頼み事2
彼女のコンサル業というのは、片桐グループのグレーゾーンの取引と言えた。
ライバル会社の取引先や下請け会社に付入り営業や経営の弱みをそれとなく握る。
その弱みをいざと言う時に出して自社に有利なように事を運ぶ、それが片桐グループの定石らしい。
株の取引にも使えて便利とのことだが、それは割かし違法の部類なので聞かなかったことにした。
「そんなドラマみたいなことあるんだ」
「まあ、大企業は基本的に汚いことをしてるんだよ」
エリサはそう言っていたが、僕はそんな汚いことを未成年にやらせている社会に悲しくなった。
気づけばもう夕日が消えかかる時間帯だった。
「今日はありがとう。とりあえず、明後日仕事の話をするからまた来てくれ。
ちなみにドアはガンガン叩かなくても防犯カメラで見えるんだよ」
「なんで叩かせたんだ?」
「なんとなく愉快なだけだよ。意味の無いことを一生懸命するのは」
「なんだよそれ」
僕はあと片付けしようとすると「今日はいいよ。片付けは嫌いじゃない」と言ってそのまま帰ってきた。
僕は家に帰ってから、片桐エリサという少女について考えていた。
ネットで名前を検索すると、すぐにヒットする有名人だった。
(この田舎に住んでいることが話題にならないのが不思議だな)
17歳でありながらあの不気味な屋敷に一人でいて、尚且つ会社の‘汚い’仕事をしていると思うと胸が傷んだ。
今日一日で分かったことはエリサは無意識に好かれようと努力していること。
彼女は雇いたい言ったが強制労働はさせない、お茶は出してくれるし気遣いもすごく出来る。
ただ、17歳の一般的に見ると箱入り娘の彼女ができるのは少し不思議だった。