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ベルトランド

レオンは結局一睡もできなかったが、おかげで感染症対策の報告書は書き終えた。感染症はとにかく拡大させないことが最優先だ。そのための施策を多く盛り込んだ。リュシアンはレオンに礼を言うと、伝令に報告書を渡し「すぐに施行するよう国王に伝えろ」と命じる。伝令はリュシアンの乱暴な口調に慣れているので、苦笑しながらも素早く消えた。


「ちゃんと朝食を取らないとリオを捜すエネルギーが足りなくなるぞ」と言われ、レオンは渋々リュシアンと肩を並べて食堂に向かう。


既に席についていたセリーヌはすっかり憔悴しきっている。他の面々も暗い顔をしていた。


その時、執事のセバスチャンが慌てた様子で食堂に入ってきた。アンドレに随行してコズイレフ帝国に派遣されたジョルジュの代わりに筆頭執事になったが、いささか頼りない部分がある。


「公爵邸の正面の門で騒ぎがありまして・・。リオ様のことで伝えたいことがあるという使者がおります。いかがいたしましょうか?」


セバスチャンはリュシアンに小声で耳打ちする。リュシアンは「すぐに俺の執務室に通せ」と命じた。


(当たり前だ。ジョルジュだったら、今頃その使者は中に通されているだろう)


レオンはそう思ったが、ジョルジュのような執事はなかなかいないのだ。リュシアンと一緒にレオンも足早に執務室に向かう。


執務室でしばらく待つと使者が通されてきた。


執事が躊躇った理由は何となく分かった。使者は狼型の獣人だったのだ。ブーニン地方にしか居住しない獣人はフォンテーヌの他の地域ではまだ馴染みのない存在だ。


人狼の使者は緊張しているようだが、書面をリュシアンに渡す所作は洗練されていて堂々としたものだ。リュシアンはざっと書面を読んだ後、それをレオンに渡す。


書面には、リオは無事で獣人が保護していることとミハイルが死んだことが書かれていた。


レオンは思わず使者に掴みかかる。


「本当か?!リオは無事なんだな?」


使者が動じることはなかった。しっかりと頷き「我々の統率者であるベルトランドの名に懸けて」と請け合う。


レオンの心の安堵と疑心が載った天秤が揺れる。


リュシアンが「何があったか詳細を報告してくれ」と使者に問うが、レオンはそんなまだるっこしいことをしていられない。


使者に「リオが居る場所を教えてくれ」と頼み、ベルトランドの屋敷の位置を確認すると、後はリュシアンに任せレオンは転移の間に走った。



***



獣人の村近くに転移した後、レオンは必死にベルトランドの屋敷に走った。早くリオの顔を見て安心したい。


獣人の村の中心近くにある彼の屋敷は、素朴だが頑丈で不思議な魅力のある造りだった。逸る心を抑えつつ、正面の扉を叩く。すると使用人らしき獣人がドアを開けたが、レオンの顔を見て絶句した。


「・・・えっ、あんた、ついさっきも来た・・・?同じ人だよね?」


という台詞に、レオンは嫌な予感しかしない。


使用人が主人を呼びに行く間、レオンの心は不安に苛まれていた。そして奥から主人らしき獣人が現れたが、レオンの顔を見て驚きを隠せないようだ。


「レオンハルト・シュミット・・・、だったよな?リオはどうした?」


レオンは嫌な予感が的中したのを実感し、絶望的な気持ちになった。愕然と膝を落としたレオンを何とか立たせるようにして、その男はレオンを屋敷の中に招き入れた。


ソファに座ったレオンの前に強い香りのするお茶が出される。


(ああ、これはチャイだな。リオはシナモンの香りが好きだった・・)


そう考えただけで涙が溢れてきた。みっともないが隠そうという気持ちにもならない。座ったままボロボロ泣きだしたレオンに、主人らしき獣人が慌てて


「俺はベルトランドという。君が本物のレオンハルト・シュミットでいいんだな?」


と質問する。


レオンは黙って頷いた。


リオがまた連れ去られた。恐らくレオンに化けたポレモスに。この様子だとほんの少しの差だったのだと思う。もう少し早くここに着いていれば・・・情けないが涙が止まらなくなった。


