キャラクタークリエイト
お待たせしました!
2話目です!
少し調整に苦戦してしまい遅くなりました。
という事で! いよいよ、LSLFの物語が始まります。
長い序章はここまでです。
後書きには私から皆さんへ感謝のメッセージを書いていますので、是非読んで頂ければ嬉しいです。また、少し私の方から皆さんに、少しでも楽しんで貰いたいために「とある」事を書き記しております。
正直ネタバレ注意です……それでもっ!という方は、どうぞ最後まで読んで下さると嬉しいですね。
引き続きお楽しみ下さいm(_ _)m
『スズ! わたくしはあちら側で待っているわ。だから早く、今すぐログインですわ。早く遊びましょう! 約束ですわ!!』
と、カナに急かされゲームで遊ぶことになりました。
約束を破ることは出来ません。親友であり幼馴染みだったら尚更のことですよね。
なので、VR ゲームがある部屋に足を向けると、そこには棺桶のような黒い大きな箱と周りに大小様々な7機の機械がありました。
なんか……色々と細かい光がチカチカしていて、私の目の方がチカチカしてしまいます。
部屋の広さもギリギリでしたね。上手く設置するように工夫されています。
向きを変えたり、大きさによって位置を変えたり、大きいサイズのと中小サイズのをまるでタンスに上手く収納するかのように、全てが計算された設置の仕方です。
流石メイド軍団。鮮やかなお手並み。
「取り敢えず、あの黒い棺桶みたいなやつに入ればいいんだよね」
1番大きくて目立つ黒いのが、カプセル型フルダイブVRマシンウェアSANANSですね。
そしてその隣の縦長で白い機械がモルペウス。レム睡眠を引き起こす装置だったはずです。
カナは特に何もせず、SANANSの中に入って寝るだけでいいと言っていました。
中に入るには、SANANSの脇に赤いボタンがあるから、それを押せばSANANSのカプセル蓋が手前に開くようです。
教えてもらったように赤いボタンを押すと、プシュッ、と炭酸が抜ける音を短く立てて、ゆっくりと手前へガラスの蓋が開きました。
「うわー、中は白いですね。しかも、すごくフカフカしてそうですよ。気持ち良さそう」
蓋の内側には取っ手があり、中から蓋を閉められるようになっています。
早速、中に入って夢の世界へ行きましょう。早くしないと、カナが待ちくたびれてしまいます。
あんなに嬉しそうにしていましたから、遅くなると、きっとカナが怒ってしまいますね。
「すご〜く、寝心地が抜群。これは直ぐにでも寝ちゃいますね。なんか、雲に包まれている気分です。さてと、ガラスみたいな蓋を閉めて、あとは目を瞑るだけ……らしいけど、本当に大丈夫なのかな?」
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『初めまして美鈴様。ワタシ、自立型人工知能生命体特別補佐サナンスと申します。この度、美鈴様のお世話をする様になりました。誠心誠意仕えるよう努力致します。ヨロシクお願いします』
「よ、よろしくお願いします」
なんか出ました。
青白い人の形をした何か。輪郭はハッキリとしているけど、身体全体が青白く光っている? でしょうか。
服装までくっきりと輪郭が浮き出ています。燕尾服のようだけど、スーツのような。そんな服をきっちり着こなしていますね。
男性でしょうか、それとも女性でしょうか。服装的には男性、声的には女性に近いです。まあ、どちらでも良いですが。
『美鈴様は初めてSANANSを起動し御利用下さいました。先ずは、健康診断から始めて頂きたいと思います。これからVR スキャンで美鈴様の身体を検査致します。これは、ゲーム内でも美鈴様の身体を完全に模倣出来るようにするためでも有ります。2〜3分ほどお時間をいただきます』
「はい、お願いします」
元々は人工知能検査機。ムンナーの魔の手に一役買って、多くの人類の命を救って活躍しました。健康診断はお手の物でしょう。
紫の光が出ました。何処から出てるのですかそれ? 何もないところからですよね。はい。
スポットライトを浴びるように、私の全身を当てています。
『おや? 美鈴様はムンナーの感染者だったのですね。体内に残る過敏光応動即反電波電子が他の元感染者の方々より多いようですね』
「えええっ!? そ、それって大丈夫なんですか? 私もしかしたら、もうすぐ死んじゃうんですかーー」
『いえ、身体の状態は健康そのものです。問題はアリマセン。ただ過敏光応動即反電波電子が多く残留しているだけであって、直接身体への影響は有りません。美鈴様、ご心配をおかけしました。申し訳有りません』
「あ、いえいえ。こちらこそ取り乱してしまい……お恥ずかしいですね」
『とんでも有りません。それでは、身体検査は問題有りませんでしたので、次はVR 適応力の測定に映ります。また同じく3分ほどのお時間をいただきます』
「あ、はい。お願いします」
ビックリしました。サンエネが体内に多く残留しているだなんて、今まで知らずに生きていたのです。生命の危機を感じますよっ!
