謁見の間でのワンシーン
『それでは舞子、聞こえてたら右手挙げて〜!』
『こちら舞子、確認良し!王様も準備出来ましたか〜、本番いきまーす』
そこはシャンデリアが無数に吊り下がる謁見の間でザワザワと会場が騒ぐ中、複数の騎士が王に拝謁している最中であった。その中の一人の若い騎士が王へ声高らかに言葉を発する
「失礼ながら我が王よ!この国の民は隣国ナジャロの脅威に日々怯え、前線では物資が枯渇し我が国は窮地に立たされております!このままでは民草共々隣国ナジャロに飲み込まれるのも時間の問題かと失礼ながら進言致したく拝謁した所存!何卒!御意見を!」
若い騎士は周りにいる武官や文官を気にもせず、堂々と嘆願しそれにならい次々と数名の騎士も頭を垂れる
『あーあーみっちゃん聞こえる?どう思う?』
『私の読みだとその騎士さん達の一個師団を最前線に貼り付けて、国内の内需開拓とナジャロの隣国を懐柔させて挟撃させればいいんじゃね?』
『わかった、あーあー王様、聞こえますか?その騎士達の軍団を作り、前線へと向かわせるようにして下さい。』
その瞬間、王は王座を立ち上がり周りはゴクリと息を飲む……国政の有無で若い騎士の無謀とも言える進言に皆が固唾を飲んで見守る
「えっと、オホン!そなたらの熱い意志と国を憂う志!誠に見事である!そなたらには我が国精鋭の軍を指揮し最前線へ急ぎ向かい宿敵ナジャロへ聖なる鉄槌を喰らわせるのだ!」
「ははっ!!我が王よ!!」
『OKOK、バッチリでーす、そのまま王様は神妙な面持ちで裏に掃けてくださーい!その前にみんなに一声なんか頂ければ掴みはOKでーす』
ざわめく会場を見回しから王はため息をつき、手を前に突き出すと高らかと宣言する
「皆の者!よく聞け!我が国を脅かすものは何も無い!我が指示すれば必ず願いは成就される!迷うな!進め!我が名の元に!」
皆がその声に一同ひれ伏し頭を下げると、王様は手をゆっくりと下げもう一度周りを見渡してから退室して行った
「ぷっはー、水、水をくれ!」
王様の部屋で3人の少女が呆れた顔をしながらメイド服のお姉さんから水を受け取ると、王様は奪い取るように少女からコップを手に取り喉を鳴らしながら飲み干すと愚痴を吐き始める
「ぶふぅ……さっきの何なんだよ掴みって……民や兵、下手したら国が滅ぶかもしれないんだぞ……」
「軍事面でならみっちゃんが分かるから聞いてみたら?」
「聞いてみたら?って軽いなぁ……一応俺王様なんだけど……」
「そっちも軽いノリかわからんけど召喚?っていうのやめてくれないかなぁ……マジでスマホ意味ねーし風呂がないってマジありえなくね?」
「わーかった、わかった……すまん、帰る方法は調べてるからまずはこの国を救ってくれ!なっ!」
謁見の間で偉そうに玉座に座っていた王様が、本当にすまなそうにして頭を下げたのでなんか気まずい……
「本当に見つけてくれよ、夏期講習は受験生にとって将来が掛かってんだ!」
「うぇー……みっちゃん勉強の話はマジで無いわ」
「舞子……お前テスト悪かったろ」
「オホン、ひとまず部屋で話をしてくれ……疲れた……」
王様は訳の分からない単語と行動に疲れ、よろめきながら自室に向かうと3人も割り当てられた各部屋へとくだらない話をしながら戻っていった