ベルトランドは気の毒そうに昨夜の出来事をレオンに語った。ベルトランドもポレモスのことを知っている。リオが騙されて連れ出されたと察したのだろう。


スタニスラフ・ブーニンのことは予想外だったが、おかげでリオが無事だった。獣人が味方についたことも朗報だ。ミハイルが死んだことは正直、自業自得としか思えない。


「リオは気丈な娘だな。エラにも臆せず言い返していた。ミハイルにも決して負けていなかった。ミハイルに酷く殴られて顔を腫らしても涙一つ見せなかったんだ」


リオがミハイルに殴られたと聞いて、レオンの握った拳が震える。


(・・・くそっ、許せない。怖かっただろう。リオ、どうか無事でいてくれ)


「そんな気丈なリオが、レオンハルト・シュミットが現れた途端にボロボロ泣き出してな。『怖かった。ただただレオン様が恋しかった』って泣きついたんだ。リオがどれだけ君を信頼して愛しているかって想いが伝わってきたよ」


ベルトランドは優しい口調でレオンに話しかける。


「ポレモスが化けていたんだろうが、すげーもんだ。本物と寸分の違いもない。声や仕草もな。リオが騙されるのも無理ないと思う。しかし、俺ももっと慎重にすべきだった。申し訳ない」


とベルトランドは頭を下げた。


彼が悪い訳ではない。頭では分かるがリオが居ないという事実を受け入れることができなかった。


情けないことにレオンはそのまま泣き続け、最後は泣き疲れて眠ってしまったらしい。



***



レオンが目を覚ますと、既に窓の外は薄暗くなっていた。知らない部屋の知らないベッドに寝かされている。ここはどこだ?と記憶の糸を手繰り寄せた。


レオンは、自分がベルトランドの家にいることを思い出した。


(私は何をしているんだ・・・時間を無駄にしてしまった)


気持ちばかりが急いた。その時、誰かがドアをノックする音がして返事をすると、ひょいとリュシアンが顔を出した。


レオンは顔が紅潮するのを止められなかった。こんなにみっともないところを見せて恥ずかしい。だが、リュシアンは普段と変わらない。「夕飯ができたから食堂に来い」と伝えるとそのまま出て行った。


レオンが身支度を整え、恐る恐る食堂に行くと、ベルトランドの向かい側にリュシアンとカールが座っていた。ベルトランドが明るく声をかける。


「よぉ、レオン、目が覚めたか。少しは疲れが取れたか?ずっと眠っていなかったんだってな?」


不安と恥ずかしさが入り混じり、レオンはどういう表情をしていいのか分からない。


「リオが心配なのは俺たちも同じだ。これからどうするか戦略を立てる。ベルトランドは敵の情報を沢山掴んでいるからな。夕飯の後に作戦会議だ。レオン、泣いてる暇はない。リオのために働いてもらうぞ」


というリュシアンの言葉にレオンは顔を赤くして頷いた。


カールは静かに食べていたが


「私はルイーズを失った時泣き過ぎて目が開かなくなった。何も恥じることはない」


と言う。


(ああ、カールもリュシアンも、そして恐らくベルトランドも情けない男の涙を軽蔑しないでいてくれる)


レオンは少し安堵してベルトランドの隣に座ると、美味そうなブッフ・ブルギニョンが出てきた。この地方で有名な赤ワインで牛肉を煮込んだ料理だ。食欲をそそる匂いに思わずお腹が鳴る。リオが居なくなってからほとんど何も食べていなかったことを思い出した。


気がついたらレオンは夢中で食べていた。腹が減っては戦ができぬというのは本当だ。ずっと靄がかかっていた思考が少し明瞭になった気がする。リオを捜す気力が戻ってきた。絶望や虚無感も減ったようだ。


