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91、ラーメンライターAの食レポ
まさかの。
私はその店の黒く染みつき、薄らと油の匂いがする暖簾をくぐる。
すぐに鼻腔に入ってくるらうめんの匂い。
肌にじかに感じる油湿のフィットンチッド・・・まさにらうめんの精気なり。
すうっと吸い込むと、肺に満たされ、次に起こるのは、食を欲する。
食欲。
私はちらり店主を見る。
年老いた店主の古びた白衣が油まみれとなり、黄金色に見える。
勤労の証なり、らうめん道を極めた漢にしか、たどり着けない境地。
私は食べる前に悟った、この店のらうめんは人生最高のらうめんになると・・・。
「へいおまち」
無造作に店主によって、私の眼前に置かれたらうめん。
まずは鼻で楽しむ。
すう・・・匂ってきた・・・これは!
次はスープをひと啜り・・・むっ!
そして、渾身の麺を・・・むむむっ!
ことり、私は丼を置いた。
「店主」
「あいよ」
「これは・・・」
「・・・・・・」
「うまかっちゃんですね」
店主のこめかみから滴り光る汗が見えた。
「YES!」
サムアップ!
俺と店主は破顔した。
うまかっちゃん。