コントロール訓練
ただの訓練風景です
「さて活動内容も決まったことだし、始めに取り掛かることどうするか、みんなはどうしたいかしら?」
「アタシは精霊との交流に一票!」
アルフェーナの問いにクルサは食いぎみに発言してきた。
「私はまず魔法の熟練を」
「私もエルザと同じです。何をするにもまず魔法を上達してからです」
エルザとブレンナが同じ意見だったので多数決で魔法の熟練、上達になった。
「だったらこのまま教室でやりますか、その方が緊張感あるだろうし」
「「?」」
アルフェーナの言った意味がわからず首を傾げる二人。ホントは空き教室探すはずだったが、それでは緊張感がでないと思ったアルフェーナが急遽このまま教室に留まり研究会を始めることにした。
「まず二人にやってもらうことは最大威力の魔法を使うことよ」
「ここでですか?」
「そうよエルザ。最大威力の魔法を放ちつつそれを制御する。熟練と上達が同時に出来る、いいことじゃない」
「うわードS」
「どっちの?」
「どちらもよ」
独特の慣れが感じられる会話をするアルフェーナとクルサに対して、エルザとブレンナは教室で魔法を放つことに困惑していた。
「さぁ時間は有限、ちゃっちゃとやっていきましょう。まずはエルザから!」
「えっ!えぇ!」
いきなりの指名に驚くエルザ。
「よ、よろしいのですか?もし教室が壊れでもしたら」
「そう思うからダメなの!まずはやってみる、それから決めていきなさい!フォローはするから」
「は、はい……」
アルフェーナの気迫に押されおずおずと教卓の前に立ったエルザが詠唱を始めた。
「か…………光の砲撃よ、すべての飲み込むその極光によって敵を倒せ《アルファロカノン》!」
エルザは両手を前に上げそこに魔力を集中させると、光の本流を放った。前にいるアルフェーナ達に向けて。
「あっ……」
余程集中していたのか脇にいた三人がいつの間にか前にいたことに気がつかず放ってしまい、もともと天井に向けて曲げる予定だったのですぐさま曲げようとするが、曲がらずまっすぐに三人に向かっていく。
「に、逃げてください!」
必死に叫ぶが時すでに遅し、本流は三人を飲み込……まなかった。飲み込む直前にクルサがおもむろに手をかざし、本流が手に当たると事もなさげに握りつぶした。だが、握りつぶしたのは先端だけだったはずなのだが、エルザの手元に出ていた魔方陣まで破壊されてしまった。
「エルザなかなかの威力ね!ちょっと手のひら焦げちゃった」
少し煙が立つ手を振りながら笑うクルサにエルザとブレンナは何度目かの驚愕を起こしていたが、二人は別々のことでだが。
「うそ、私の全力が……」
「今のはいったいどうやって」
エルザは全力の魔法を破られ、ブレンナはどうやってそれをしたかにだが。
「解説は後程、次ブレンナね。今度は最初から私達に向けて放ちなさい」
「えぇわかったわ。私の全力を見せます」
そう言うとエルザと入れ替わるようにブレンナが教卓の前に立った。
「すぅー……ふぅー……すぅー……ふぅー……全てを切り裂く刃よ」
「っ!クルサ変わってあれは不味い!」
ブレンナの詠唱を聞いた瞬間、アルフェーナはまた受け止めるはずだったクルサを押し退けて変わった。
「その不壊の刃にて敵を切り裂け 《エッジザッハーク》!」
ブレンナの胸付近の空間が波打つように歪みそこから不可視の刃が三人に放たれた。
「 《まねっこ》!」
アルフェーナは手をかざし迫ってくる不可視の刃に向かって魔法を展開、するとブレンナと同じ事象が起きてブレンナの魔法を迎撃した。
「う……そ……なぜ私の家系の固有魔法を!??!」
今アルフェーナが放った魔法はブレンナが使った魔法と同じだった。それに加えその魔法が固有魔法なのが問題だ。
「まさか……」
「訂正するけど私はブレンナとは姉妹でも従姉妹でもないから」
「でもさっき私の家系の固有魔法を!」
「私が使ったのは固有魔法でなくオリジナル、違うわ」
「オリ……ジナ………ル?」
――オリジナル無属性魔法 《まねっこ》