夕食後、レオン達はベルトランドの執務室に籠り、情報共有と作戦会議を行った。


ベルトランドによると、リオはコズイレフ帝国の皇宮に連れていかれた可能性が高いと言う。ミハイルは皇宮に移動する予定だった。というのも、ポレモスは皇帝直属の筆頭魔術師として皇宮で強い影響力を持っているからだ。


但し、ポレモスは皇宮に常駐している訳ではない。あちこち飛び回り、フィクサーのような役割をしている。エラやミハイルとの連携もポレモスが一手に握っていた。ミハイルが死んだことや獣人が裏切ったことは既にポレモスに伝わっているだろうとベルトランドは語る。


エラとコズイレフ帝国皇帝は協力しているように見えて、実は一枚岩ではないという。互いに信頼関係があるわけではない。エラの目的はあくまで自分の若返りで、それさえ叶えば後はどうなろうと構わない。一方で皇帝の目的はフォンテーヌ侵攻だ。そのためにポレモスを参謀として使っている。フォンテーヌを支配下に置くことが最優先だ。


皇帝は、ミハイルはともかくエラを仲間にする理由が分からないと言っていた。ポレモスがエラは魔王復活に必要だと主張したため、仕方なくエラを仲間に入れたという。しかし、何故エラが魔王復活に必要なのかは明かさなかった。


フードを被った男たちは予想通り魔人族だ。魔王復活を望む種族だが、ポレモスに心酔しきっている。特にメフィストは常に卑屈な笑みを浮かべ、ポレモスの歓心を得るために追従を並べている。それなのにポレモスはメフィストのことを奴隷のように扱い、メフィストはそれを有難がっている風情すらあり、気持ちが悪かったとベルトランドは語った。


ポレモスが何を考えているかが一番分からないとベルトランドは言う。


例えばセイレーンの村への行き方は皇帝しか知らない極秘事項だ。エラは勿論、ミハイルも魔人族も獣人族も知らない。だが、ポレモスは村のことを知っている口ぶりで、村に行けば若返りの術を使える者がいるとエラを唆した。エラは躍起になって村への行き方を探るが皇帝は秘密を明かさない。エラは怒り狂う。ポレモスはエラの狂乱ぶりを満足気に眺めていたという。


また、ポレモスは魔人族とエラを一緒に行動させたがった。エラは魔人族を卑しい種族と、魔人族はエラを愚かな老女と見ていて、互いに嫌悪感を抱いている。何故そんなことをさせるのかとベルトランドは疑問に思っていた。


「ポレモスは魔王復活のためにそうしたんだろう」


レオンの言葉にベルトランドは呆気にとられた。


「魔王復活?シュヴァルツ大公国の森に眠るという伝説の?」


魔王復活には憎悪や嫉妬のような人間の醜い感情が必要だ。それを集めさせるために一緒に行動させていたのではないかとレオンは解説した。また、ポレモスはセイレーンの村への行き方を知っているはずだ。知らない振りをしてわざとエラを煽ったのも、彼女の怒りを増幅させるためではないかと予想する。


目下、コズイレフ帝国は着々と戦争を始める準備をしている。国境沿いに秘密裡に軍を配備し、フォンテーヌ国内を混乱させるため、ポレモスがわざとジフテリア菌を王国のあちこちにバラまいたらしい。


レオンは手段を選ばない汚いやり口に憤りを感じた。一般庶民を狙うのは最低の策だ。リュシアンとカールも同じように感じているのだろう。厳しい面持ちを崩さない。


***


コズイレフ皇帝は大きな戦争を望んでいる。


大きな戦争が始まれば人間の醜い感情も集めやすくなる。だから魔人族も戦争を望んでいる。皇帝は魔王の力を借りれば侵略も意のままだと魔王復活を支援する、という構図らしい。


カールはシュヴァルツの森に眠る魔王について早急に調べると申し出た。シュヴァルツ大公にも至急知らせるべきだろう。シュヴァルツに関する問題はカールに任せることになった。


