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死に戻り悪役令嬢に(自称)お兄様ができました  作者: 桜 みゆき
序章

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「くしゅんっ」

「ごめんなさい……」


 エルミアーナはまたしてもずぶ濡れで地面にへたり込んでいた。

 どうにかエルミアーナの周囲以外へ被害が及ぶ前に魔法を消せたので幸いだが、下手をすればあのまま部屋ごと浸水――悪ければ、部屋の中で溺死していたかもしれない。


 でもどうして……?


 エルミアーナは自分の手をじっと見つめる。

 それから慎重に、ティースプーン一杯ほどの水を生成する。


「…………、」


 手の平には思い描いた通りの量の水があった。先程のような暴走はしていない。


「ルミさん……?」


 手の平を見つめてじっとしているエルミアーナに、エレンナが心配そうな顔をした。


「――まって、まさか……、そういうこと!?」


 エルミアーナはすくっと立ち上がると、魔法であっという間に部屋を綺麗にした。


「行きましょう、エレンナ!」

「え? ど、どこにですか!?」


 外へと飛び出したエルミアーナを、エレンナが慌てて追いかける。

 外は先程までの大雨が嘘のように、青空を覗かせていた。



==========



「へぇ~、じゃあ、その友達を助けようと思って、力が現れたんだ!」

 ユミールはセレネの昔話に、興味津々の様子で目を輝かせる。

 星空の元、焚火を囲んだ一行は彼だけではなく、皆がセレネの話に優しく耳を傾けてくれていた。

「そうなんです。でも、その時ほどの治癒力を発揮できたのは、後にも先にもその時だけで……」

「友を助けたいという、セレネの優しい――強い気持ちが起こした奇跡なんだろうな」

 隣で優しく微笑むフレドリックに、セレネも笑みを返した。



==========



 ――という場面が、原作のどこかにあった。

 前世の当時は、勇者パーティと聖女の心温まる一幕としてほっこりした場面だが、今見ると略奪女と浮気男の胸糞シーンとも言える。

 もっとも、原作の聖女セレネは、本当に非の打ち所のない善良な子であったため、あの忌々しき小娘と同一視するのは、如何なものかとも思うが。


 とはいえ。

 今重要なのは、勇者パーティのほっこりでも、聖女と勇者のいちゃこらでもない。

 原作聖女の友達――つまり、エレンナの治療の際にのみ、強い治癒力を発揮できた、という点だ。


 原作では聖女の強い気持ちが起こした奇跡だろう、という推測でしか説明されていなかった。

 当然と言えば当然だ。そのエピソードは聖女の覚醒した場面として重要なのであって、そこにいたる前後関係など、物語としてはどうでもよいことだ。


 だが――、もしその「奇跡」に明確な理由があったら。


「フェリクス様!」

「エルミアーナ嬢? その格好……、それに後ろの方は――」


 古着を着ていたことを思い出すが、今はそれどころではない。


 原作聖女の起こした奇跡。それと、先程起こったエルミアーナの魔法暴発。

 普段は出せない力が出た二つの出来事に共通する要素。それは――


「彼女と魔界に行きますの。地図か何かはお持ちかしら?」


 エレンナ・オルブライト。

 彼女は魔力を増幅させる力を持っている。

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