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番外編 エレオノーラとベルトランド 1

私は幼い頃、お父さまの執務室に居るのが好きだった。


お父さまは仕事の邪魔になると何度も私を追い出そうとしたけど、私は強情に執務室に居座った。


お父さまは溜息をついて


「静かにしているんだぞ。エレオノーラ」


と言った。


私は頷き、部屋の片隅にある椅子に座ってお父さまを眺める。


お父さまが無表情で仕事をしている姿を見るのが好きだった。


驚く程端整な顔立ちは彫刻のようで、時々まばたきして長い睫毛が動くことがなければ、人間だということを忘れてしまいそうだ。


美しいお父さまの横顔を見つめているのが好きだった。


お父さまは私を好きではないのだと思う。


優しい言葉を掛けられたこともなければ、頭を撫でられたり、抱きしめられたりした記憶もない。笑顔を向けられた覚えもない。


でも、仕事と仕事の合間にうーんと伸びをした後、ふと私に視線を向ける時、私は確かにお父さまの視界に入っていると感じられる。


その瞬間が何よりも愛おしくて、私は我儘を言って何度もお父さまの執務室に居座った。


そんな静謐で幸せな時間が壊される時が来た。


聞きなれた甲高い声がドアの向こう側から近づいて来る。


ノックもなくドアが開くとお母さまが立っていた。


「エレオノーラ、またこんなところに居たのか。カール、エレオノーラを引き留めるのもいい加減にしろ。本当に無責任でわらわの気持ちを無視してばかり・・・」


というお母さまの愚痴が始まると、お父さまの表情が暗鬱となる。


お父さまの顔は嫌悪感で溢れているのに、お母さまはそれに全く気が付かない。


それを見て、私はお父さまに好かれてないけど、少なくとも嫌われてはいないと安堵してしまう私は悪い娘なのだろう。


お父さまは言葉少なに私を二度と執務室には入れないとお母さまに約束した。


お母さまは勝ち誇ったように私を見て、


「エレオノーラ、よいな。二度とここに入ることは許さぬ」


と告げた。


お母さまの言うことに逆らうと酷い目に遭うのは経験から分かっているので、私は黙って頷く。


もうお父さまの視界に私の姿が映されることはないかもしれないと思うと、胸の奥がツンと痛んだ。




私は常にお母さまの顔色を窺って生きてきた。


使用人にとってもお母さまの機嫌が何よりも重要だった。


私が食事を残すとお母さまはその食事を作った料理人を鞭打った。


私が食べないような食事を作った罰だと言う。


私は恐ろしさに震えた。それ以来食事は残さないように気をつけた。


しかし、慣れとは恐ろしい。


私は次第にお母さまが使用人を扱う様子が普通だと感じるようになっていった。


私は外の世界のことをほとんど知らなかった。


友達も出来なかった。たまに友達になれそうだと思っても、その人は必ず離れていった。


