101、プロポーズ☆HIHOOH!外伝~現実世界(恋愛)~
うん、完全に・・・。
彼女の実家である。
「娘さんを僕にください」
明(彼)は深々と頭をさげた。
腕を組む心(彼女)の父親、母親はうつむいて黙っている。
「明・・・くん」
隣の心は、テーブルの下から彼の手を握りしめた。
「・・・しかし・・・な」
父は重い口を開いた。
「はい、お父さん」
「明君・・・ついに言ったな・・・だが、お父さんはまだ早いんじゃないのか」
「・・・すいません」
明はぺこりと頭を下げた。
「私も妻も君のことは昔から知っているし、君たちが付き合っているのも勿論・・・だけどな・・・」
「はい」
「君、無職だろ」
「・・・目下、バイト中です」
「明さん、それでどうやって2人でやっていくの?」
母は言った。
「それは・・・」
「なんとかなるわよ」
言い淀む明に、心は即答した。
「それに・・・君の夢は」
「秘宝館の再建ですっ!」
明は実に真っすぐな瞳を、心の父へむけた。
「くだらん!じつに、けしからん夢をみておる」
「お父さん、彼は本気なの」
「だから、くだらんと言っておるのだ。昭和の遺産とも言うべき、廃れて滅びゆくしかない、エロスの殿堂・・・秘宝館を救うだと・・・伝導仕掛けのからくり蝋人形に、春画、木製の張型、旅情と共にノスタルジーと誘う・・・ひほうかん・・・聞けば閉館ばかりの悲報しか聞かない!そんな未来もない、大人の・・・最後のエロス・・・砦・・・君みたいな若造が、守るだと・・・もはや風雲急、情熱だけではどうしようもないところまで来ているのだ!それが何故わからん!」
「・・・お父さん」
心と母は思わず呟く。
「それでも!僕は未来を信じるっ!昭和のエロスは負けないっ!」
「・・・馬鹿な、どれだけ若造が足掻こうが、この結末は変らない・・・変わるはずがない!」
「それでも!秘宝館には無限の可能性がある!」
明は嘘偽りの無い、熱い眼差しを父にぶつけた。
「その瞳一点の曇りなし・・・秘宝館の可能性・・・か・・・ふふふ、ははははは、いいだろう、やってみろ!その途方もない夢を我が娘心とともに」
「お父さん!」
「これよりマイ・ファーザーと呼べ、明っ!」
「マイ・ファーザー」
「違う!ビックダディだっ!」
「・・・・・・ビック・・・・ビックダンディ!」
明は叫ぶ。
「よしっ!」
父、快心の笑顔。
「お父さん・・・」
母は感動して涙を流している。
心はぼそり呟く。
「お父さん、私は秘宝館に興味はないわよ」
と、断言した。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
男たちは同時に振り返る。
「はははははは」
2人の大笑いが藤枝邸に響いた。
コメディー(笑)。