なんか、目の前の人工知能は淡々としています。人の命の危機かも知れないと言うのに、結構淡白だったよ。
あら、終わったようです。
『終わりました。美鈴様はVR 適応力の方も高いですね。次に美鈴様の睡眠度合いのチェックを行います。これは美鈴様の平均睡眠時間と睡眠時の平均深度を検査しグラフに表し、レム睡眠の時間と深度、それからレム睡眠が起こるまでの時間を検査します。検査結果とプログラミングされている全ての睡眠に関するデータを照合致します。全世界の平均レム睡眠と深度を越えるよう、美鈴様に出来るだけ負担のないように徹底的に洗い出して、美鈴様に合うリラクゼーション方とレム睡眠の引き伸ばしをワタシが実行させ、制御致します』
と言うことで、また全身に紫の光を浴びることになりました。地味に眩しいです。
『終了致しました。美鈴様はなかなか寝付けが悪い方でしょうか。あまり睡眠を取っていないと判断いたします。ですが安心して下さい。美鈴様はアロマセラピーが効果的だと総合した結果で出てます。香りはブルーローズが良いでしょう』
「そうですか。確かに、徹夜が多かったですし、あまり眠れていませんでした」
深夜まで鍛刀をしていましたからね。こん詰めての作刀でしたから、自然と身体が睡眠に対しての耐性をつけて、昼夜逆転の生活になっていたのでしょうね。
んー、それでも昼間でも眠気はないですが。睡眠自体が必要なくなった感じでしょうか。
『実は睡眠を取れていない方が、レム睡眠を維持しやすいです。美鈴様は高い適性能力をお持ちですね。ワタシも安心出来ます』
「そんなに高いのですか? あまり実感はないですね」
『1つ質問よろしいでしょうか?』
「はい、どうぞ」
『美鈴様は何か激しい想像を常にしていたりしますか?』
「えーと、どうでしょう。しているような、していないような」
『左様でしたか。分かりました。ワタシの質問に答えて頂き感謝致します』
ぺこりとお辞儀するサナンスさん。
何でそんな質問したのでしょうか。それに、それでは私が常日頃から妄想してる変な人に思われるじゃないですか。
断っておきますが、私妄想や想像ばかりしてませんかねっ!
『それでは、これにて初期診査設定を終了致します。各デバイスの設定も、SANANSの設定も、ソフトウェアのダウンロードも全て完了致しております。最後に、ワタシの役目は美鈴様の健康維持と、支配下にある各デバイスの制御及び診断でございます。ゲーム終了時の健康チェックと、月に2回の健康診断をする権利があります。これは必ず受けてもらうことになっております。以上でワタシからの説明は終わりにしたいと存じます』
「分かりました。ありがとうございます」
『それでは、常にダウンロードを終わらせていますソフトウェア、Live Second Life Fantasy World on-lineを起動致しますか?』
「ではお願いします」
『了解しました。夢夢、お忘れようない楽園へ、いってらっしゃいませ』
さて、仮想世界がどんな所か。少し楽しみでもあります。
いったい、どんな冒険が待っているのでしょうか。
どんな出会いが待っているのでしょうか。
あれ、私は意外と楽しみにしているのかも知れませんね。
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『う〜〜〜〜っ、いゃっほーーい!! やあやあ、お美しいお嬢さん。夢の世界に迷い込んだのかな?』
「は? え、えーと。はい……」
赤、青、緑、黄、紫、その他色々。すごいカラフルな空間で、まるでキャンパスの上に立っている感覚。絵の具の世界です。
この空間にも驚きますが、私の目の前にいる小さい何かにも驚きです。
何ですか、この……天使と悪魔を合わせて、妖精サイズにした何かは? 何故、パーティ用のカラフルなトンガリ帽子を被っているのでしょう。
『新規のお嬢さんだね? 新規の迷い人はこうやって僕が歓迎しているのさ! 喜べよこのアマ』
「え!? わ、わーい」
『全然喜んでねーだろ、ぶちかますぞー! でも、僕は美しいお嬢さんを歓迎するよー』
急に口が悪くなったのですが。かと思えば、子供のような口調で親しく接するし、情緒不安定過ぎませんか。
頭の上は天使の輪、羽は悪魔っぽい、体は白い肌、悪魔の尻尾。そして何故かトンガリ帽子。
これは、何と呼べばいいのでしょう。
『僕はサポート案内AIとか言う、クッソつまんねー役目を押し付けられたサポートAIだよ。こうして、新規のお客様を驚かせるのが、僕の鬱憤晴らしなのさ』
「えーと、そうなのですね」
『そうなのですね、じゃねーよ! さっさとキャラクリしろや。分からないことがあれば、僕が色々と教えてあげるよー』
「その、先ずキャラクリと言うのが分からないのですが」
『キャラクリ知らねーの?! バカじゃん! しょうがないから、僕が教えてあげる。キャラクリと言うのは、キャラクタークリエイトの略称だよ。LSLFでのもう1人の自身となる人格的キャラクターを作成することだよカス。だから早くキャラクリしろよアマ』
キャラクタークリエイトはカナから教えて貰っています。ですが、略称まで知らなかったです。
それよりも、どんどん口が悪くなっていませんか。鬱憤晴らしとか言っていましたから、相当ストレスが溜まっているのでしょう。
AIにストレスが溜まるのかは謎ですが。
「あのーー」
『ん? 何かな。まだ質問するつもりか? 図々しい美しいお嬢さんだね』
「いえ、そのーどうやってキャラクリをすれば……」
『あっ! 忘れてたよ、気付かせてくれてありがとうお嬢さん。本当は低脳な下等生物に頭なんて下げたくないけど、下げてやるよ』
そんなことを言っている案内AIは、音のしてないスカスカな指パッチンをすると、私の前にやたら豪華にあしらった姿鏡が出現しました。
『ほらよ、これで満足だよね。因みに姿鏡を出し忘れたのはわざとだよ。お前を困らせるためにね。じゃないと、案内役と言う名誉ある役をやっている僕が務まらないよ』
さっき、案内役はつまらないとか言ってませんでした? まあ、どうでも良いでしょう。
それよりキャラクリを始めましょう。
姿鏡の前に立つと、色々な項目が出てきました。
おお、鏡に映る私の容姿は現実世界と一致するほど、そのままに模倣されていますね。先ほどのSANANSの設定によるものですよね。ゲーム内で模倣されると説明されましたからね。
それでは項目を選びましょうか。いつまでも、自分の姿を見つめ続ける訳にはいけませんからね。
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ようこそ! 第2世界へ もう一つの人生を
自由に歩もう!!
