交流試合後編
みっちゃ遅くなって申し訳ない!
仕事が変わりバタついた。
「次の選手前へ!」
審判の声にザカルが頷いて歩き出す。アルフェーナ達が思うに勝率は五分五分だが、ザカルに僅かに傾いていると思った。
クット先の対戦で体力を消耗している。万全なら勝ち目はないがいまならいけると思っていた。
「でもなんかありそうで嫌だわ」
アルフェーナはそう呟いたときに戦いが始まった。
「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ザカルが雄叫びと共に上段から振り下ろした。
「うっ……」
ゴォオッ!と轟音と共に振り下ろされた木刀をクットは避けれず、木刀を水平に構えて受け止めた。
バキッと音でクットの木刀にヒビが入り、受けた場所からかなり押し込まれた。
「この魔法使い風情が!ふざけんなっ!」
クットは怒り、力任せに袈裟懸けを仕掛けてきた。それをザカルは真っ向うから受けるため振り上げた。その衝撃でクットの木刀が折れた。
「ちっ!」
「はぁああっ!」
折れたことに狼狽するクットを尻目にザカルが返す形で振り下ろした。寸止めだが。
「しょ……勝者……」
審判が動揺して何度も魔剣学園側を見る。どうすればいいかわからないようだが、そこに助け船を出したのは以外にもクットだった。
「てめぇ俺に恥をかかせたいのか? あぁ?」
そうクットが言うと審判は慌てていった。
「強者、魔術学園魔法剣術研究会会長、ザカル・フレドム!」
初めての勝利にかなり声を上げるアルフェーナ達以外。アルフェーナ達は逆に意外さと苦悩に顔を歪めていた。
意外だったのはクットが言い訳せず自身の負けを認めたことだ。今まで見ていた性格状、審判に不正で勝つように仕向けるものだと思ったからだ。
「……いいのかそれで」
「あぁ?」
どうやらザカルもそう思ったらしく、つい聞いてしまっていた。聞いてからザカルもしまったと思ったらしく口を押さえていた。
「ちっ、俺だって剣士だ。自分の負けくらいちゃんと認める。勝つためにはなんでもするが、負けたらどんなことしても負けだ。意味がねぇ。だから変なプライドも持たねぇし、使ったりしねぇよ」
アルフェーナの中でクットの好感が少し上がった。勝つためになんでもすると言うことが自分と似ていると感じたからだ。負けたときの潔さもいいと感じた。横を見るとクルサ達もそう思い少しは見直しておるようだ。
クットがはけると次の選手が来た。今度は茶髪のようだ。
「両者構え、始め!」
「はっ!」
開始早々ザカルが踏み込み接近した。だけどこの不意打ちに茶髪も即座に対応、同等の速さで接近して鍔迫り合いすることになった。
「いきなりですね。ちょっとは不粋だと思わないんですか?」
「ぐっ!」
渾身の不意打ちだったのだが、合わせられたことにザカルは怯んだ。たったそれだけのことが決定打になってしまった。
怯んだ時すこし上体を起こしてしまい木刀への力がすこしばかり緩んでしまった。それを見逃す茶髪でなく、ザカルの真横に踏み込むと木刀を振り上げ、ザカルの後頭部を打った。
「がっ……」
不意の衝撃に意識が飛びザカルが盛大に倒れ込む。
「聞こえないかもしないが俺の名前はフルルだ。聞こえないなら教えてもらえ」
そう言うと茶髪、フルルは元の位置に戻った。
ザカルが起き上がることが出来ないのでカズカと黒髪が助け起こしに向かった。
「さてとやっとアタシの出番か」
ザカルが戻って来るとクルサが伸びをしながら中央に向かう。
「油断して殺さないでよ」
アルフェーナがそんな後ろ姿に物騒なことを言う。
「わかってるわかってる」
それに対してクルサも軽い感じで振り向かずに片手をヒラヒラさせて答える。
「両者構え!」
審判の声にフルルは正眼の構えをするが、クルサはあくびをしてながら木刀を下げたままだった。
「貴女、構えてください」
「うん?あぁアタシの構えこれだからいいよ?そもそも構えなんて入らないし」
審判が注意をするが、クルサは我関せずと言った感じて聞かず、さらりと剣士に対しての侮辱的なことを(クルサはそんな気で言ったのでなく)言った。
それにフルルは青筋を浮かべ、審判も怒りが籠った眼を向けた。よく見ると控えている魔剣学園側も全員が似たような感じになっていた。
「始め!」
フルルは合図と同時に全力の初動でクルサが立っている真横に来ると水平に振るった。
……のだがそこにいたクルサに当たらず、なぜか現在中腰で顔が下を向いている格好になっているフルルの眼に、さらに低い姿勢で腰だめに木刀を構えているクルサの姿が映った。
「…………は?……ぶべぇっ!」
間抜けな声をあげた時に後頭部に強い衝撃を受けてフルルは意識を刈り取られた。