対象が使う魔法が余分魔力として集め収束、そこに自分の魔力を動力として乗せると魔法が発動する。
「原理とかは後程ね?まずは全力魔法を使ってみてどうだった?」
「私、調子に乗っていたと言いますか……」
「そうね、私も天狗になっていた、と思います」
「それはよかった」
アルフェーナは二人の反省に淡々と答え次の言葉を待った。
「これから頑張るのでよろしくどうぞお願いします」
「よろしくお願いします」
「えぇよろしくね……っておいクルサ、何だらけてるの?」
「だってーアタシも魔法使いたいぃ~!」
机にアゴを乗せて頬を膨らませながら呟いた。
「何バカなこと言っているのよ。貴女が魔法使って私が相殺させにいってもこの教室が消し飛んじゃうわよ?」
「なら校庭で!」
「クレーター作りたいの?」
「そうだったぁあー!」
己の力量を思い出したクルサ。
「まぁアホは置いといて……二人はコントロールがいまいちね?」
「でもコントロールといってもどうすればいいのですか?」
「そうね、私の毎日しているコントロールの練習はこんな感じよ」
アルフェーナが水魔法で水滴を三十個程腕を回し出した。
「「なっ!?」」
そのありえない光景に二人は驚く。
「ホントはもっと大量に出すんだけど、今日は分かりやすいようにこれくらいでね」
そんなふうに軽い口調で話す間も、腕から肩に向かい、頭、胸、腰、脚と全身を一定間隔と一定速度で回転していた。脚まで全部が回ると、指をパチンッと鳴らして水滴を消した。
「まぁこんな感じかな?はいそれじゃ二人もやる。ついでにクルサも参加」
「「は、はい!」」
「えぇー!」
二人はいい返事をするも、一人が不満たらたらにして寝そべる。
そうしてアルフェーナがしたコントロール訓練が開始したのだが、エルザとブレンナは一個だけでもかなり苦戦していた。腕の周りを回そうとしているのだが、腕との距離を間違えて触れたり、腕に隠れた一瞬に操作を謝って落としたり袖についたりとしていた。
クルサは十個程作りアルフェーナと同じ速度で回していた。
「クルサ様もすごいですね」
「まぁね、五年前からアルフェーナにしごかれているから」
「そうなのよねぇー」
びくっとアルフェーナが会話に参加した時、クルサが反応した。
「五年間訓練を手伝っているのにこれとあとちょっとしか出せないのよ?」
なぜそれが出来ないのか本当にわからないようにアルフェーナは首を傾げた。
「努力の天才の言うことは違うわね」
クルサがなじるように呟く。
「努力の天才ですか?ではアルフェーナ様は何度もこの訓練をなさってるという」
「そうなんだけどそうじゃないのよ」
クルサがエルザを遮りながら唸った。
「それならまだいい、けどアルの努力の天才は、文字通り努力と天才が合わさっているわけよ」
「つまり」
「アルは天才なのに努力を惜しまない。しかもただの努力じゃなくて常軌を逸した努力をよ」
「常軌を」
「逸した……ですか?」
クルサのあんまりにも盛った話に少々疑惑の眼を二人が向けるなか、次のクルサの言葉にそれはなくなる。
「だって……全魔力のおよそ九割分でこの水滴を作って、残りの一割で維持しながら動かすのよ?それも魔力が枯渇するまでなんてもんじゃなくて、まさしく無、まで無くすわけよ?それを毎日やるわけ、まじイカれてるわよ」
二人は言葉も出なかった。そんな二人を横切る影、グワシッとクルサの頭を鷲掴みする。
「随分なこと言ってくれるじゃないクルサ、そんなにしごいてほしいなら最初から言いなさいよ」
「ちょっとアル、待って待って冗談冗談!最後の冗談だから!聞いて聞いて、二人にも知ってほしくて!ね?隠し事はダメでしょ?だからほら!」
いろいろと捲し立てながらクルサは弁明しようとするが、アルフェーナは聞く耳を持たず、片手で引きずりながら教室を出ていった。
残されたエルザとブレンナは一度顔を見合わせたあと、コントロール訓練に集中し始めた。
少しして廊下から聞き覚えのある女子生徒の悲鳴が響いてきたが一切無視して訓練をし続けた。
次回、他研究会に殴り込み