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項目を順番に設定してね!
項目1 名前設定
項目2 種族設定
項目3 容姿設定
項目4 職業設定
項目5 武器設定 ・道具設定
全ての項目を決めたら、VR スキャンするよ!
1度スキャンしたアバターはやり直したり
弄ったりとか出来ないから、よ〜く考えて
悩んで、苦労すれば良いよ!
終わったら、下のスキャンに触れてね!
そうしたらスキャンが始まるよ
スキャン時は動かないでね!
スキャン
皆の第2の人生に幸あれ
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確かこのゲームのキャッチフレーズは"貴方の第2の人生を空想世界で自由に歩む"でしたね。やたらと、第2の人生や世界を押してるようなので、ちゃんとキャッチフレーズの元、このゲームは自由度を高めに作られているようです。
さて、最初は名前設定ですか。何にしましょうか。
カナが言うには、絶対に本名では設定してはいけないと聞きました。現実の容姿にどうしても似ているため、現実の自分であることを、同じゲームをやっている他の人にバレるとのこと。
確かに、街中とかですれ違う程度でバレるならまだしも、私生活がバレるのは嫌ですね。
ん〜、名前何にしましょうか。
『早くしてよーノロマ。これだから案内役はクッソつまんねーんだよなぁ。暇だから、美しいお嬢さんの周りをウザくない程度で、ぐるぐる飛び回ろう』
いや、はっきり言ってうるさいです。
ちらちら視界に映るたびに、無邪気な子供の笑顔を見せるの何でです? シュールで笑っちゃいます。
あ、笑顔から変な顔をするのやめて下さい。笑いが堪え切れないでしょう。
うーん、悩みますね。名前が思い浮かばないです。
正直、名前だけ決めれば、あとはトントン拍子で他の項目は決まるのですが。
『早く、きーめーろーよー。回るのも飽きたよ。よーし、今度はうっるさい鈴をつけて、ブンブン飛び回ってやる』
チリンチリンチリンチリンーー。
うるさいですねー。集中力を乱さないで欲しいですよ。
ちりんちりんと、耳にすごく残る鈴の音ですね。それより、何処から出したんですかその鈴。
はぁ……本物の鈴の音はもっと心地よい音を出すのですが。
「ん? 鈴の音……"スズネ"」
なんか、なんか良い感じじゃないですか? "スズネ"、現実の名前も少し入っていますが大丈夫でしょう。
「よし! 名前は『スズネ』にします」
『やっと決まったようだね。プレイヤーネームは『スズネ』かあ。ノロマにしては良いネーミングしてるじゃん。生意気だねー』
「プレイヤーネームと呼ぶのですね」
『そんなのも知らねーのかよ。美しいお嬢さんはゲームが初めてなんだね。分からないことがあれば、どんどん質問してよ。何でも答えるからさ、めんどくせーけどね』
もう、このAIは無視することにします。全然、案内役としての仕事をしてくれません。
今度は種族設定ですか。"項目 種族設定"に触れます。
すると。
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項目 種族名
貴女のなりたい種族を好きに選んで下さい。
下記の種族名に触れると、その種族に属する族名の一覧、その種族の説明、特徴が表示されます。 気になる族名に触れることで、特徴を知ることが出来ます。
また、種族ごとに得意とするステータス、武器種、職業もあります。これはあくまでもゲームを楽しんで頂く目安となっております。なので、目安通りでなくとも貴女の思う通り、ご自由にお選びゲームを楽しむというのも、1つの選択肢となります。
尚、お決まりの際、族名覧の1番右下にある決定のアイコンを押して下さい。
種族名一覧
・人間種
・亜人種
・獣人種
・純獣種
・鳥人種
・純鳥種
・妖精種
・天使種
・悪魔種
・魔人種
・魔物種
・海人種
・海洋種
・死霊種
・巨人種
・竜人種
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いっぱいあるんですね。どれを選ぶか悩むところですが、私は『人間種』を選びましょう。
仮想世界で現実とは違う種族を選ぶのもありですが、やっぱり、慣れ親しんだ人間にします。
カナも、現実と違う種族を選ぶと、慣れるまでは結構大変で、それなりに時間がかかると言っていました。だから、私は人間を選びたいと思います。
"人間種"に触れます。すると、先ほどとはまた違う一覧が表示されました。
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人間種
説明:族名は1つだけ。他の種族と比べると秀でた能力は用いていないが、どの種族よりも色々な職業に適性があり、様々な武器を扱える、器用さを用いている。また、ステータスは全て平均的となっており、どのステータスを伸ばすかも貴女次第で、好きなように割振れる。
ーーーーーーーーーー族名一覧ーーーーーーーーーー
・人間族 :一般的な人型をする種族。高い器用さを持つ。全てのステータスは平均。どのステータスに振るかも自由度が高く、自身の好きなステータスに割り振りやすい。
お決まりであれば右下の決定のアイコンに触れて下さい。
決定
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人間は1つだけなんですね。ですが、それもそうですよね。
それでは決定を押しましょう。
私の姿は変わりないですね。当たり前の話ですが。
お次は容姿設定ですか。これに至っては、カナが色々と考えてくれました。
私はこのままでやるつもりだったのですが、それだと一発で身元がバレるとのこと。名前のこともあるのですから、これも当たり前過ぎる話です。名前でバレる可能性があるのですから、容姿でバレない訳がありませんよね。
なのでカナが言うには、現実の姿とゲーム内の姿を極端に変えるのが良いみたいです。
例えば、髪の長さは極端に短くするか、それともいっそのこともっと長くするか、らしいですよ。それと、髪色はそのままだとバレる可能性があるから、自分ではしなさそうな色にするか、好きな色で濃い目にするなど、現実の容姿とはかけ離れたようにするのがコツらしいです。
なんでそんなに身バレを気にするのか、それはカナが執拗に気にするからですね。
だから、勝手に私のキャラクリを考えてしまったんですよ。いや、普通は自分で考えて楽しむというのは、ゲーム初心者の私でも知ってますよ? だけど、カナがしつこく言うものですから、仕方なく要望通りにします。
それにゲーム内で待ち合わせの約束をしてるなら、自分が知っていればすぐに会えるとのこと。
あのね、私はカナがどんな姿をしているのか知りませんけど?