私は人から愛されることがない人間だと思うようになった。


お母さまは常に言った。


「お前を愛しているのはこの世でわらわだけ。お前は愚かで自分で何も判断することは出来ん。妾の言うことを聞いておれば良い」


私は次第にそれが真実だと思うようになった。


私は頭が悪い。私を愛してくれるのは世界でお母さまだけ。お母さまの言うことを聞いていれば間違いないと。




私が初めてお母さまの異母弟であるフォンテーヌ王国のシモン公爵家を訪れた時の衝撃は忘れられない。


シモン公爵はお父さまにも劣らぬ美男子だが、私を見た瞬間


「母親に似て性格が悪そうだ」


と言ったのだ。


私は怒ってシモン公爵を罵倒しすぐに家に帰った。


それでもまたシモン公爵家を訪れたのは、少なくともシモン公爵は私と言う人間を見た上で悪口を言ったと思ったからだ。


私の周囲には、腫物に触るように私を扱う人間しか残っていなかった。


誰も私自身を見ない。誰も私を気にかけない。誰も私に気が付かない。


私の代わりに人形を置いておいた方が皆喜ぶんじゃないかと思うことすらあった。


だからシモン公爵に罵倒されると少し安堵するのだった。


私は私として存在していると確認することが出来たから。


シモン公爵の奥方はセリーヌという美女だった。


私は彼女が憎かった。


シモン公爵が彼女を溺愛していることは明らかだったし、使用人も誰もかれも彼女の歓心を求めていた。


特にシモン公爵の友人のアレックスという男性が彼女を見つめる目は切なそうで、私の胸が疼いた。


私も同じ感情を知っていると思った。


愛されたくて堪らないのに得ることの出来ない渇望感。


私はこの人を理解することが出来ると思ったから、アレックスに告白した。


しかし、私が直面したのは冷たい拒絶だけだった。


私は怒り狂った。


アレックスが慕う女は既に人妻で、彼の気持ちに応えることはない。


何故私を見てくれないの?と私はアレックスに纏わりついた。


貴方を見てくれないあんな女より私の方がいいでしょ?


そう言ってもアレックスの顔には嫌悪の表情しか浮かばなかった。


お父さまがお母さまを見る表情とそっくりで、自分でも嫌がられているとは感じていたが、自分を止めることが出来なかった。


こんなに欲しいのに手に入らないのはどうして?


最後はお母さまにお願いした。


しかし、お母さまの命令もシモン公爵は簡単に拒否することが出来る。


お母さまが悔しそうに歯がみしている姿を見て、私はシモン公爵に畏敬の念すら抱いた。


どうしてもアレックスを手に入れられない私は、敵意の全てをセリーヌにぶつけた。


あんなに周りから愛されているのに、更に愛されるセリーヌが狡いと思った。


ちょっとくらい分けてくれたっていいじゃない?


なんであんただけ愛されるの?なんで私は愛されないの?