「はい終わりっと」
こともなさげに言うクルサ。当然クルサにとっても何か特別なかとが起きたわけではないのだから。そう言って元の位置に戻って腕をグルングルンと回していた。
そしてフルルは連れられていき、今度は赤髪の1人が来た。
「どうにも手加減してみたけど大丈夫かな?」
そう言っておると赤髪が突きをしてきた。
「はっ!」
「奇襲がおそ~い」
いきなりの奇襲でもクルサは余裕で逸らした。審判に誤審させないように大きく逸らした。
「そいっ」
突きを逸らされたためツンのめってきた赤髪の頭に木刀を振り下ろした。
気持ちのいい音と共に赤髪は瞬殺(殺されてないが)された。一瞬のこと過ぎて何が起きたのかわからずに意識を刈り取られた赤髪。くしくもクルサはその場を動かずに相手を倒してしまった。
フルルを連れていった者達がフルルを横たえるとすぐにこちらに来て赤髪を連れていった。
そしてもう一人の赤髪がやって来てきた。そして、深々と頭を下げてきた。
「?なんで?」
「さっきはあいつが、ケートのやつがあのような、剣士にあるまじきことをして申し訳ない」
「剣士にあるまじきこと……ね?」
そう言って後ろのアルフェーナを見るクルサ。その視線に苦笑いをしながら肩を竦めるアルフェーナ。それから眼で合図を送って、それをクルサも了承した。
「ねぇ」
「は、はい!なんじぇしょう!」
いきなり声をかけられた審判がしどろもどろになりなる。
「私、負けでいいわよ」
「「は?」」
審判と赤髪がいきなりのことに間抜けな声を上げる。
「貴様っ!どういうこと……」
「んじゃそうゆうことで~」
赤髪の抗議を聞かずにクルサは背を向けて歩き出した。途中でアルフェーナとすれ違うとき、
「あとよろしく~」
「そっちもお疲れ、終わったら相手して上げる」
「よっしゃ!」
と言った会話をしながらハイタッチした。
そしてアルフェーナは赤髪と向き合うと、赤髪は怒りの表情で睨んできた。
「どうゆうことだ。なぜ負けてもいないのにあやつは下がったのだっ!」
「そんなの私がお願いしたからよ?」
「いつ!?」
「信頼していればアイコンタクト出来のよ?貴方達には一生無理だけど」
邪険にするように扱うと赤髪が顔を真っ赤にして構えた。
「不意打ちしないんだ」
「我はそのようなことはせん。剣士だからな」
「……それ」
「?何が……」
いきなり不機嫌な声をアルフェーナが上げたことに赤髪が首を傾げる。
「私がクルサに変わってもらった理由。その考えが耳障りだからただしに来たの」
「何か間違いがあるのか?」
いきなり考え方が気にくわないと言われて困惑する赤髪。
「今から教えてあげる。審判、号令」
「はっ、はひぃっ!」
向けられた声に萎縮しながら審判が開始の合図をした。
「我は三学年のフーバー!我が剣受けてみよ!」
上段で構えながらアルフェーナに正面からいくフーバー。間合いにはいると木刀を振り下ろしてきた。
「はあっ!」
「……」
振り下ろされた木刀はアルフェーナは無言で半身になり避ける。フーバーはそれを確認しながらすぐに手首を捻って突き上げをした。
「はぁ……」
アルフェーナは突き上げてくる木刀は溜め息交じりに側面から弾くと、体勢を崩しているフーバーに振り下ろした。
「がはっ!」
無理な体勢からの突きだったので木刀で防ぐことも出来ず、避けることも出来なかったので打たれた。
「…………」
「っ!…………」
審判に視線を向けるもなぜか勝利宣言をしてくれず、アルフェーナに見られてガタガタ震えるだけだった。
「はぁー。仕方ない」
アルフェーナは軽く目を回しているフーバーの襟首に木刀を引っ掻けると、がたいのいいフーバーを片手で持ち上げて上に投げた。
「ふんっ!」
「ぐはぁあああああっ!」
投げられて落ちてくるフーバーの背中に木刀を叩き込み、魔剣学園側に打ち込んだ。
いきなりフーバーが向かってきて、しかも整列しているところに打たれたので慌てたもの達で突っ掛かり、フーバーが突っ込み何人も倒れた。
「…………」
「……ひっ…………勝者、魔術学園」
弱々しい声で勝利宣言する審判。本来は保険で選ばれただけなのにこんなことをさせられて心身はもう限界そのものだった。
「さぁ最後を始めましょう」
アルフェーナは魔剣学園側のラスト、モルツに挑発するように手招きした。
「ちっ、ふざけやがって!」
モルツは怒りを現にして他とは色が違う木刀を持ってやって来た。
(まぁいいか。何か仕組んでいるんでしょうし、それも何か分かるし)
アルフェーナは嘆息しながらモルツを眺めていた。
「おい、さっさと始めろ」
「は、はい!」