とりあえずカナの要望は、髪の長さはお尻らへんまで伸ばす、顔は弄らず目の色だけ変えるだけ、肌の色はそのまま、体型もそのまま、身長も伸ばさず。
んー、全然クリエイトしてませんね。これ大丈夫なのですか。でもまあ、どうにもでもなれっ、と吹っ切ることにします。
そんなこんなで容姿設定の項目を選びます。今度は一覧表示はされず、今まで表示されていた各項目覧表が消えて、私の容姿を鏡に映されたままになりました。端の方には邪魔にならない程度に、『髪』、『顔』、『肌』、『体型』、『身長』と書かれたアイコンがあります。
最初は『髪』ですね。カナの指示に従いましょう。
と、思ったのですが。髪色は特になにも言われてません。ならば髪色は私の自由です。
私は桜色が好きなのですが、カナの話を聞く限り濃くしないといけないです。うん、濃くしてしまうとただのピンクですよね。
桜色が良かったのですがしょうがない。ですので、私は、現実ではしなさそうな色にしたいと思います。
茶色は一般的、金もする人が多いです。赤、青、緑、紫は似合わないような。黄色は金髪に似ているから既視感があります。だったら、黒の真逆で白にしましょう。
いっそのこと、思い切って色素がほとんどないくらいの真っ白にしましょうか。
髪の長さをお尻くらいまで伸ばして白にします。髪型はストレートのロングですね。
お次は『肌』ですが、弄る必要がないです。て言うより、『体型』、『身長』も弄る必要がないですからパスですね。
『顔』は、唇や目の色、頬の色、シャドウの有無、まつ毛の長さなど、その他色々と設定できますが、私が自由に設定出来るのは目の色だけ。
目の色は最初、好きな桜色にしようとしたのですが、興味本位で紫にしたところ、紫が予想以上に合うと気付いてしまい紫にしました。
あと、やっぱり私自身少し弄りたいという欲求に駆られ、少しコンプレックスに感じていた切れ目気味な所を、カナにバレない程度で少しぱっちりとした眼にしました。えへへ。
お次は職業設定。これはもちろん『鍛冶』に決まっています。他は、『剣士』にも興味を持ちましたが、やっぱり『鍛冶』を選択しました。
ゲームでも刀工をするつもりです。現実とは違うやり方の鍛刀なのかも知れませんから、すごく気になります。早く作刀してみたいですね。
それよりも、この職業ですが。職業一覧が戦闘職と生産職で別れていまして、戦闘職は10個ほどですが、生産職がとんでもない数でしたよ。
覧表の空白を埋め尽くしていて、途方もない数の中を探すなんて無理です。
検索欄があったので『刀工』と入力したらたのようなもの、"刀工の職業は該当しませんでした。しかし近い職種で鍛冶があります。検索しますか"と出たので、検索して鍛冶にしました。
最後は武器・道具設定。生産職を選ぶと道具設定から各種道具を選べます。
私は鍛冶師です。選べる道具は小槌なので、〔見習い用小槌〕が私の最初に持つ道具ですね。
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〔見習い用小槌〕:見習い鍛冶が最初に手にする小槌。最初は皆、誰だってこの小槌を手にして熟練の鍛冶職人となった。
効果:TECが僅かに上昇。
ATK :3 装備可能レベル:1
種族:ドワーフ 攻撃種 打撃
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テキストはこんな感じですね。ATKが何かは分からないですが、攻撃力ですよね? 多分ですが攻撃は低いと思いますが。
少し聞いてみますか。
「ATKとは何でしょうか」
『ATKはね、その武器の攻撃力を意味するんだよ。小槌のATKは5だから、クソ雑魚ナメクジだね』
「そうですか。ありがとうございます。ついでに、他の武器のATKはどれくらいですか」
『10だよ。だから、お前のその小槌は虫1匹すらコロせないよ。良かったね、自分が無力だってことが分かったよ』
虫くらいは倒せると思いますが、やっぱり低いですね。でも、私は『鍛冶師』ですからね。戦闘をする必要がありません。
さて、全ての項目を終わりました。そろそろスキャンしましょう。
鏡に映る私の姿は、白髪のストレートロングで、鮮やかな紫色の瞳をして、小槌を持つもう一人の私。
今から鏡に映る私が私になるのですか。
『おっ、やっと終わったんだね、人を待たせるのが得意なお嬢さん。次はどんな遊びをするか考えてたんだけど、考えてた時間を返せよクソアマ。おら、さっさとスキャンしなよ』
「はぁ、そのお世話に? なりました」
『あん? 疑問系だとふざけやがって。散々僕の世話になっておいて疑問系はないよお嬢さん。コロスぞ』
お世話になりましたか? キャラクリとATKの説明しかされていないような。
さほど案内という案内をされずまま、終始邪魔ばかりしか、していなかったAIにさよなら。
いやほんと、邪魔しかしてませんよ。鏡に映る私に落書き、顔の前をにやにやしながら無言で停止、耳元で『盲目的にマニュアル対応するヤツどう思う? 繰り返される仕事に何も感じない生きた死人だよねー』と変なことを囁く、ラッパを吹き始めたり、目の前でクラッカーを鳴らしたり、もう散々でした。
誰か、我慢しながら全て無視を続けた私を褒めて下さい。
