112、武将闘獄~アクション(文芸)~
戦いは・・・。
ここは冥府魔道、すなわち地の獄なり。
戦国という世を駆け抜けた武将と呼ばれる武士たちは、今なおここで戦いを繰り広げていた。
大男は鹿の大角を双方にあしらった異形の兜をかぶり、極黒の甲冑を身に纏っている。
「ふんぬっ!」
右足を地に叩きつけ踏ん張ると、砂塵が舞いあがる。
大上段に構えた大槍が唸りをあげ、対峙する武将へと打ち下ろされる。
月輪の兜をつけし武将は、素早く後ろへ飛び退くと、間髪迫る大男に向かい神速で弓を番え矢を放つ。
大男は突進を止めず、首を前に倒し、兜で矢を防ぐ。
真っ二つと割れる兜。
笑みがこぼれる。
二撃目の槍は横薙ぎ、月輪の武将の横腹目掛けて一閃される。
刹那の一撃は、抜刀する隙を与えない。
武将は腰を回し、刀の入った鞘ごと、敵渾身の槍にあてる。
激痛が身体を走るが、最小限に攻撃の威力を緩め、わざと食らったかのように飛ぶ。
地に激突するさいは、上手く受け身をとって大げさに転がる転がる。
すくっ立ち上がると、弓を番え一矢、二矢と放つ。
大男は槍を旋風させ防ぐ。
「!」
槍の男が見上げた頭上には、月輪の武将が赤月に舞い、宝刀を煌かせ兜割をする。
まだ終わらない。