審判はモルツのドスのきいた声で催促され、怯えながら合図をした。
「そらぁああああっ!」
合図をするより少しフライング気味に木刀を振り下ろしてくるモルツ。アルフェーナは先端付近で受けた。
ガキッと音と打ち合った感触でモルツが木刀に何を仕組んでいるのかすぐに分かった。
だけど確かめる前に反対方向からの攻撃も同じところで受けた。今度は受け止めや、受け流す音でなく何か壊れ折れる音が響いた。見るとアルフェーナの木刀の三分の一の部分けら上が折れていた。
でもアルフェーナは動じた様子もなく、すぐさま折れた先端で肩を水平に打った。
「ぐっ!」
モルツは距離を取ると打たれた肩を押さえた。距離を開けたが、相手が悪かった。モルツ達レベルならば距離を取って体勢を立て直すのはいい判断だが、アルフェーナレベルとならばそのまま接近戦で攻め立てていれはこの試合なれば勝機があった。
「あ~あ」
アルフェーナもそれがわかっていたので溜め息をついた。
「ぐぅ………………ふぅー………なめんなっ!」
モルツは距離を取り、息を整え、上段に構えてからアルフェーナに向かった。
「攻撃の選択最悪、それに基礎がちゃんとやらさっていない」
アルフェーナは眼に見える指摘をどんどんしていった。モルツはそのたびに恥ずかしいのか小さくなっていく。
「うぐっ……そ、それがどうした!それにお前みたいな素人に何がわかるんだっ!」
「さっき、『それがどうした!』って言っていたじゃん。自分で認めているじゃん」
「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさぁあああああああああああああああああああああああああああいっ!!」
指摘されたことが的をいてすぎて逆ギレした。
「器ちっちゃ」
「あぁああああああああああああああああああああ!」
激昂したモルツが木刀をメチャクチャに振り回しながら迫ってきた。
「はぁ、もういいかな」
アルフェーナは心底がっかりしながら迫る木刀をユラリとかわして審判の横に移動した。
「ちょっといいかしら」
「ひぃっ!」
もう怖がられ出してしまったアルフェーナ。
「どうせあなたはどんなに有効打をしても私の勝ちにはしないでしょ?」
「…………」
審判は答えられずに俯き、その耳元にアルフェーナは囁いた。
「だからあなたが止めないと死ぬから……よろしくね?」
「え?」
困惑する審判を放置して、こちらを振り向いたばかりのモルツに接近すると、下段からモルツの顎を打ち抜いてかち上げた。
「ぐぶっ」
モルツが落下する手前に頬を木刀で水平に殴り、脇腹を打ち上げたりと、四方八方、縦横無尽に殴りつけていった。
「が……ぶっ…げ……ぶ……げばっ……がぼ……」
「ふんふふ~ん♪ふふふふふん♪ふふふんふふん♪ふふんふふふふふん♪」
どんどんアザが出来ていくモルツをアルフェーナは鼻歌交じりり殴る。そしてアルフェーナはモルツを絶対に床につけないようにしている。振るう木刀はその分の威力があるのでだんだんとモルツは声が出なくなってきていた。
「あ……ああっ……」
審判は何度も魔剣学園側を見てどうするか確認するが、誰もなにも言えずに目の前の光景に絶句していた。それは魔術学園側(精霊会を除く)も同じだ。
「ふ~んふ~んふんふんふ~ん♪ふ~んふ~んふんふんふ~~~ん♪ふんふふふふんふふふ~ん♪」
「や、止めてくれ!もう止めてくれ!!」
審判が涙を流しながら懇願してきた。
「俺達が悪かったから、どうかもう……」
「別に止めさせたかったらすぐに出来るじゃない?」
アルフェーナは手を動かしつつ、一体この審判は何を言っているんだ?と首をかしげながら言った。
「は?え?」
「審判!宣言。勝利宣言をするんだ!」
いまだ混乱でアルフェーナが何を言ったのかわかっていない審判に、魔剣学園側からその答えが叫ばれた。
「え、あっ……しょ、勝者、モル……」
バギャバキッベギッゴシャ…………。
審判の間違いにアルフェーナは叩く音と視線で答えた。
「ひっ!……は、しょしょしょ勝者、魔術学園!」
間違いをただして審判が宣言したことで、アルフェーナは手を止めた。モルツは落下、しばらくぶりの床に落ちるが動く気配がない。
この感じで 今回の交流試合は無言のまま終わった。
さぁ今回も小説ざっと紹介コーナーの時間です。
今回は『無職転生』第四巻の序盤について書きます。
港町にやって来たルーデウス達。そこで各々が自由行動をすることになった。そこでルーデウスは生き倒れる柴髪の少女を見つけた。そいつは世界に名を轟かせる魔界大帝キシリカだった。助けたルーデウスにキシリカはある力を渡す。
続きは小説で。
次回は中盤を紹介します。
ではでは~。