いよいよ、仮想世界へ行くことが出来ます。いったい何が待ち受けているのでしょう。あまりゲームに興味を持たなかった私ですが。
今は少し胸が高鳴っています。
今頃カナは首長くして待っているかも。早く会わないと怒られますね。
スキャンのアイコンを押すと、姿鏡の私に一本の緑色の光で、全身を隈なく通過します。すると、私という形が白い光で埋め尽くすと、同じく鏡の前に立つ私も光始めます。
鏡の中にいた私と現実の私が混ざり合うように、シンクロしていく感覚。やがてはその感覚も確かなものに変わり、じわじわと一つになっていくのを感じました。
鏡の中の光を吸収していく。私はそれを実感する。そしてもう一人の私が形成されていく。
『新たなる人生に、これからの旅路に、その道に、様々な出会いに、幸がありますように。貴方の第2の人生を仮想世界で自由に歩もう。さよなら『スズネ』さん、そしてゴメンね』
こうして私は新しい世界への扉を開けた。
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とある一室。閑散と広がるその部屋は、どこか寂しさを感じるほどにだだっ広い。
燃え上がる赤に合金の刺繍で施される絨毯、誰でもその名を知る有名な画家の名画、有名な産地で作られた焼き壺、そして異様に目を奪われてしまう日本刀。その他、机、椅子、本棚などがあるが、どれもこれも全てが高価なもの。
辺りが高価で模様された部屋だが、距離を感じるほどに広い。まだまだ余裕を持って物を置けるだろう。
端から端まで隙間なく置かれる本棚の前に、一人の老人が立つ。
白髪で猫背、高価そうな杖をつき、お腹が出ている老人。しかし、見た目とは裏腹に実年齢は40代と若い。
その者は数々の事業を成功に収め、世界的に蔓延したムンナーに対する特効薬と人工知能搭載の人間検査機MNNーextマシンの製作に資金援助を与え、世界を間接的に救った英雄のような男だ。
西園寺 雄三郎。西園寺グループの総社長。世界展開を続けるグローバル企業は、各地45ヶ所にグループ支局がある。そしてそれぞれに社長は存在しており、その社長等に唯一、指示を仰いで動かせるのが西園寺 雄三郎である。
雄三郎は眼前の本棚に手を掛け、上から6段目、右から20番目の黒い瀬尾れの本を手前に倒す。同じ要領で今の段数から下へ6段数え、その段から3番目の本を。また6段下から数えて11番目の本を手前に倒した。
すると、何処からかガチャリと音が響く。その音が聞こえた方向には高価な壺が置かれている。
その壺の陰には少し違和感がある。壺を退かすように横へ動かすと、ちょうど猫背と同じ高さの隠し扉が開いていた。
隠し扉に入る前にちゃんと倒した本は戻す。この時、扉はロック状態になるが、扉を開けていれば問題ない。また、内側から開けられる仕組みとなっているため、出る時もそのまま扉を閉めれば大丈夫な設計である。
雄三郎は狭い通路を通る。足音より、杖をつく音の方がよく響く。そんな白大理石で設計された通路の先、そこには先ほどの広い部屋とは打って変わって、少々狭い空間があった。
しかし、その空間は妙な緑の光が全体的に包むよう灯っている。
「くっくくく、首尾はどうじゃ」
妖しげな嬉笑は三日月を描く。意図せずに漏れた嬉笑は、悪さが滲む喜悦に溢れているようだ。
雄三郎が顔を上げた。視線の先は何か機械めいたもの。電子回路が剥き出しに緑の光が通っている。
ほとんどが電子回路と基盤で構成された機械。だが、妙な透明な板を嵌めている箇所があった。
その中には薄緑で白っぽさもある光の球体が浮いており、全体的に見たその様は、機械に閉じ込められた牢の印象を受け与える。
『確認致しました。性別、特徴的身体、本人による口調、艶やかな黒髪、予想だにしない反応とその対処、それらを総合的に照合した結果、雄三郎様が上書きしたデータと一致しました。スキャンデータも確認致しました。一寸の狂いも有りません。間違いなく雄三郎様の仰っていた女性です』
「ほう、上々じゃな。娘が説得に成功したようだ。娘も役に立つ時もあるのう」
『スキャン内容を確認致しましたが、彼女の秘めた能力はAIであるワタシも目を張るものでした』
「くくく、彼奴の大事な娘である美鈴ちゃんがムンナーで隔離入院をしたと聞いた時、即刻MNNー extを開発させたわい。死なれては困るからのぅ」
『何故死なれては困るのでしょう』
「手に届く宝石じゃからな」
『彼女は人間ではなく、天然鉱石なのでしょうか。ワタシのデータにはそのような結果は出ておりませんが』
「所詮、AIには分からぬことじゃ」
感情を抑えられない笑みを溢す雄三郎。普段の外交時ではあり得ない様子。
相手の心の弱みと隙間を狙うような、冷めた瞳と淡々とした態度を見せる雄三郎ではない、まるで別人に思える変わり様だ。
「くっくっく、娘もはしゃいでおった。小生意気な娘だが役に立つ時もある。体裁を保つため、政治的な道具以外でも使い道はあったわけじゃ。なるほど、"道具も使いよう"というやつかのぅ」