ブーニン地方の獣人族は帝国と戦争になった場合、フォンテーヌ王国のために戦うとベルトランドは請け合ってくれた。ただ、不安材料があるという。ポレモスは獣人族を魔法で操れるのだ。


「今回は、ミハイルがブーニン侯爵家への忠誠を盾にして我々を使役していたので、ポレモスが魔法を使う必要はなかったが・・・」


ベルトランドの言葉にリュシアンは考え込む。


「そうだな。ポレモスの魔法についてもっと調べる必要がある。村長の協力を得れば・・」


ブツブツ独り言を呟いた後「ま、これからの課題だな」と指でテーブルを弾いた。


「ところで・・・ベルトランド」


リュシアンは改まって背筋を伸ばす。


「私の妻は赤ん坊の頃、ベルトランドの父君か祖父君に助けられたことがある、と思う」


ベルトランドは虚を突かれたように一瞬言葉を失った。


「・・・・シモン公爵夫人は純血種のセイレーンという噂は聞いたことがある。祖父が助けた赤子のことか?」


リュシアンは黙って頷くと


「感謝のしようもない。セリーヌを救ってくれてありがとう」


と頭を下げた。


ベルトランドは苦笑した。


「俺が助けた訳じゃない。俺は生まれてもいなかった。助けたのは祖父のコルラードだ。親父もまだ子供だった。赤ん坊が可愛くて、親父は毎日見に行っていたそうだ。綺麗なお母さんと一緒の姿を見ると絵画の聖母子像のようだと言っていたよ」


懐かしそうにベルトランドは語る。そして、リュシアンに向かって頭を下げた。


「ご両親を助けられなくてすまなかった。祖父コルラードはずっと後悔していた。帝国の追っ手に捕まって殺されたんだ。赤ん坊だけは祖父たちが意地でも守ったが・・・。赤ん坊は宝だからな」


それを聞いてレオンは一つ思い出したことがあった。


「獣人族は赤ん坊を守らなくてはいけないという価値観があるだろう?」


と尋ねてみる。


「そうだな。カブ(幼獣)は何より大切な存在だ」


ベルトランドの返事に、リュシアンはレオンの質問の意図を悟った。


「以前、ポレモスは獣人を操って妊婦を殺させようとしたが出来なかったらしい。それはやはり獣人にとって根本にある価値観を翻すことが出来なかった、ということだな?」


「それはそうだ。妊婦やカブは我々にとって何より大切な存在だ。魔法で操られていたとしても、妊婦やカブを殺すことは出来ないと思う」


「なるほどな。ポレモスは獣人をある程度は操ることができるが、根本的な倫理観を崩すのは不可能・・・ということか」


「興味深い」と独り言ちて、レオンは考え込んだ。


リュシアンは話を続ける。


「エラはリオに若返りの術をさせるというが、リオによると若返りはできないそうだ。エラはどうやって若返るつもりなんだ?」


リュシアンの疑問にベルトランドが答える。


「ああ、エラにはエレオノーラと言う娘がいてな。娘はセイレーンの血を引いているから永遠に若いままだそうだ。エラはエレオノーラを殺して、その体に自分の意識を入れるようリオに命じていた」


ベルトランドの言葉にカールが真っ蒼になって立ち上がった。


「ど・・どうした?カール?」


カールが震える声で答える。


「エレオノーラは私の娘なんだ・・」


ベルトランドの口がポカンと開いた。


「・・・・・ということは、カールはあのエラの・・・・?」

「夫だ」


ベルトランドは絶句して気の毒そうにカールを見つめる。


「そうか・・・。リオも激高してエラには絶対に協力しないと怒鳴りつけていたな」

「エレオノーラはどこにいるんだ?」


リュシアンが尋ねると、ベルトランドはポレモスが眠らせたままずっと持ち歩いているという。


「・・・持ち歩いている、だと?」

「エラが、絶対に逃げられないようにと命令したらしい。魔法で意識を失わせ、どこかの空間に閉じ込めているようだ。そんな魔法、聞いたことないけどな」


エラの相変わらずの悪魔ぶりにカールも呆れたのだろう。俯いた視線が殺気に満ちている。


「正直、私はエレオノーラに愛情を感じたことはない。親として失格だが、エラに関わることは私にとって全て嫌悪の対象だった。しかし、だからと言って、母親が娘を殺すのを看過する訳にはいかない」


