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78、暑い夏の日の思い出~純文学~
あついなつのおもいで。
盛夏の日差しが、波止場に照りつける。
麦わら帽子をかぶり、じっと一点を見つめている少年の額には汗が滲んでいる。
少年はちらりと祖父を見た。
深く刻まれた皴に、眼差しは浮き一点を見つめている。
「・・・・・・」
何かを言おうとした少年は言葉を飲み込み、また祖父と同じように自分の浮きを見つめた。
ジリジリ。
太陽の光が海に反射し、眩く煌めく。
少年は思わず、目を背けた。
「着たぞ!」
その時、祖父が叫んだ。
慣れた手つきで片手で少年竿を掴むと、ひょいとあげ合わせた。
「あっ!」
少年がふくれっ面をする。
「あ、スマン」
バツの悪そうな顔を見せた祖父は、少年に竿を返すと、
「ゆっくり、ゆっくり、あげるんだ」
「うん」
少年は、祖父の言葉に頷き、慎重に竿を操る。
「つれた!」
海面からあがったアジゴはキラキラ輝いてみえた。
満面の笑みを浮かべる少年。
祖父は満足そうに笑った。
のすたるじぃ。