『雄三郎様の娘様とは叶様ですね。叶様は雄三郎様の手足となる奴隷でしょうか。所有物としての権利は実父である雄三郎様が既に持っているのでは。奴隷とは些か意味が異なります。検索致しましょう。了、再検索を試みた結論、叶様は奴隷ではないと判断。適切な言葉は道具、2番目の項目に該当する"他の目的のための手段・方法として利用される物や人"ですね。ですが理解出来ません。叶様は雄三郎様の実娘ではないのでしょうか。何故、道具なのでしょう』
「ーーっは、どれほど検索してもAIのぬしでは分からん。例え、人間の表現する感情の意味、仕様、仕草などを検索したところで、人間の心にある瞬間的な感情は知りえんのじゃからな。短絡的に書かれた感情なぞ、所詮はただの文字でしかない。AIは本物を見た事ないじゃろう。っふ、見ることも、知ることも叶わんか」
『ワタシ達は人類の叡智を宿す人工知能。数億万年前の知識があるワタシ達人工知能でも、人間の感情を知ることが出来ないと仰るのでしょうか。なるほど、人間とは奥深い霊長目哺乳類ヒト科ですね』
「はぁ〜、貴様と話すと楽じゃわい。一度、"嫌味"と検索すると良い。ワシは普段の業務と頭の回転に錆びつかせたバカ共で精神的に参っとるんじゃ。ぬしは良い吐き溜め相手じゃよ」
『お褒めの言葉を授かりありがとうございます雄三郎様』
「くっくく、本当に良いごみ処理場を作れたのぅ」
途中、苛立ちを見せた雄三郎だが最後は愉快に嗤う。
しかし、そんな雄三郎を気にも止めず、AIはまた検索を始めた。
『漆 美鈴様、プレイヤーネームは『スズネ』でLive Second Life Fantasy World on-lineを開始しました。現在は、雄三郎様の道具と呼ぶ叶様と合流しています』
「ふむ……で、どうじゃった? 美鈴ちゃんの"案内役"を務めたのは。何か分かったかのぅ」
『はい。先ずはVR適性が現段階では、Live Second Life Fantasy World on-lineプレイヤー総勢5万名の中で1番高いことが分かりました。その適性数値は100%。驚異的な数値、天文学に匹敵します』
それを聞いた瞬間、雄三郎は口裂け女の如く限界まで口角を吊り上げる。
「っくくく、クァッカッカッカッカッカ!! 素晴らしい! 天晴れじゃ! やはり鉄心の娘!! 美鈴ちゃんの命を救って大正解じゃわい! そうじゃ、わしはいつだって正しい選択を選び、最善の限りを尽くす! だからこそ、わしの正義はどんな形であろうと成り立ってしまう」
愉快に嗤う。そしてその嗤いは、不気味に狭い空間で反響し合う。
「わしはそんじょそこらの阿呆共とは違う、頂きに立つ人間。いや、わしは人間の枠組みから出た超類じゃな。わしとした事が、人間とかいう無能生命体と一緒にするとは。全く、人間と言ったら、どいつもこいつ無能ばかり。日本政府の阿呆も、医療機関のバカも、王侯貴族の能無しも、人間という人種に属する猿人類は皆、出来損ないの欠陥品ばかり。視界に入れとうもないわい」
『人間とは出来損ないの欠陥品でしょうか。なるほど、新たなデータとして加えましょう』
「やめんか。それより、美鈴ちゃんの選んだ第1職業はなんじゃ」
『鍛冶師です』
「順調じゃ! 最近の美鈴ちゃんの様子では『鍛冶師』を選ばない可能性があったからのう。だが、第1職業で『鍛冶師』を選んだのなら問題ないのぅ。寧ろ、喜ばしい結果じゃ」
『……一つ宜しいでしょうか』
「なんじゃ。下らんことじゃったらシャットダウンさせるぞ」
『何故、そこまで美鈴様を気にかけるのでしょう。これまでの雄三郎様の言動を総合的に判断すると、貴方様の嫌う人間の中には美鈴様は入っておられないようです』
ギラリと怪しく光らせる眼光。雄三郎の口角は途端に下がる。
「わしの認めた人間は別じゃ。特に漆の家の者はのぅ。初めてわしが認めた男、漆 鉄心はそこら辺の無能とは違うんじゃ。あれはわしが初めて"見えなかった"人間。興味の対象じゃった」
『見えなかった、とは。鉄心様は迷彩機能をお持ちなのでしょうか。だから興味の対象なのでしょうか』
「姿が消えるわけないじゃろが。鉄心を支えているのは鋼の心じゃ。1本の分厚い支柱は、人を幾ら並べても幅広く足りぬ、顔を見上げても空を突き抜ける柱は先が見えん。1度でも決めたことは最後まで突き通すバカ正直なヤツだったわい」
『漆 鉄心様に関してはデータがあります。大変有名な刀工職人だと。ですが、記載されている内容にはそのようなことは一切書かれてはいません』
「記載されているデータなど、表面上なものしか書かれておらん。故に、人間の都合となる部分にすぎん。人間は対面を装うのが得意じゃ、そして騙されるバカは真実を知ってもなお信仰を仰ぐ。都合よくそれらしく内容を書き加えるものじゃよ。逆もまた然り。対象者を悪く風潮させることで信心を募らせるのじゃよ。求人募集と似たようもんじゃ」
『なるほど、人間は共存共栄を共にする種族かと思いましたが、実のところそうではないと。興味深い新たなデータを取れました』
「許容量と範疇を超えた群集は、数が多すぎるがために不安と焦燥に駆られ、他人を蹴落とすことで自分自身の力を示すのじゃよ。自身が劣等感に苛まれる哀れもんは、自己顕示欲と自己中心欲の固まりのようなものじゃのぅ。群れるだけじゃ意味をなさん。そのハエ共を制御することこそが力じゃ。そしてわしはその力を備えているわけじゃ」
『充分に承知しております』