私は狂ったようにセリーヌを攻撃した。


シモン公爵は怒り狂って、私は公爵家を出入り禁止になった。


それでも私は諦めなかった。




何とかシモン公爵家に忍び込もうと公爵邸の周囲をうろついていると誰かから声を掛けられた。


「何しているの?若い女性一人で危ないよ」


振り返ると公爵の息子であるアンドレが立っていた。


「・・・ああ、エレオノーラ。また母上に嫌がらせに来たのかい?」


私を見ると人は何か悪いことを企んでいると思うんだ。


今までしてきたことを考えたら当然のことだけど、私はそんな風には考えられなかった。


みんなでセリーヌの味方ばかりして、と悔しさと嫉妬だけが浮かんでくる。


私が黙っているとアンドレが


「貴族の令嬢が独りで何をしているの?付き添いはいないの?」


と訊く。


うちの使用人の中で、私がどうなろうと気に掛ける人はいない。


お父さまも私に全く無関心だし、お母さまはいつも忙しそうで私が何をしているかは興味ないようだ。


私が屋敷を抜け出しても、誰も心配して探しに来ようともしないのだ。


アンドレは仕方ないなと溜息をついて、屋敷の中に入れてくれた。


シモン公爵は激怒したけど、放置して若い女性に何かがあったらどうするんですか?とアンドレに言われ、苦虫を噛み潰したような顔になった。


「何かあっても自業自得だ」と呟いた公爵はお父さまと連絡を取ってくれたらしい。


しばらくしてお父さまが迎えに来てくれた。


お父さまの私を見る目は冷たい。


「他人様に迷惑を掛けるな」


と私にシモン公爵に謝罪するよう言う。


何を今更親らしいことを言っているのか?と腹が立って仕方がなかった。


そっぽを向いて謝る気配すらない私に代わって、お父さまがシモン公爵に頭を下げていた。


帰る前にアンドレが私に一輪の薔薇をくれた。


「心がささくれだった時は花を見ると少し癒されるよね」


と言って。


私は彼の笑顔に一目惚れしてしまった。


その後アンドレに標的が変わり、私はアンドレに執拗に付き纏った。


アンドレにも拒絶された私は自暴自棄になった。


なりふり構わずアンドレを追いかけていると、周囲の視線は冷たくなるばかりだった。


しかし、今回はお母さまも協力してくれると言う。


ある日お母さまが、惚れ薬が入っているというお菓子をくれた。


これを食べればアンドレは私を愛するようになると言われて、私はその気になった。


まさかアンドレがそのせいで死にかけるなんて思ってもみなかった。


私は怖くて泣き喚いた。アンドレがようやく持ち直しても、私は心配で公爵邸に居座った。邪魔だとか迷惑だとか公爵に言われたけど、私はアンドレの傍に居たかったのだ。


お母さまは、あれは事故だったと言った。


事故だったのに、私はシモン公爵家から永久に出入り禁止だと言う厳しい通達を受けたのだった。フォンテーヌ王国にも入国禁止になるくらいの措置を取られた。


私はそんなに悪いことをしたのだろうか・・?確かにアンドレのことは申し訳なかったと思う。でも・・・


私はこれまでにないくらいの孤独感に苛まれた。


私にはもう誰もいない。お母さま以外は。


私は益々お母さまとの絆を求めるようになった。


だから、お母さまの願いを必死で叶えるように努力した。


あまり上手くはいかなかったけど・・・。私はいつも叱責されてばかりだった。




そんなある日、私はお母さまに呼ばれた。


確かポレモスとか言う名前の胡散臭い魔術師もそこに居た。


「エレオノーラ、お前は常に妾を失望させるが良いところもある。その体と永遠の若さじゃ。妾のためにその体を捧げよ」


と言われた時、意味が分からなかった。呆然としている私に


「頭が悪いお前には分かるまいが・・。喜べ。妾はお前の体で永遠に生き続けるのじゃ。お前はこの世に何の未練もないであろう?」


と言ったお母さま。


それが私の覚えている最後のお母さまの姿だった。




私が次に目が覚めた時、目に入って来たのは心配そうなシュヴァルツ大公妃のアンゲラ様の顔だった。


アンゲラ様は何があったのか事情を全て話してくれた。


お母さまが私を殺して、私の体を乗っ取ろうとしていたことも。


結局お母さまは私を愛していなかった。お母さまが愛していたのは自分自身だけだったんだ、ということにようやく気が付いた。


私はお母さまを信じて、お母さまの言うことは全て正しいと思って生きてきた。


それが間違っていたことを認識できた。


それまでも薄々気が付いてはいたのだ。ただ、認めたくなかっただけで。


私は胸が苦しくて息が詰まるような事実に向き合うのが怖かった。


だから、出来るだけ考えないようにした。


人形にでもなって、何も考えずに生きていけたらいいのに、と思った。


不思議と涙は全く出て来なかった。


ただ、ポッカリと胸にあった穴が広がって、その穴が大きすぎてどうやって埋めたらいいのか分からない。そんな感覚で日々過ごしていた。


私を助けてくれたというリオという公爵家の令嬢の話も聞いた。彼女もきっと生まれついて愛される側の人間なんだろう。世の中には愛される人間と愛されない人間が存在して、私は愛される側には一生縁のない人間なんだと思った。


