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117、女性プロ野球選手水田菜緒の引退試合~スポーツ~

 水田菜緒引退。


 日本初の女子プロ野球選手である水田菜緒(旧姓)は引退を決意した。

 理由は様々だ。3年前結婚したトレーナの旦那の子どもを産みたい。怪我、成績の下降不振、体力の限界、モチベの低下など。

 15年のプロ野球生活における彼女の成績は、199試合登板、11勝14敗30ホールド87セーブ、防御率3.14だった。

 左のアンダースローから投げる姿は、「野球狂の詩」の水原勇気を彷彿とさせるものだった。


 引退の年、チームは最期まで優勝争いをしていた。

 菜緒の引退の決断は遅く、9月に球団へ伝えたので、引退試合は最終試合となった。

 初の女性選手である。興行的にも引退試合をやらない手はない・・・しかし、球団はやきもきしたことだろう。

 だが、運がいいのか、悪いのか、首位に1ゲーム差と迫った最終戦だったが、デーゲームで首位チームが勝利したことで2位が確定、クライマックスへの進出が決まった。

 引退試合の障壁は何もなくなった。

 監督から告げれる。

「水田、ご苦労だったな。最高の花道を用意するぞ」

「はい」

 正直、菜緒としては、どうでもよかった。

 自分の全盛期、思ったようなピッチングは出来なくなっているし、今年の一軍の試合は7月以来のことである。

 ある意味、客寄せだと言われながらやってきた自分は、ひっそりと辞めていいんじゃないかと思っていた。

 そんな事を考えながら、ブルペンで試合状況を見つめる。


 試合は拮抗しつつ、チームが1点リードのまま9回を迎えた。

 ブルペンコーチが菜緒に声かける。

「水田、2アウトから」

「ウソでしょ」

 思わず言った。

「一人だけだ。ドンといけ」

「まったく」

 菜緒は熱の入った投球をブルペンで見せる。

 

 2アウト満塁最悪の状態となってしまい、お膳立てのつもりが、勝敗を左右する場面となってしまった。

 ブルペンに監督から電話が入る。

「どうする?」

 コーチの困惑する顔、

「どうするって・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「いきません」

「そうか」

 試合はチームの勝利で幕を閉じる。


 こうして、水田菜緒の引退試合は無くなった・・・かのように思われたが、女性プロ野球選手として多大なる功績による球団の慰留もあり、翌年の開幕試合登板まで現役を続けることになった。

 最終成績は200試合登板、11勝14敗30ホールド87セーブ、防御率3.14だった。



 人生いろいろ。

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