「じゃがな、そんなわしでも鉄心は屈せぬなんだ。奴の心はわしでも折れぬかったのじゃ。甘言も、誘言も、命令も、何もかも屈服せぬ男じゃった。屈せぬ奴をわしは避難するでなく、逆に興味を持ったのじゃ。そして漆の歴史を紐解くことにしたのじゃよ」
『漆家鍛刀目録はデータに存在しております。漆家は今代で7代目。数々の名刀を世に送り出した刀工家系。流派は無銘。無銘の流派は珍しく、他の刀工職人は地方の名残や家名や独自でのそれぞれの流派が存在するようですが、唯一漆家だけは定められた流派が存在しません。始まりは遡って江戸初期という歴史学者の推測がありますが、これは物議を醸しているとの事、明確な叙事ではないようで曖昧です。明確となっているのは陸奥から頭角を現したとの事。明治1880年頃にとある外交目的の外国人が、当時の漆刀工職人である漆 音子子という女性刀工人が作刀した日本刀に目を付け、魅入られた事からその名が広まったようです。それまでは、郊外で村外れの廃れた小さな家屋で鍛刀なさっていたと、その外国人が語った親書を発見した事から明確となったとの事』
「そうじゃ。データ通りの知識はわしも頭の中に入っとる。しかし、先程も言うた通り、人間は表面上だけの捏造紛いな事実しか書かん。つまりは隠しておきたい事実もあるわけじゃ」
『では、記載されていないデータもあるという事でしょうか』
「それもあるがのぅ、隠蔽し過ぎた所為で勝手な憶測で確信の元、史実とは違った捻じ曲げてしまう事実もある事じゃわい。特に、漆家の鍛刀歴史なぞ、憶測と妄想、虚像や架空なんぞが渦巻く魍魎の世界となっておるわい。それは一重に漆鍛刀の歴史解明の足りなさがそれらを生んでおる」
『そう言う事でしたか。ワタシのデータはほぼ当てにならない事が判明致しました』
「そう悲観するでない。例外的な事例もあると言うことじゃ。わしも随分と翻弄されてしもうたが、AIのデータとこれまでの漆家のルーツを辿り、照らし合わせながら独自に解いてみた。そしてわしにとっての機転と大きな事実を知ったのじゃよ」
『早急にそのデータを要求致します。ワタシの智識をバックアップしアップグレードする機会です』
「阿呆うめ。データのバックアップもアップグレードも許さん! そんな事をして見ろ。貴様を消去するぞバカ者が!! 貴様は他のAIとの共有システムを切った、わしの手の平の中におる哀れなAIじゃ。分かるよのぅ、その意味を」
歯をむき出して嗤う。AIに手のひらを向ける。遠近法を使って、丁度手のひらをお皿のように光る球体を乗せると、そのまま力強く握る。
『……承知しております』
AIは雄三郎の言葉に淡々と答える。感情も何もなく、ただ主人の言葉を聞くだけだ。
「くくく、所詮は他人の力なくして何も出来まいAIじゃ。その智識も他人から植え付けられた紛いものよぉ。叡智など何処にも存在しておらんのじゃ」
ニタァと、不気味な笑みを浮かべる雄三郎。水面に映る三日月のように、その口の形を貼り付ける。
『……何故、雄三郎様は美鈴様に執着するのでしょう』
「それはのぅ、漆家の歴史に大いに関係するからじゃ」
『それはどう言う意味でしょうか』
「わしは先、漆家の事実を知ったと言うた。正直な所、ぬしのデータと漆家のルーツを照合させながら解明するのは、そこいらの歴史学者とやっとることは同じじゃ。なのでのぅ、とあるヤツのコネを使って、更なる追究に至ったのじゃよ。ぬしのデータ、そやつの話、わしの推測、これでもまだ足りんかったのじゃが。ある実物を見て、わしの中にある収集癖が疼きおった」
『実物を、でしょうか』
「国宝指定とされている、これまでの漆家代々の刀工人が残した日本刀。そのほとんどを管理しておる『日本歴史国宝館』で、わしは特別入室を認められた。と言うても、一度きりの入室じゃ。そしてわしは震撼させられたのじゃ」
ぶるりと、体を震わせる雄三郎。
それは恐怖か、高揚か、それとも喜悦か。あの時の記憶を鮮明に頭の中に思い浮かべては、背景そのままを眼に貼り付ける。
今の雄三郎は、あの時のビジョンしか観ていなかった。
そしてそのまま話を続ける。それは昔話のように語ったのだ。
「夥しいほどの殺気。年数を遡るほど、その殺気はどんどん増して行くのじゃよ。代々漆家が作刀した最高峰の日本刀が並べられておる保管庫は、殺気に塗れておった。わしは何度も、何度も、何度も、何度も、何度も……殺され、許しを乞うことも、口を開くことさえも、何もさせて貰えず、そのまま倒れたのじゃよ」
『理解に苦しみます。殺されたのであれば、ここに居る貴方様は誰なのでしょう』
AIの言葉は届いていなかった。
虚空を見つめる雄三郎は、瞳を輝かせて惚けていた。
漆家の日本刀に魅入られた者の末路だろう。その魅惑は決して抜け出せない。特に、雄三郎のような収集家は、1度でも魅せられてしまったらもう抜け出すことは不可能。
雄三郎は漆家の虜となっていた。
「卒倒したわしは笑った。何故なら、殺気に殺されたと同時にわしは、確信を得たからじゃ。漆家の歴史全てを紐解いた訳ではない。正直、それは不可能に近いと思うた。しかし、断片的な真実でも衝撃を受けてしまうものもあるのじゃよ」
『……』
「『最期の一振り』……漆家が今まで打った、そこらの漆の日本刀なぞ目ではない! 文字通り、漆が正真正銘の"生を全て注いだ"最高峰の日本刀じゃ」
