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プロローグ

カシャン・・・カシャン・・・


動くたびに引きずる鎖の音がする。


首に付けられた首輪は鎖で部屋の隅にある鉄の杭につながれている。私は鎖につながれたままソファに座り、お茶を飲む。


私が自由に動けるのはこの鎖の長さだけ。


この部屋の中でだけ。


この世界では、それ以外の生活を私は知らない。


先ほど午前のお茶を入れてくれたメイドは出て行ったので部屋は静かだ。音楽でも聴きたいと思うが、そんな道具はない。


静かな朝だと思っていると、扉の向こうから人の気配と足音が聞こえた。


『先生が来る!』


私は胸を躍らせてノックの音に答える。そして静かに扉が開くのを待った。


大きな鞄を持った背の高い男性が部屋に入ってくる。白髪の混じった黒髪の隙間から優しそうな薄茶色の瞳が見えた。嬉しい。今日も来てくれた。


しっかりと扉を閉じると「フィオナ、元気だったかい?」と声を掛けてくれる。


先生の声は相変わらず穏やかで優しい。私は素早くソファから立ち上がり、優雅な淑女の礼をした。カシャンと鎖が鳴る。


「フィオナもすっかり淑女レディになったね。会うたびに大人びてくる。」


先生は哀しそうに言う。


「フィオナはいくつになった?」

「先週十一歳になりました。」


私が答えた時、扉の反対側で今度は荒々しい足音が響き、苛立ったような男の声が聞こえてきた。


『ああ、あいつが来た』


心が沈むのを抑えられない。


ノックも無しに扉が開くと、神経質そうな男がイライラと貧乏ゆすりしながら立っていた。背後には護衛の騎士たちの姿も見える。


どうしても顔がこわばる。


しかし、努力して笑顔を張りつけ、その男を見上げるようにした。


笑え。頑張れ、自分!

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