カールの言葉にその場の面々が頷いた。


多くの課題があることは分かった。しかし、レオンにとって重要なのはリオの無事だけだ。リオを助けるためにはどうすればいいかと考えていると、ベルトランドがレオンに向かってウインクをした。


「レオン、お前が心配なのは良く分かる。だが、リオにはスタニスラフ様が付いている。あの方が付いている限りリオは無事に帰ってくると思うぞ」


楽観的な言葉にレオンは怒気に燃える視線を返した。


「だったら、ポレモスなんかに騙されないで欲しかったな」


ベルトランドは肩をすくめただけで、結局レオンもそれ以上の文句は言えなかった。ベルトランドが悪い訳ではない。


しかし、状況は絶望的だ。帝国の皇宮に侵入するのは不可能に近い。国境を越えるだけでも一苦労な敵国だ。しかも、見つかった時に何も言い訳が出来ない。帝国がフォンテーヌに侵攻する絶好の口実を与えてしまう。


リュシアンはレオンを見ながら語りかけた。


「レオン、お前の気持ちは分かる。本当だ。これがもしセリーヌだったら、と考えると恐ろしくて想像もしたくない。しかし、ベルトランドの言うことは一理ある。ミハイルとスタニスラフの話を聞いて思ったんだ。村長が言っていた通り、オリハルコンがリオを守る加護だとしたら、無事に帰ってくるんじゃないか?まぁ、こういっても安心できるはずないのは当然だがな・・・」


レオンはリュシアンの言葉に頷くこともできず、ただ俯くだけだった。しかし、先ほどの態度は礼を失していたと反省してベルトランドに謝罪した。ベルトランドは「気にするな」と微笑む。いい奴だ。


最終的にリュシアンは今後の行動として以下の八つの課題を挙げた。


1.リオを帝国皇宮から救出する

2.帝国のフォンテーヌ侵攻に備えて国境の防衛を強化

3.帝国侵攻に備えてシュヴァルツ大公国とスミス共和国との三国同盟を成立

4.ジフテリア菌の封じ込め

5.魔王復活を妨害する手段を検討

6.エラの撃退法

7.ポレモスの封じ込め

8.エレオノーラの救出策


ベルトランドのおかげで多くの情報が入手できた。特に帝国が具体的な軍事行動を始めていることが分かり、事態は切迫している。早期に対策を講じる必要がある。それはリュシアンの担当だ。カールはシュヴァルツ大公国との繋がりから、外交面と魔王に関する調査で力を貸してくれる。


リオとポレモスについては村長の協力が必須だろうと意見が一致した。レオンは村長との接触に力を尽くす。


ベルトランドに礼を言い、レオン達はその日の深夜にシモン公爵邸に戻ってきた。



*****



真夜中に冷たいベッドに一人横たわるとリオの温もりを思い出す。レオンの目尻から一粒の涙が頬を伝った。恋人のことを考えて泣くなんて、自分はこんなに恋愛体質だっただろうか?これほどリオに依存していたのかと自嘲して溜息をつく。


(リオ、リオ・・・会いたい。今、君はどこに居るんだ?)


まんじりともせずに夜が更けていく。




ふと、かすかにノックの音がした。気のせいかと思ったが、念のため確認することにする。用心に越したことはない。


警戒しながらベッドから立ち上がり、寝室のドアを開けると・・・・



リオの幻が立っていた。


ついに幻覚まで見えるようになったかと情けなくなる。



すると、その幻覚はレオンの首に抱きついて、わんわん泣き出した。


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