失敗したこととこれからのこと
ちょっと遅くなり申し訳ない
ミーゼに調査をお願いしたあと、アルフェーナはセルネに【竜帝】とは関わりはないが系列店に就職している非戦闘員に休暇を与えて、家にいてもらい、更に護衛を配置して不審なことがあったら随時連絡をよこすようにしている。
「ここまですることなのですか?」
執務室で上がってくる書類に眼を通していると、隣の机で作業しているセルネが質問してきた。
「なにが?」
「非戦闘員の待遇についてです。ここまですることなのですか?確かに我々とかかわってしまっているため、奴らに狙われる可能性はあります。ですが決戦は目前です。ならば……」
「だからこそやらないと、憂いなく戦えないのよ。あいつら……【高潔騎士団】は狡猾、とにかく情報を集めて、こちらの弱点を探してくる。ここまで来ているからこそ油断出来ないのよ。多分だけど、奴らの本部所属している者達がいままでやっていたんでしょう。支部連中には無理でしょう」
「そうですね。なるほどそうですか。ならば最後まで気を引き締めませんといけないようですね。最後の最後で油断して負けるなんてことにならないように」
「そう言うこと。だから徹底管理でやり遂げさせて、本部襲撃には最精鋭のみで叩く」
「了解いたしました」
セルネは顔を綻ばせながら了承した。
それから二日たった夜、ミーゼ達が潜入から戻ってきた。
「おかえり。早速で悪いけど報告お願い」
「了解しました。まずですが……」
ミーゼが机に王城潜入時に作成した見取り図を広げて説明を始めた。
「まず始めに、国王、王妃、側室、各王子、第二王女、第三王女は完全に無実ということがわかりました。ですが第一王女は関わっていることがわかりました。それから近衛騎士団の約三分の一、近衛魔法師団の四分の一、執事と侍女の半分がメンバーであることがわかりました。もしかしたらそれ以外にもいる可能性がありますが、それよりもこちらです。こことこことここに隠し部屋への隠し通路がありました」
ミーゼが指したのは国王の寝室と王妃の私室、宝物庫の場所だった。
「これは【高潔騎士団】が利用しているの?」
「はい、ですが【高潔騎士団】が作ったわけでなく、王城が作られたときからあるようでした。ここ以外にも廊下の隠しスイッチを押すことで入ることができます。そして隠し通路を進んでいくと、王城の地下にある隠し部屋に到着します」
そう言って隠し部屋の見取り図を広げる。
「出入り口は二ヶ所、廊下から行けるこちら側と、宝物庫から伸びるこちらだけです。通気孔らしきものは見つけることが出来ませんでした。隠し部屋の広さは大体ダンスホール位の大きさと高さです。家具らしい家具は少なく、あるのが机、数個の本棚だけでした」
その説明を聞きながらアルフェーナは考える。
(隠し部屋にこれだけしか家具がない?普通ならあり得ない。あり得ないならそうする必要があるはず。でもミーゼ達が調べたこの見取り図にはそれらしい場所がわからない。もしかしたらあるかもしれないけど、感覚的にない。ならなぜ……)
「……ミーゼ。この隠し部屋を【高潔騎士団】以外に知っている、もしくは気が付いている者達はいるかしら?」
「…………」
ミーゼが珍しく黙り込む。
「いるの?」
「……はい。この二日見張っていただけでも近衛騎士団長、副騎士団長、筆頭宮廷魔術師の三名が気が付いていると判断しました」
「……やはり実力者は気が付くようね。でも出入りはどれだけ意識しても見つかるはずよ?それで気が付いている者はいなかったの?」
「それなのですが、どうやら宮廷魔術師、近衛騎士団のそこを見回る者達が【高潔騎士団】メンバーになっているようで、通信の魔道具を使って出入りの時の見張りを頼んでいるようなので、わからなかったようです」
「そうか……ならこの件はあとにしましょう。これが本題、【高潔騎士団】王城メンバーの詳細を説明して」
アルフェーナが一番の本題を聞いてきた。
「はい、まず始めに先にわかっているのが支部にいた数名、それと第一王女、そいつらを張り込んだところとある部屋に多く出入りしていました」
