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甘い

翌朝フィオナが目を覚ますと超絶美形の顔面が目の前にあった。男らしい精悍な顎のラインから視線を落とすと、逞しい筋肉質の体が・・は、ハダカ・・・?なんで裸の男の人と一緒に寝て・・・?フィオナは一旦パニックに陥った後、急速に覚醒した。


昨夜のことを思い出して焦りまくるフィオナを、艶々した黒髪の隙間から金色の瞳が見つめている。


「せ・・先生?」

「ああ、おはよう。体は大丈夫かい?」


ものすごい甘やかな微笑みを向けながらフィオナの頬を優しく撫でる。



セイレーンの能力ってスゲ――――!!!



ミハイル・ブーニン侯爵があれほど執着してたのも納得だ。先生が完全に若返ってる・・・。白髪も消えた。


「先生・・目の色が違いますけど・・」

「ああ、若い頃は金色に近かったんだ。年と共に薄れていったけどね」


ニヤリと笑う先生と金色の瞳。肉食獣の瞳みたい、なんて言っていいのかしら?捕食されてしまいそうな不安と、いやでも食べられたいというイケない願望が同時に浮かぶ。


「君のおかげだ。でも、本当にこれで良かったのかい?好きな男を誰でも番に出来たんだよ?」

「好きな人を番にしたかったから先生を襲ったんです」


先生は苦笑しながら髪をかき上げる。前髪で隠れていた顔が露わになると色気がダダ洩れだ。いやもう眼福です。美しすぎます。目のやり場に困って俯くと、先生はフィオナの首の後ろに手を差し込んで彼女の顔を自分に向けた。


麗しい顔がち、近い・・・。先生の目は熱を帯びている。


「私でいいのかい?私は君にもらってばかりで何もあげられないのに」

「私は先生から沢山のものを頂きました。先生以外の人は考えられません」

「アンドレは?彼は本気だ。誠実だし、彼の方が良い男だよ。若いし」


そう言いながら先生は目を伏せた。


「若さは関係ありません。前も言いましたが、私は前世四十一歳で死にました。今世も入れるともう五十二歳なんですよ」


先生は大きくため息をついた。そして、何故か嬉しそうにクスクス笑う。


「リオ、君は最高だ。私はリオという君の内面にどうしようもなく惹かれたんだ。誰よりも愛している」

「わ、わたしもです。でも、先生こそ私なんかでいいんですか・・・?」


過去に自分を捨てていった元カレたちが脳裏に浮かぶ。


「君は私が世界一愛している女性だ。『私なんか』って言わないでもらえるかい?」


「だって、私は欠点ばかりです。可愛げもないし、空気も読めないし、人付き合いも下手だし・・・」


「君が欠点として挙げたところは、私にとっては魅力にしかならないよ。全部可愛い」


「可愛げがないところが可愛いって・・・。そ、そんな甘やかさないでください。わ、わがままで傲慢な女になったらどうするんですか?」


「リオがわがままで傲慢になっても、絶対に可愛い。とにかくリオは何をしていても何もしていなくても可愛いんだ。外面のことじゃないよ。もちろん、フィオナの容姿は美しいけれど、リオは存在するだけでもう可愛いんだ」


(なんだろう・・?先生がおかしい・・・。セイレーンの番になると盲目的に相手を愛すると聞いたから、もしかしたらそれで・・・?)


「言っておくけど、セイレーンの番になったから盲信的に愛しているとかではないからね」


うお、心が読めるのか?先生はこぼれるような笑みを見せる。


「君は考えていることがすぐに顔に出るんだ。可愛いよ」


優しく頬にキスをされる。髪を撫でる大きな手に安心して目を閉じた。気持ちいい。


「リオは頭を撫でられるのが好きだよね」


指摘されると恥ずかしい。赤くなりながら頷いた。夕べ鬘をかなぐり捨てたので、今はヒヨコみたいな頭になっている。


「ああもう、可愛いね。可愛すぎておかしくなりそうだ。髪の毛を剃ったと聞いた時は心配したよ。でも、きっと丸坊主でもとても可愛かっただろうね。私もその可愛い姿を見たかった!今の短い髪も似合っていて可愛いけど」


人生でこんなに『可愛い』を連呼されたことがあったろうか・・?


「幸い、丸坊主でも皆さん親切にして下さって。頭もよく撫でてもらいました」

「え!?」


先生の目が鋭くなる。空気が一気に氷点下になった気がした。ちょっと拗ねたように顔を背ける。顔だけじゃなくて、それまでフィオナの方を向いていた体も反転した。


(あれ・・?先生、もしかして・・)


「妬いてます?」


思わず口から出てしまった。後頭部と背中しか見えないけど手を伸ばして頭を撫でる。


「・・・・そうだ」


くぐもった声がして先生がガバっと振り返った。


「すまない。私が嫉妬する資格なんてないのは分かっている。でも、君の愛らしい頭を他の男が撫でていたのかと思うと・・・」


先生はうつ伏せになって枕に顔を埋める。先生こそ可愛すぎだ。


「恥ずかしいが・・・私は思っていたよりずっと嫉妬深くて独占欲が強いらしい・・」

「私は先生に嫉妬されると嬉しいです。私を独占して欲しいですよ」


顔を上げた先生が真っ赤になった。尊い。


「あまり私を甘やかさないでくれ。私がどれだけ君に夢中か分かるかい?君だけが欲しいんだ。リオ以外は誰もいらない」


そう言って先生は私に深く口づけした。


柔らかくて熱い唇と舌の感触に蕩けそうになる。背中に先生の力強い腕を感じた瞬間、苦しいほど強く抱きしめられる。痺れるような感覚に酔いながらフィオナはそのまま流された。


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