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スタニスラフの想い

後日、リオとレオンは村長の家に招待された。セイレーンの村は無くなったが、村長は家を修理して相変わらず同じ場所に住んでいる。


リオは以前のように村長の羽根を使って転移した。イーヴに会うのは久しぶりだ。村長に尋ねたいことも山ほどある。少し緊張しながら、いつも通り仁王立ちの村長に挨拶をした。


「お久しぶりです。本日はお招きにあずかり誠にありがとうございます」

「堅苦しい挨拶はいい。後片付けは落ち着いたのか?」


村長は昔に比べると本当に優しくなったと思う。


「はい。コズイレフはまだ大変そうですが、フォンテーヌ王国は一応落ち着きました。セイレーンの中にはこの村に戻りたいと希望する者もおります。どうしますか?」


レオンが村長の質問に答える。


「戻りたい者は戻って構わない。家の修理などは我がする」

「承知いたしました。そのように伝えます。村の外で暮らしたいセイレーンについては・・」

「自由にさせてやってくれ。戻りたくなったら戻ればいい。戻りたくなければそれでも構わない」

「はい」


家の台所がある方からカチャカチャと食器が鳴る音がする。イーヴがお茶の支度をしているのかもしれない。その前にリオには片付けなければならない仕事があった。


「村長、あの・・・これを・・・」


リオは村長にオリハルコンのナイフを差し出した。


「これはお返しします。本当にありがとうございました」


と頭を下げる。


村長は首を傾げて「いいのか?」と問う。


「オリハルコンはもう十分に私のことを助けてくれました。心から感謝しています」

「ナオミもそう言っていたな」

「ナオミ様も?」

「ああ、アレクセイが譲位するからとオリハルコンのナイフを返しにきた時にな」


村長は少し躊躇しながらも「お前がずっと持っていていいのだぞ?」とリオに尋ねた。


「私と一緒だとスタニスラフは幸せではないかもしれません。私じゃなくてもっといい主君に巡り合った方が・・・」


村長は面白いことを聞いたというようにクスクス笑う。


「リオ、お前の力があれば、スタニスラフは甦ることができる」

「え!?どうやって?」

「スタニスラフの墓があるだろう。いくらでもDNAは手に入る。スタニスラフの意識も残っているのだから、お前が体を作れば彼は甦ることが出来る」

「え、そうなんですか!?」


(びっくりだ。そ、そうか・・・甦ることが出来るならその方がいい・・のかな?)


リオは考え込んだ。


「しかし、スタニスラフはそれを望まないだろう」

「え、どうしてですか?」

「本人に聞いてみるといい」


村長はそういって指を鳴らすとオリハルコンから白い影が現れた。


スタニスラフだ。


村長が声を掛ける。


「スタニスラフ。お前が生き返りたかったら、リオがその願いを叶えられる。どうする?」


スタニスラフは無表情で首を横に振る。


「何故だ?」


スタニスラフはリオを見て


「私はリオの傍で人々のために尽くすことが幸せだと感じます。ですから、どうかこのままで」


と村長にお辞儀をした。


(え!?そうなの?私は主君として認められたの?どちらかというと可哀想な私を仕方なく面倒みてるって感じだと思ってた!)


戸惑うリオにスタニスラフは微笑みかけた。


だが、すぐに真面目な顔つきになると


「私の孫が君に酷いことをした。本当に申し訳なかった」


と深く頭を下げる。


リオは驚いた。だって、スタニスラフはあのゲスとは関係ないよね。そう言うとスタニスラフは優しい笑みを浮かべた。


「初めてリオに会った時、私は感銘を受けた。君は逆境でも決して諦めなかった。魔法封じの腕輪を外すために、自分の手首をオリハルコンで切り落とした時から、私の忠誠は永遠にこの勇敢な少女と共にあると誓った。リオが嫌でなければ、ずっと傍らに置いて欲しい」


スタニスラフに跪かれて、リオは恐縮してしまった。レオンはリオの肩に手を置いて「君が勝ち取った信頼だ」と誇らしげだ。


「あ、あの、ありがとうございます。では、ずっと私を守って下さいますか?」


スタニスラフは微笑んだまま頷くと、再びオリハルコンの中に吸い込まれていった。


(そっか・・・じゃあ、私がずっとオリハルコンを持っていていいってこと・・なのかな?)


隣にいるレオンを見上げると温かい眼差しで頷いてくれた。ぽんぽんと頭も撫でてくれる。


「さて、」


と村長が話し出したところで、イーヴがお茶を運んできた。ティーワゴンを押すイーヴは天使のように可憐で、村長が「我も手伝おう」と砂糖を吐きそうな甘い表情になるのもむべなるかな、とリオは思った。


「リオ、いらっしゃい。お隣の方がリオの素敵な人ね?先日ちょっとお会いしたけど、ちゃんとご挨拶できなくてごめんなさい」

「いえ、こちらこそ。あの日は慌ただしくて私こそ挨拶できずに申し訳ありません。レオンハルト・シュミットです。ここには何度かお邪魔したことがあります」


レオンが優雅にお辞儀をしながらイーヴに挨拶をする。イーヴとレオンは戦争が勃発した日に遭遇していたのだけど、あの日はのんびり挨拶なんてできる状況ではなかった。


「ええ、存じているわ。リオのことをとても大切にしているのよね?」


リオはお茶の準備を手伝いながら頷いた。照れるね。へへ。


イーヴが花のような笑顔で「美男美女でお似合いね」と言うので「そちらこそ」と返す。だって、村長とイーヴが一緒に居るだけで素晴らしい絵画のモチーフになりそうだ。それにイーヴに向ける村長の眼差しは蕩けるように優しい。


ここにも溺愛系男子がいたか!


全員分のお茶を淹れたところで、村長が長い長い昔話を始めた。


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