「それは?」
「王城にある教会です」
アルフェーナとセルネが珍しく頭を抱えた。
「ここであいつらが関わってくるか」
「これは面倒なんてものではないですよ。今ここで【高潔騎士団】を潰したとしても第二第三の【高潔騎士団】が現れると言っているようなものですよ」
「それなのですが……」
苦々しく考えるアルフェーナとセルネにミーゼが話しかけた。
「どうやらこの件は教会本部は知らないようです。王城の教会単独、それも教会関係者全員じゃなく、司祭のみだけのようです」
「それは妙ですね。司祭のみに止め、極秘で進める計画、もとい騎士団運営は利益は確実、例え一人でいい思いをしたいと思っていたとしても、隠しとおすだけでも労力は必要になる……うーんわからないですね」
「これはややこしいわね」
アルフェーナは腕を組みながら天井を仰いだ。
「「姫?」」
「今回は無駄になってしまうわね……申し訳ないわ」
眼を瞑りながら静かに涙を流す。
「姫、一体どういうこと……」
「セルネ、ミーゼ」
「「はっ!」」
質問に被せるようにアルフェーナが二人の名前を呼ぶ。その声色にすぐさま姿勢をただす。
「潜入特化の中でも更に戦闘能力が高い者を厳選しなさい。ゼンドルとグラムには存分に暴れられて、すぐ倒されず、だけどこちらにたどり着かない人物を数人手配して頂戴。それと察知系、探知系の魔道具、及びそれを妨害する魔道具を可能な限り集めて」
「「了解しました」」
そう言うとセルネとミーゼが素早く行動を開始した。
「くそ……こんな無駄骨になるなんて…………この仮は必ず返す」
そんな呟きを聴覚強化で聞きながら部屋をあとにするセルネとミーゼ。
「姫のあの言葉、一体どういう意味ですかね?」
「わからないのあんた?」
そんなセルネの言葉にちょっと不機嫌に答えるミーゼ。
「えぇ、これがまったく」
「そんなことを姫に聞いてなんなんだって思ったけど、マジでわからないみたいね」
深くため息を着きながら言う。
「つまり姫は今回犠牲になった構成員の死が無駄になったことが嫌なのよ」
「ですが今回動員した者達はほとんどか生きていますよ?確かに死んだ者もいますが、彼らは新参者、そんな心配するほどの者ではなくては?」
「こんなに一緒にいてまだ姫の性格がわからないの?怒りを通り越して呆れすぎるんだけど」
「そう言わないでください。これでもマシになったほうなんですから。ずっとしていた事を変えることはかなり難しいんですから。それにこの性格は姫が治すなって言っているんですから」
「そうなんだけど、まぁいいわ。話戻すけど、姫はどんなやつでも【竜帝】になった者は誰でも家族、敵、元敵誰でも家族、だからこそ家族の死が堪えるし、その死に何かしらの意味を持たせたいと思っているの。どんなに突発的な死でも何とかしたいと思っているの。でも今回のは姫が自ら指揮をして死なせた者達。それがこんな結果になってしまったことにやるせないのよ」
「そうなのてすか。やはり私にはわかりづらいですけど……わかりますかね」
そんな会話をしているうちに部下達を待たせている部屋に到着した。扉を開けると整列する部下達がいた。
「揃っているようだな。これから姫の指示を伝える…………」
アルフェーナの指示を伝えたあと、
「そして最後になるが、今回の作戦で散っていった者達に対して姫が涙を流している。我々の調査が、諜報が、何もかもが劣っていた結果だ。だからこそ、これでは誰も死なず、必ず帰還することを最重要命令とする。わかったか!」
『はい!』
全員が叫ぶと転移で一斉に消えた。
「私も別口で向かう。あんたも頑張りなさい」
そう言うとミーゼは転移で消えた。
「そちらも。さて、まだまだ人の心がわからない私だが、精一杯やらせてもらいますよ」
そう言いながらセルネは廊下を歩いていく。
小説ざっと紹介コーナーの時間です。
『無職転生』第九巻の前編についてです。
ルーデウスがクリフに絡まれます。
クリフがエリナリーゼと出会いました。
今回はざっとすぎるざっとな感じでの紹介でした
次回もよろしくお願いいたします
ではでは~