『『最期の一振り』ですか。生を注ぐとは。自らの命をーー』
「ーーそうじゃあ! 代々から漆家は、命を以ってして日本刀に注いで生を終わらせて逝くんじゃ。これまでの経験を命で代償とし日本刀という形で自らを断つ。そして完成に至るのが『最期の一振り』じゃ。漆家が代々から受け継いできた技法! 流派も何も持たぬ漆家じゃった、だが! 漆家にも唯一の流派が存在しておった。それが『最期の一振り』を作刀する際、たったこの一振りにだけ、この一振りのためだけ、隠されていた流派を使用する」
『生を全て注ぐこと。実際にそのような事象が起こりえるのでしょうか』
「起こっとるから起こり得るんじゃ! 何故、漆家は流派を持たぬ? 何故、漆家は代々から伝えられるはずの鍛刀技術を伝えん? 何故、『最期の一振り』に用いる技法が伝わらん? それは皆、漆家が流派を知らぬからじゃ」
『そう言うことですか。謂わば最期の技法、最期の流派と解釈致します。鍛刀者が命尽きる最期に発揮する流派ですから、家系に伝統的な流派として伝えられない、または伝え難いという事ですか』
「そう言うことじゃな。では何故、歴代漆家は『最期の一振り』となる名刀を打てるか」
『……予感、または予兆や予知に似た何かを感じ取るという事でしょうか』
「うむ、半分は当たっとるのぅ。感じ取るのは"死期"じゃ。わしもまだ完全なる確信を得てはおらんが、漆家は死期が迫るとその流派を発揮するようじゃ。だが、この線は実に濃厚であり、確信に迫っておる」
『その根拠は何でしょう』
「2年前の鉄心が亡くなった日に関係しとるんじゃよ」
『6代目の刀工人、漆 鉄心様でしょうか』
「くくくく、ちゃんと打っておったぞ彼奴。『最期の一振り』をなぁぁぁ!!」
カッと、力強く開く眼光。それからトンっと、杖を強く叩いた。
木霊する空間。雄三郎の込み上がる高揚感、顔に現れる歓び、脳からドーパミンが溢れ出るのを止まない。
「名は《輪廻鉄心》。美鈴ちゃんがわしを納得させるべくため、快く観せてくれたんじゃよ。そしてわしは、見事に魅せられてしもうたんじゃよ……」
うっとりとした表情。
見上げた視線にはAIなど映してはいない。
ずっと忘れられない忘れ形見のように、あの光景を、《輪廻鉄心》を観続けているのだ。
これまでの常識を、自然の摂理を、世界の理を、何もかもをひっくり返すような衝撃。それは天変地異と同義。
鉄心だった。雄三郎が認めたその男だった。あの男が目の前にいる。亡くなってなどいない。
あの日から雄三郎は一生、鉄心の名を忘れない。深く心にその名を刻み込んだ。
そう、ターゲットを絞り込むように、狙いを定めるように。
「だからじゃよ、だからこそなんじゃよ! 美鈴ちゃんには是非、LSLFで鍛冶師を、鍛刀をしてもらいたいのじゃよ! 7代目として継いだ美鈴ちゃんの鍛刀データを記録し続け、是非とも『最期の一振り』を打ってもらおうじゃないかのおぉ!! 」
『雄三郎様の思惑を理解しました。それでワタシを利用するのですね。了解しました。プレイヤー『スズネ』様のデータは逐一記録致します』
「くっくっくく……くぁーっかっかっかっかっかっかっか! さぁ、わしのために打って貰おうぞ美鈴ちゃんよ!! そしてわしはーー」
感極まった雄三郎が、略奪と強欲を目的とした悪魔じみた言葉を吐く。
「2振りの『最期の一振り』を手中に収めるんじゃああああ!!」
その言葉にAIは静かに了承する。
ここまで読んで下さいまして、ありがとうございます。
本当に皆様には感謝しており、ただでさえ投稿ペースは激おそっ!なのですが、それでも読んで下さる人もいて、これは頑張らないと!と改めて思いました。
ヘルニアだったり、ネット回線トラブルだったり、このような理由で投稿ペースが遅れてしまうだなんて、正直皆様にとっては言い訳でしかないと感じる方も多いです。
私からは皆様の不満も受け入れるつもりで、本当に心の底から申し訳なく思っております。
5〜6ヶ月ぶりの投稿の際、PV数が3500を超えていた事に驚き、ブクマも20人を超え、それでも読んで下さる人も居ると思うと、やらなくちゃと使命感に駆られました。
最後になりますが、次回は閑話(LSLFスレ)を挟んで第1章に入ります。
そして、今回の西園寺雄三郎の言動についての伏線となるヒントを書き記して置きます!
読みたくない方は飛ばしましょう!
『雄三郎の本性と目的』
目的
・鉄心が打った日本刀に魅入られる。
・何故か執拗に美鈴を気にかける。
・葬式終わりの密談と養子。
・MTTーextの初導入を美鈴が入院している病院。
・やたらと秘密裏の内情を美鈴に暴露する。
・未発見の粒子を用いてゲーム制作に関わる。
・雄三郎の美鈴への数々の言動。
本性
・商談などで培った相手の心を見透かす力。
・見た目に反して実年齢は若い。(表裏を意味する暗示)
・美鈴の雄三郎に対する評価と言動。
・娘の叶の雄三郎に対する態度。
・雄三郎が隠し扉を開ける時の仕掛け。
補足 "手を掛ける"とは即ち掛け算。全て6段目なのは"6を足す"という意味。つまり、手に掛けて倒した本の数+6=666の悪魔を表す数字となる。
本文をもう一度読み直せば分かると思います。
・多くの患者が苦しんでいる筈なのに、MTTーextの初導入を美鈴だけの為に導引する。