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制服

翌朝、療法所に出勤する支度をしていたら、セリーヌ、エディ、ルイーズ、アニーがニヤニヤしながらリオたちの部屋にやってきた。レオンも「何事か?」という表情をしている。


四人は相変わらずニヤニヤしていたが、見事にシンクロしたお辞儀をすると「ハッピーバースデー」を歌いだした。本格的な踊りつきで、息もピッタリ合っている。突然始まったミュージカルにリオとレオンは釘付けになった。


四人の見事なコンビネーション、三度繰り返して歌い終わった後の決めポーズまで完璧だった。


素晴らしい!リオは感動して夢中になって拍手をした。レオンも呆然としながら拍手している。一際大きな拍手と歓声が聞こえたと思ったら、扉のところにリュシアンとカールが立っていて、感涙を浮かべながら懸命に拍手と歓声を送っていた。


四人はリオに近づいて順番に彼女を抱きしめる。「お誕生日おめでとう、リオ」と祝われて、そういえば今日が本当の誕生日だったと気がついた。ついに十六歳だ。前世を入れると五十四歳だけど。はは。


道の駅に行った時は休診日を選んだので、実際の誕生日は今日なのだ。


自分の誕生日を祝うためにわざわざ準備してくれたんだ、と思ったら、すごく嬉しい。リオは心からお礼を言った。


「あとね、レオンからリオがプロポーズを受けたって聞いたわ!おめでとう!婚約祝いもしなくちゃね!」


セリーヌはやる気に満ち満ちて拳を握りしめて震えている。背後に炎が立ち昇るのが見えた。他の女性陣も同様だ。


(だ、だいじょうぶかしら・・・?)


不思議と彼女らのやる気に正比例して不安が増大する。


「リオとレオンの結婚式は最高の日にするわ!ドレスのデザインとか、諸々の準備を完璧にして!ああああああああ、燃えてきた!!!」


力強く拳を振りまわすセリーヌと対照的にリオは青褪めた。


「・・あ、あの、お母さま。私はそんな盛大に結婚式をして頂かなくても・・・。ひっそりとこじんまりとした式が出来たらなって思っていたので・・・」


セリーヌはニッコリ微笑んだ。


「分かったわ。それがリオの希望ならそうする。それでも、準備は色々と必要なのよ。一応あなたは公爵令嬢だからね。でも、面倒くさいことは全部私たちが引き受けるわ。リオはドレスとか、どんな式にしたいとか、そういうことをレオンと話し合って頂戴ね」

「分かりました。あ、ありがとうございます」


面倒くさいことを引き受けて貰えるのは有難い。レオンの顔を見ると、ちょっと照れくさそうに笑顔を返してくれた。


セリーヌは悪戯っぽい表情で


「それからね。今日はこれもあるのよ!ジャーーーン!」


とリボンのついた大きな箱を取り出した。


(え、まさか・・・これは誕生日プレゼント!?)


以前誕生日に何が欲しいか聞かれた時に「欲しいものはないから何もいらない」と答えてしまったリオは、オリハルコン以外に誕生日プレゼントを貰った経験がない。


完全な自業自得だが、誕生日プレゼントを貰える日が来るなんて思わなかったと、リオは胸をときめかせた。


「開けてみて」と言われてドキドキしながら箱を開けると白いドレスが入っていた。


ドレスといっても普段着ているドレスよりずっと簡素である。スカート丈はこの世界の常識として足首まであるが、ゴテゴテした飾りやパニエもないすっきりしたデザインで動きやすそうだ。


(これって・・日本のナース服にちょっと似ている?)


リオはまじまじと観察してみる。前で合わせる形の襟には臙脂色の線が入っていて素敵なアクセントになっている。両脇の大きなポケットの縁も同じ臙脂で、全体的に上品で機能的なデザインだ。


セリーヌが照れくさそうに


「日本のナース服を参考にしたのよ。これなら診療中も動きやすいんじゃない?あとね・・・うん・・まあいいわ」


セリーヌは何かを言いかけて口ごもった。


「ありがとうございますっ!!!すごく素敵!嬉しいです!」


リオはセリーヌに抱きついてお礼を叫ぶ。他の三人にも深く頭を下げた。


「これは私たち四人からの贈り物なの。実はアニーにも同じものを作ったのよ。療法所の制服みたいで可愛いじゃない?洗い替えもあるから、汚しても大丈夫よ」


サムズアップしながら得意気に言うセリーヌを見ていたら思わず涙が滲んでしまった。


(療法所の制服!やった!アニーもお揃いなんて余計に嬉しい)


「是非着てみてほしい」と言われたので、アニーと一緒に別室で着替える。


「療法所の制服ができた!やったね」


とはしゃいでいると、アニーもはにかみながら頷いた。


リオが歌とダンスが素晴らしかったと褒めると、アニーは嬉しそうに


「奥様が指導して下さって、みんなで練習したんです。昨日は最終リハーサルだったので、話し合いの後、リオ様とご一緒できなくて申し訳ありませんでした」


と言う。


そうだったんだとリオは安心した。何となく自分だけ置いていかれた気持ちになっていたから。


ドレスのサイズはピッタリだった。二人で出ていくと全員がため息をついて「可愛い」だの「良く似合う」だの褒め倒してくれる。


いつの間にかパスカルも来ていてアニーを称賛している。


レオンはリオを抱きしめて「食べちゃいたいくらい可愛い」と耳元で囁く。夕べを思い出して不覚にもちょっと赤くなってしまった。


気がついたらもうすぐ九時だ。再度お礼を言い、レオンとアニーと一緒に慌てて療法所に出勤する。


今日も忙しい診療の一日が始まる。新しい制服で!

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