アンゲラ様とジークフリート様は私に優しかった。


私は二人の優しさだけを支えに生きていられたんだと思う。




そんな時フォンテーヌ王国で戦勝祝賀会があると聞いた。


アンゲラ様とジークフリート様は一緒に行こうと言ってくれる。


私は躊躇った。でも、二人ともフォンテーヌに行ってしまったら、私はここで一人になってしまう。たった数日だったとしても、私はその恐怖に耐えられなかった。


二人はお父さまもフォンテーヌに居ると言う。でも、私はお父さまに会うのが怖かった。


でも、何故怖いのか説明することも難しかったので、多くを語らないようにした。


フォンテーヌに行くと、お父さまには新しい奥さんと子供がいた。


ルイーズと言う女性の話はお母さまから聞いたことがあった。死んだと聞いていたけど。何があったのかは訊ねなかった。


私にとってはどうでもいい話だ。


衝撃を受けたのは、お父さまの笑顔だ。


ルイーズとアベルを見るお父さまの目は優しくて愛情に溢れていた。こんな表情が出来る人だったんだ。


単にお母さまと私が嫌われていただけだったんだな、と腑に落ちた。


お父さまもルイーズも私にどんな言葉を掛けていいのか分からないようだった。


でも、アベルが私の手を取って「僕のお姉さん・・・だよね?」と話しかけて来た時、私に一瞬感情が戻って来た。


私は感情が戻って来た瞬間に胸が苦しくて座り込んでしまった。


息が出来なくなって、そのまま失神してしまったらしい。


目が覚めるとルイーズとアベルが心配そうに私を覗き込んでいた。


ルイーズが「大丈夫?」と声を掛ける。


私は黙って頷いた。


アベルが突然


「過呼吸って言うんだよ」


と話し出す。


私が「・・・?」という顔をすると、アベルは得意気に私は過呼吸で失神したんだと解説を始めた。


過呼吸の説明が専門的で感心する。頭のいい子なんだな。羨ましいな。


「ものすごく辛い目に遭ったり、ストレスを感じると過呼吸になるんだって。だから、お姉さんもきっと辛い目に遭ったんだね」


と言われた時に私はようやく自分が辛かったのかもしれないと実感した。


「・・・そうか。私は辛かったのかな?」


と言うとルイーズが私の頭を撫でて


「そうね・・・」


と頷く。


私が泣いていないのに、ルイーズは泣いていた。


「私は頭が悪いから自分では分からないの。あなたは頭が良いから羨ましいわ。きっと幸せになれるわ」


と微笑みながらアベルの頭を撫でる。


何故か分からないけどルイーズの目から更に大粒の涙が溢れた。


「どうして泣くの?」


と訊いたら


「あなたが泣かないから代わりに泣いてるのよ」


と言われて、私は苦笑してしまった。


「余計なお世話よって言っていい?」


と言ったら、ルイーズにガバッと抱きしめられた。


抱きしめられるのは生まれて初めての経験で目を白黒させて戸惑っていると、部屋の隅の壁に寄り掛かっているお父さまと目が合った。


お父さまは気まずそうに目を逸らす。


私も言葉が出なかった。


その後、ルイーズから祝賀会の後にお父さま達もシュヴァルツ大公国に帰ることや、帰国したら家族4人で暮らそうと思っていることを説明された。


家族4人の中に私も入っていることが驚きで、どう答えて良いのか分からずに黙っていた。


でも、私は彼らの中に家族としては入れないと強く感じていた。


お父さまとルイーズとアベルは3人で調和のとれた幸せな家族だ。


私が入ると不協和音になる。和を乱してしまう。


だから、私はシュヴァルツ大公国に帰ったら、アンゲラ様に頼んでどこかで住み込みの仕事を紹介してもらおうと考えていた。




翌日叙勲褒章式が行われた。


皆着飾って参加する華やかな場に私は気後れしていた。


するとゾロゾロと獣人達の集団が会場に入って来た。


先頭には騎士服のような礼装をした精悍な顔立ちの獣人が立つ。


獣人に馴染みのない貴族たちはヒソヒソと陰口を叩くが、意に介さず堂々と振舞っている。


・・・カッコいいなぁ、とボーッと眺めていたら、先頭の獣人が私を見て目をまん丸にした。


「エレオノーラか?!」と声を掛けられて私は心底驚いた。


「・・・私を知っているのですか?」


と訊くと


「ああ、お前は意識がなかったからな。お前がポレモスに捕まっている時にお前を見かけたんだ。自分の母親にあんな扱いをされて可哀想だと思っていた。無事に助かって良かった」


