№75 大地君と渚ちゃんのまつり~恋愛~
もうすぐ夏。
中3の夏休み。
大地と渚は神社の縁日に来ていた。
彼はポロシャツに半ズボン、目深に野球帽をかぶっている。
彼女は色鮮やかな紫陽花の浴衣に、後ろ髪をおだんごにして結んでいる
地元のお祭り、友人や知り合いに会う可能性もあるので、2人はわざと距離をとって歩く。
くいっ。
後ろを歩く渚が大地の袖を引く。
きょろきょろ。
2人は周りを見渡し、誰もいないのを確認すると露店に興じる。
金魚すくいに射的、輪投げ。
ふっと大地は遊戯に夢中になる渚の横顔を見た。
(可愛い)
大地は思わず顔を赤らめる。
「ん?」
そんな気配を察して渚は、彼の方を振り向く。
大地は思わずそっぽを向いた。
露店は誘惑の匂い。
甘い、ソース味、こおばしい。
わたがし、カラメル、かき氷、東京カステラ、はし巻、たこ焼き、イカ焼き、とうもろこし。
大地の片手には焼きそば。
渚はわたがしを両手に持って、少し離れて歩く。
ふと大地は思いだした。
「そうそう、今日、花火大会があるって・・・」
彼が振り返ると彼女の姿がなかった。
「・・・渚ちゃん」
慌てて駆けだす大地。
渚は人混みに押されて、戻されていた。
「渚ちゃん」
と差し出す手。
「大地君」
彼女は彼の手を握りしめる。
2人は神社の境内の高台へとのぼる。
パーン!
花火が弾ける。
色とりどりのカラフルな花火が夜空に煌めく。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
2人は夜空を見あげ、舞いあがる花火をいつまでも・・・。
パーンっ!
周りが照らされる。
「お父さん、お母さん!」
渚が大声をあげた先には父と母。
「父さん、母さん、それに近所のおじさんに、花火屋の玄さんと宮司さんにもろもろっ!」
気づくと2人は町内会のみんなにロックオンされていたとさ。
たまや~。