて……しかもとっても優しくて暖かくて……だから全然負けてないし‼︎ていうか勝ってるし‼︎」

「OKOK……わかったから」

「ホントに?じゃあお姉ちゃんは可愛いって認める?」

「いや……それとこれとは……別じゃん……」

「全然わかってないじゃん‼︎」


 

 こんな感じでおれは毎日かわいいって言い続けた。

 気づけばおれは小学生2年生に、お姉ちゃんは高校2年生になっていた。


「お姉ちゃん‼︎今日もとってもとってもとーーってもかわいい‼︎だからおれと結婚してください‼︎」


 自分でお金をためて駄菓子屋さんで買った一番大きな宝石がついた指輪をあげる。


「あはは……ありがとうでも結婚はまだ早いかな……」


 少し顔を赤くしている……喜んでくれたかな?

 高校生になったお姉ちゃんは綺麗になった。

 長かった前髪は目に掛からない長さで切りそろえて、メガネはコンタクトに、そして肩につかないくらいだった髪は背中まで伸ばしている。

 最近かわいいって言われることが増えたらしい、そう報告して来たお姉ちゃんは嬉しそうでなんだかすごくモヤモヤした。

 おれがずっとかわいいって言っても全然認めてくれなかったのに……。


「でもとっっても嬉しいよ……ありがとう」


 僕があげた指輪を大事そうに抱えて、お花が咲いたみたいに笑いかけてくれた。

 お姉ちゃんがかわいいのは誰よりも知ってる。

 自信がなかった頃も、綺麗になるために頑張ってた時も、だから十分わかってるはずなのに……。


「……あぅ……」


 何故かちゃんと見れずに俯いてしまう。

 顔が熱くなって、頭がぽーっとする。

 今日もお姉ちゃんはかわいい。



 これは恋じゃない。これは恋じゃない。これは恋じゃない。これは恋じゃない。

 頭の中で繰り返す。自分に言い聞かせるみたいに。

 火照った顔を、うるさい心臓を落ち着かせようとする。

 彼から貰った指輪を見つめる。

 必死に自分の想いを伝え続けてくれる彼、あんなに情熱的なのにちょっと笑顔を向けると年相応に可愛らしくなる。

 とくん……。

 それを思い出すと燃料を得たかのように鼓動が早くなる。

 落ち着け、落ち着け、落ち着け。

 よく考えろ……たしかに彼は私と同世代の男よりしっかりしているし、優しくて紳士だ、でも年相応な可愛いさもある。それに情熱的だし……何よりもとても一途だ。

 私が綺麗になったからって手のひら返して話しかけてくる奴らとは違うのだ。

 否定材料を見つけようにも、余計に顔は熱を持つし、鼓動は早まる。

 熱に浮かされた頭は何を考えているのか、彼から貰った指輪をつけようと穴に指を通していく。

『結婚してください‼︎』

 彼の言葉が頭をよぎる。

 ちがう……ちがうもん……。

 うわごとのように否定するけど、効果は薄い。それどころか反発するように鼓動がより鮮明になる。

 指輪が進むにつれて、今までのことが蘇る。

 ちがう……ちがう……ちがぅ……。

 だって彼は9歳も年下で……まだ小学生2年生で……赤ちゃんの頃から知ってるから……だから……。


「恋じゃ……ないし……」


 もう何度目かの否定の言葉のはずが、溢れ出たそれは蕩けきってしまったかのように甘く、熱がこもっている。

 そう……恋じゃない。

 少女は何度目かの自己暗示を繰り返す。

 まるで恋する乙女の様な表情で、薬指に嵌めた指輪を見つめながら……。

ネタバレ注意


小春ちゃんはもう堕ちているよ‼︎

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