と屈託なく笑う。


「俺はベルトランドと言う」


と手を出されたので、私も恐る恐る手を差し出して握手をした。


びっくりするほど強くギュッと握られて、私はピョンと飛び上がった。


ベルトランドが声をあげて笑う。笑い声も笑い顔も素敵だな、と思った。




叙勲褒章式でベルトランド率いる獣人達はブーニン地方の国境を守るため命がけで戦ったと讃えられた。


勲章と褒章を受け取るベルトランドは堂々としていてとても凛々しかった。逞しい体躯の彼をうっとりと見つめる女性達も多かった。


私もその一人だった。


だから、その日のお祝いの舞踏会で私はベルトランドにダンスを申し込んだ。


ベルトランドは驚いた顔をしたもののダンスを断らなかったので、私はビックリした。


私が申し込むと皆断るものだと思っていたから。


ビックリしている私を見て、ベルトランドは噴き出した。


「自分で誘っておいてなんだ?」


とコツンと私の頭を叩く。


私は、ベルトランドが差し出す手に自分の手を乗せた。恭しく私の手を取ったベルトランドがリードを取り踊りだす。


彼のダンスのリードはとても上手だった。


こんなに気持ち良くダンス出来たのは生まれて初めてだった。


ダンスが終わって、お辞儀をして去って行こうとするベルトランドを私は何とか引き留めたかった。


背中を向けないで!もう一度私を見て!と言いたかった。


「・・あのっ。ベルトランド!」


と呼びかけると彼が振り返る。


思っていたより大きな声が出て、他の人たちが何事かと好奇の目を私達に向けている。


そんなの構っていられるか!私はこれまでどんだけ恥をかいて生きてきたんだ!


「わ、わ、私をあなたのお嫁さんにして下さい!」


と叫んだ。


それを聞いたベルトランドはきょとんとした顔をした。


これまで見てきたような嫌悪でも迷惑そうな顔でもない、ただ困惑している顔だった。


ベルトランドは周囲を見渡して言葉を考えているようだった。


「エレオノーラ。俺達は農民なんだ。だから農業が出来る嫁じゃないとやっていけない」


私はこれまで自分が告白した時、拒絶以外の言葉を聞いたことがなかった。


農業が出来れば考えてくれるってことでしょ?


今までみたいにどんなに努力しても無駄ってことじゃないんだよね?


私はどんなにわずかな希望でも縋りつきたかった。


「私は農業でも何でも勉強して頑張ります。どうか傍に置いて下さい!」


ベルトランドには意外な言葉だったんだろう。


ますます困ったような表情になったが拒絶はしなかった。


「お試し期間だな。一ヶ月間でどれだけ農業が出来るか様子を見よう。それでどうだ?」


ベルトランドの言葉に私は飛びついた。


「はい!構いません!頑張ります!」


両手の握り拳を振り回しながら叫ぶとベルトランドが爆笑した。


「お前は面白いな。明日の朝早く出発するから支度しておけ」


と言って私の頭を撫でてくれた。


好きな人に頭を撫でてもらうのも初めての経験で私は胸のドキドキが止まらなかった。




翌朝ルイーズ達に見送られて私はブーニン地方に旅立った。


ルイーズは心配そうに


「辛かったらいつでも帰っていらっしゃいね」


と言ってくれた。その言葉には心がこもっていたので、


「・・・ありがとう」


ととても小さい声で呟くと、お父さまがびっくりした顔で私を見た。


ルイーズは私をギュッと抱きしめて


「また会えるよね?」


と耳元で囁く。


私は黙って頷いた。


アベルにもお別れを言う。


お父さまにはやっぱり何と言っていいか分からないので、無視することにした。



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