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柘榴の夢  作者: しんら
プロローグ
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プロローグ

最近夢で見た世界観がすごく綺麗だったので作品にしてしまいました。モチベーションが続く限り頑張ります

その世界には夢があった。現とは決して交わることのない、人の記憶、心、内側のみで構成された人の願望、欲望、渇望が込められたもの。


それを僕達は夢と呼び、かつては当たり前のように夢を見て、起きたときに「あぁ、さっきのは夢なのか」と落胆したり「あぁ、夢で良かった」と安堵したりした。


そんな風に僕らが眠りに落ちた時に見るものを夢と呼び、夢を憎んだり、夢を喜んだりすることは無いにしろ、身近にあり、あって当たり前、眠ったならば見て当たり前だった夢が存在したのは今は遠い昔の話。


ある時期、誰もが当たり前に夢を見ていた時代で、それは起こった。


今であれば子供から大人に至るまで誰もが知っている大厄災にして人類が二度と繰り返してはいけない喜劇にして悲劇。


人類が初めて夢に溺れ、世界が夢に沈んだ未曾有の災害を僕らは忘れることはない。―――忘れてはいけないのだ。


世界が夢に沈み、各地で現実のものとは思えない光景が広がり、自身の望んだものが実体化したことにより世界は七日間の間、楽園となった。


願えば叶い、望めば具象化する。まさに、()()()()()ことが現実となり無秩序とはいえ、最も世界が幸せだった七日間。


それが人間の犯した、たとえ星が滅び、宇宙が消え去ろうとも残り続ける罪。


人は欲望を自制することを忘れ、望んだものを形にし、願った未来を現実のものとした。


そうして訪れた七日目の終わり、―――世界の人口その七割が一夜にして消失、そこに存在していたという痕跡すら残さず世界から消滅した。


ありとあらゆる願いを叶えた楽園は世界人口の七割を引き連れて消滅し、残された人類は絶滅寸前まで追い詰められた。


統治者を失い、秩序を失い、食料を失い、子を失い、土地を失い、希望を失い、人は生きるための目的と生きるための方法を忘れた。


絶え間なく続く争いと、どこかで誰かが見た夢が具象化するという厄災、通称夢現によって産み出されていく怪物により、世界は荒廃し、それこそ絶滅していないのが信じられないくらいまで人類は追い詰められた。


その明かりの見えない暗黒の未来を変えたのが、現在この世界を統括し、人類を希望へと誘う三人の賢者だ。


彼らは旧人類では持ち合わせていなかった超常的な力を持って、各地の争いを止め、人の夢から産み落とされた怪物を屠った。


そうして、生き延びた人類を一ヶ所に集め、三賢者が造り出した束の間の安息地にて絶滅の一途を辿っていた人類という種をを保護した。


彼等は争うことしかしなかった人々に教えを説き、共存することで未来を切り開くことを思い出させた。


世界から文字通り争いが消え去り、残った問題は人の夢が具象化する通称夢現(むげん)と呼ばれる災害のみが世界に残った。


ようやく開拓した大地もどこかの誰かが夢を見たことにより、産み落とされた怪物に蹂躙され、人同士の争いは無くなったというのに日に日に人間は死んでいく。


それを見て、悲劇を嘆いた三人の賢者は人々の中から夢より産み落とされる偉業の怪物、夢人(ゆめびと)に対抗するための力を持つに相応しい者達を選定し、彼等に力の呼び出し方と使い方を教え込んだ。


だが、それだけでは足りぬと考えた三賢者と三賢者に選ばれた人々は遂に夢の管理という、人知を越えた技術を編み出し、それをもって夢が現になるという災害夢現(むげん)の発生を抑制を始めた。


それから幾百年、人類は争いによって失われつつあった科学を取り戻し、果てにはそれを昇華させた。


夢現により発生した空間のみで採取される特殊な鉱石や作物、その世界に満ちる未知のエネルギーを三賢者の協力によって解明し、かつての人類では到達できなかった科学を越えた、最早魔法と呼んでもいい代物にまで育て上げたのだ。


人類はその知恵と技術を使い、夢現に対抗し、かつては手も足も出なかった夢人を退け、一度は奪われた土地を奪還することに成功した。


そのまま破竹の勢いで人類は得たばかりの技術と力で土地を取り戻していく――――――ような甘い結末は辿らなかった。


やはり、まだ未熟であったのだ。それが自分達の知りうる科学を超越した魔法などと呼ばれる技術であっても、それを使いこなすにはあまりにも性急過ぎた。


ある区域を皮切りに派遣された土地奪還部隊はその半数を戦闘で失い、敗走。その際に連れてきてしまった夢の住人達により、部隊が引き返した街は襲撃され、結果、その土地に住んでいた人間は残った半数の部隊と共に全員、それこそ赤子から年寄りに至るまで一人残らず殺され、三賢者の内の一人が駆けつけるまでに防衛に当たっていた終人とそこに住んでいた力なき一般人含め、総勢1万3489人が夢人により鏖殺(おうさつ)された。


三賢者の一人によって夢人はそこで討伐されたが、その凄惨な光景を見た三賢者は、人類はこれ以上先に進むには早すぎると断定され、襲撃された街を放棄し、強大な結界により人類は限られた地域でのみ生存することを強いられた。


それから、また長い時間をかけて人類はその活動区域内で発展を続け、現在巨大な高層ビルや神殿が乱立するという、夢が当たり前に見れていたというその昔、その時代に生きていた人間が見たならば困惑を隠せないであろう、大昔と最新の時代の建造物が入り乱れた街にて。


―――僕達は生きている。

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