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「村長!?どうしてここに?」


とリオが尋ねると、村長は面倒くさそうに


「お前の保護者に話があると言ったはずだが」


と返した。


(あ・・・そういえば忘れてた。でも、報告した時、お父さま達にはちゃんと伝えたよね。うん)


リュシアンとレオンは恭しく村長に近づいて深く膝を折った。


「村長、先日はリオを助けて下さってありがとうございました」


村長が頷くと、リュシアンは言葉を続ける。


「村長、先ほどのお言葉の意味は・・?リオが各地を診療して回る間、村長が護衛して下さるということでしょうか?」


村長は黙って頷いた。


リオは驚愕して、ポカンと口を開けて村長を見つめた。


(え・・・?村長が私の護衛!?そんな恐れ多いことアリ?)


「代わりにリオに頼むことがある」


(こっわっ!引き換えに何をさせられるんだろう?)


リオが顔を強張らせると


「そんな顔をするようなことを頼むわけなかろう」


と叱られた。


「リオにはフォンテーヌ国民を治療してもらうだけでなく、シュヴァルツ大公の治療も頼みたいと思っています。出来たらその際にも村長に来て頂けないでしょうか?伝説ではシュヴァルツ大公国の森に魔王の体が眠っていると言います。魔王復活を阻止するためにも大公の健康状態が重要なのです」


リュシアンは畳み込むように説得を試みる。


村長は何かを思案しながら


「分かった。それは構わない。協力する。・・・・・・・・が、奴らはそれを信じていると思うか?」


と尋ねた。


「奴ら・・・?というのはポレモスや帝国がですか?信じている、とは何を?」


リュシアンは戸惑いながら聞き直す。


「奴らはシュヴァルツ大公国の森に魔王が眠っていると信じていると思うか?」


村長が頷き、もう一度質問した。


リュシアンは益々戸惑って、


「伝説というか通説ではそのように信じられていますが・・・」


と答えになっていない答えをする。


村長の言葉を吟味していたレオンは、ハッと何かに思い当たったようだ。


顔に驚愕の色を浮かべて


「ということは、実際はそこに魔王はいないということですか?」


と訊ねるが、村長は黙ったままだ。


レオンは


「私たちは協力してポレモスの陰謀を退けようとしているのですよね?協力するためには情報を共有してもらわないと対応に困ります」


と言い募る。


村長は溜息をつきながら、


「我々は本来嘘がつけない。嘘は人間の特性だ。シュヴァルツ大公国の森にいる魔王の体は本物ではない。が、奴らにはそれが本物だと信じていて貰った方がいい。これが真実だ」


と打ち明けた。


レオンは猶も追及の手を緩めない。


「では、本物はどこに?」


と尋ねるが、村長は何も答えない。


無言の村長は答える気がないようだ。レオンは諦めたように肩を竦めた。


リュシアンが言葉を繋ぐ。


「奴らにシュヴァルツの森の魔王が本物だと信じてもらっている方が我々にも好都合です。偽物である限り、魔王の復活はないわけですから。奴らの目がシュヴァルツの森から離れないように、敢えてそこでの探索を仰々しくさせるというのはどうでしょうか?」


「それがいいだろう。奴らがシュヴァルツの森以外をうろつき始めたら、すぐに我に知らせて欲しい。それから、リオの治療の日程が決まったら連絡するといい」


村長はそう告げて、そのまま去ろうとするのでリオは慌てて止めた。


「あ、あの、私たちから村長に連絡を取るためにはどうしたらいいでしょうか?」


村長はしばらく考えていたが、突然服を脱ぎだした。


レオンはリオの目を塞ごうをとし、リュシアンは「・・村長っ、な、何を・・・」と絶句している。


リオたちの反応に全く頓着しない村長は、上半身裸になっていた。その肉体のあまりの美しさに見惚れているとレオンに睨まれた。


(だって・・・。古代ギリシャ彫刻が描こうとした完璧な肉体ってこういう感じなんだろうな。無駄な肉がこれっぽっちもない。六つに均等に割れた腹筋に、肩から腕にかけての筋肉の美しいこと)


リオは思わず溜息を吐いた。レオンの咳払いでリオは慌てて我に返る。


村長が少し身震いをすると、突然その背中からこの世のものとは思えないほど、幻想的な翼が生えてきた。三対、合計六枚の羽根が優雅に広がる。白い翼なのに、虹色に発光している。


その場にいた全員はあまりの美しさに圧倒された。教会で見たことがある絵画や彫像のような神の姿を目の当たりにして、畏怖の念に心を揺さぶられる。


全員、自然と跪いた。確かに村長は神なのだ、と実感した。


それ位、美しく、崇高な、神々しく、荘厳で、畏怖すべき存在だった。


村長は無造作に自分の翼から羽根を一枚むしり取った。


それをリオに渡す。


「その羽根に願えば、我のところに転移することができる」


瞬く間に翼が消え、いつもの村長に戻っていた。


村長はさっさと服を整えると別れも告げず、あっという間にその場から消えた。


**


その日の夜、リオはレオンに村長の裸に見惚れていたことを甘く責められた。そして、レオンは自分も筋トレを始めると宣言した。


(・・・うん、私も筋トレするから一緒に頑張ろうね)


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