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アレクシアは毎日を過ごしていた。

全ての始まりだったリナリーに嫉妬していた醜い感情も、どうにもならなくて泣きくれた日も、意を決して決闘を申し込んだ時も、終わりを受け入れることができた瞬間も、周りにある素敵なものにしっかり気づけたことも、他人に何かを言われても飄々とできるようになった変化も、楽しいと言えるようになったことも、みんな流れるように過ぎていった。






…………








「朝…」


アレクシアが暖かい布団から、上半身を冷たい部屋の空気に晒し起き上がった。

ふと外を見れば色数の減った庭が見える。

いつもなら独特の澄んだ凍てつく空気に光が差す光景に、冬もいいものだと微笑むことができたかもしれないが、今日のアレクシアは違った。


胃が握り締められているかのように重く、

体が思うように動かせないほど呼吸が浅い。




アレクシアは夢を見た。

ノーラントが出てくる夢。

彼は夢の中でこちらに顔を向ける。

それからアレクシアの名前を呼ぶ。

冷たい声で。

そして言う。

せいせいした、と。

皆に知ってもらおう。政略結婚の苛だたしさを。


そう言った彼の肌の質感や髪の一本一本が感じられるほど繊細な夢。

そしてアレクシアが無理やり起きようとしたとき、逃げられないよと笑われた気がした。



ノーラントの夢など長らく見ていなかった。

最近は彼のことなど忘れて過ごすことの方が多かった。

ライドルトと町へ遊びに行った日も楽しかったし、試験だって思ったような結果が残せた。

友人と話す機会も多くなったし、毎日思い思いのことができて満足しているはずだった。

望んだように穏やかに、静かに過ごして、楽しんでいるはずだった。

アレクシアは毎日しっかり笑えているはずだ。




ノーラントとオズワルドの最高学年の卒業式でノーラントとリナリーが幸せそうに笑いあっていたのを見た時でさえ、彼が出てくるような夢を見たことはなかったのに。




いや。

今日こんな夢を見た理由には心当たりがある。

内側で緊張している自分がいる理由に説明はつく。




今日が、王位継承の儀式の日だからだ。





アレクシアもクロスライトの次期当主ということで招待されている式典だ。

ここでノーラントかオズワルド、どちらかが選ばれて王位継承権を賜る。

重要な式典だ。







過去のアレクシアがずっと思い描いてきた未来と同じで、王位継承権はきっと、ノーラントが勝ち取る。

彼はきっと、次期国王の証を女王から受け取って恭しく頭を下げる。

それから再度頭を上げた時、式典の参加者に盛大に祝福されるのだろう。

ノーラントは壇上で彼らに堂々と笑って見せるが、内心はほっとしていたりもするだろう。


そして彼はきっと、聡明で頼もしい王になる。これも過去のアレクシアが確信していたことだ。


そして、自分はその隣で一生この人を支えていくと改めて心に誓う。

優しく笑う隣の彼を見て、そう思うのだと過去のアレクシアは思っていた。


昔は、この日をずっと待っていたのだ。

昔は、この日の為に頑張っていた。






ノーラントを吹っ切った日からは、この日が来て王位継承権を勝ち取るノーラントを舞台からは程遠い席で見て、大勢のうちの一人のただの参加者として祝福する自分を思い描いた。

それに納得して、それを見る覚悟はしてきた。


今日が終われば、ノーラントの夢をひょんなことで見ることもなくなる。

しっかりノーラントとリナリーを認めて、2人を笑って祝福する。



だから今も、今日をずっと待っていたはずなのだ。

今も、今日の為に頑張ってきた。





自分はきっとうまく笑える。

何があっても、笑ってやる。

特に、彼の前では絶対に。













17部変更した点があります。ごめんなさい!

いつも誤字報告ありがとうございます!至らない点がまだまだ多くご迷惑おかけしていますが、ご指摘嬉しいです!

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