魔術学園
よろしく願います
「貴様ら魔法使いなんぞに我の騎士が負けるはずがないのだ!」
「ですからそれと私にいったいなんの関係があるというのです!」
往来でジュガ達とエルザが揉めていた。どうやらジュガがまた何かしらの因縁を付けて絡んだようだ。
「どうするアル?助ける?」
「それをやるといろいろめんどそうなのよね……けれど」
アルフェーナはエルザを観察してある動作が気になった。
「……やっぱりあの子…………クルサ、助けるわよ。なかなか面白くなりそうかも」
「おおっ!それは嬉しいね、軽くやりますか」
アルフェーナは黒革の手袋を嵌め、クルサは赤の指空きグローブを嵌めいさかいに乱入した。
「ちょっといいかしら」
「なんだ貴様、俺を誰だと……さっきの……ちょうどいい、全員まとめて潰してやる!誰も俺を見下させねぇ!」
「やって見てください」
アルフェーナが挑発すると、額に血管を浮かべながらジュガは身体強化した拳で殴りかかってきた。それを手の甲で横に弾くと続けざまにカウンターで顔面をぶん殴った。
おかげで綺麗な放物線を描きながら飛んだジュガは石畳に落ちた。顔面は鼻が陥没して前歯も何個が折れている。そして一発KOである。
「ジュガ様!貴様とうとう手を出してな。いったい誰を殴ったと思っている!」
「誰なの?」
「知らないわよ。ゲームにも出て来ていないは………あぁっ!」
何か思い出したクルサ。どうやらジュガ、重要な人物らしい。
「さっきサンタリナ王国って言ったわよね、しかも第三王子って」
「確かそうよ」
「あちゃー、いろいろ面倒になりそうって感じ」
「ふーん」
クルサの様子から、かなりの面倒ごとのような感じなのだが、それほど重要なことに感じられない。むしろ今からでも挽回可能なことに思えるような感じだ。
「それなら後で聞くわ。今はさっさと伸していくわよ」
「りょーかい」
そこからはただの弱いものいじめだった。
アルフェーナは殴りかかるとしゃがまれ鳩尾に連打、ローキックはジャンプで避けゼロ距離から上段蹴り。
クルサはアルフェーナと真逆、攻撃は避けるのでなく全部受け止め殴る、カウンターも貰うのだが効かず、逆にカウンターで沈められ、最後の一人には顎を一撃粉砕してしまったアッパーを見舞って終わった。
「終了っと、この後は」
「逃げるに決まっているでしょ?ほら貴女も行くわよ」
「えっ?あのちょっと!」
アルフェーナはエルザの手を無理やり取るとなにも聞かずに走り出した。それを追いかけてクルサ、メイドと付いてきた。
しばらく走り、大分離れたところで立ち止まった。立ち止まったのだが、
「ふにゅうぅうううん~」
「あら?なぜこんなことに」
「あははっ!そりゃアルのペースで走って行くなんて無理でしよ。ほらメイドさんも来てないわよ」
振り向くとクルサは来ているがメイドはいなかったが、遠くから迫ってきているのはわかった。なのでこの場で待つことにした。
「来るまで暇だし、この子に聞きたいことがあったのよ……おーい起きて」
エルザの頬をペチペチ叩いていると起きてくれた。
「…………はっ、私はいったい、なぜここに……貴女方は?」
「起きた……えっと私はグラビトン公爵の長女、アルフェーナよ。こっちが」
「はいはーい。アタシはファンデーラ伯爵の次女、クルサよろしく」
「!!?!」
エルザがかなり驚いた。
「そ、そうですか……あっ、失礼します。申し遅れました、私はボナトデナン男爵家長女、エルザ・セル・ボナトデナンです」
エルザは今現在の家名を名乗った。
「「ボナトデナン男爵?」」
それに二人はエルザの家名に首を傾げた。
「ちょっとどうゆうことよクルサ、人違いでもしたの?」
「そんなわけないでしょ!でも家名が……あっ、そういえば最初は公爵ってこと隠してたような」
「それならいいわ。後でじっ~くり思い出させてあ・げ・る」
「ひっ!」
「……あのー?どうしたのですか?」
こそこそと二人で密談をしていると、気になったエルザが後ろから声をかけてきた。
「なんでもないことはないけど、なんでもないわ。後々教えてあげる」
「はぁー、それはどういう」
「エルザ様ー!エルザお嬢様ー!ごぶじですかぁあーーー!」
やっと人混みを掻き分けてエルザのメイドが現れた。とんでもなく疲れて荒々しく息をしていた。
「はぁはぁはぁはぁはぁ……あなた……がたは……いったいだれ……なのですか」
「大丈夫キャル?すみません、頑張りやさんなもので」
「エルザ様……このもの達は」
エルザがアルフェーナとクルサのことをメイド―――キャルに話していた。
「そっ……そのような恐れ大き御方がたとは露知らず無礼なことを!申し訳ありませんでした!」
キャルが青ざめた顔で土下座した。心なしか体が小刻みに震えている。
「別に私は気にしてないわよ。クルサも」
「そうそう、それくらいどーてことないから」
二人が軽めに謝罪を受け入れるとキャルは恐る恐る顔をあげた。
「よろしいのですか?」
「いいのよキャル。お二人は心がお広いのよ」
エルザが優しく言っている。
「そういえばエルザも魔術学園に入学するの」
「はい、剣は苦手でして魔法ならどうにかなりましたので、この度入学することになりました」
「ならアタシ達同じクラスになるかもね。そうなったらよろしくね」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
クルサが差し出した手をエルザはおおいに喜び勢いよく握り返した。
「そうなると、エルザとアルは学園初心者になるわけだ」
「え、アルフェーナ様は学園に高等部からなのですか?」
クルサの発言にエルザが首を傾げる。
「そうよ、事情があって高等部から。そらよりもエルザはこれから何かやることはあるのかしら?」
「いえ、特にはありませんけど。本来はあのまま帰る予定でしたのですが、あの方達にいきなり絡まれてしまい」
「なら少しそこでお茶でもどう?ゆっくり話しましょ」
「おっいいね!テラスでお茶会だー」
アルフェーナは近くに見える喫茶店を指差し、それを見たクルサがはしゃぎながら喫茶店にむかう。
「あのその、よろしいのですか?私達お金が」
「いいわ、私が奢るから。対価として話でもどう?」
「……はい、喜んで!」
アルフェーナの返しに呆気に取られたのち笑顔で了承すると、キャルの手をとり駆け足で喫茶店に走っていった。
それからしばらくキャルにもお茶会に強制参加してもらいしばらく話し込み、それからエルザとキャルとはその場で別れ、アルフェーナとクルサは屋敷に戻ることにした。
●
翌日、魔術学園入学日になった。アルフェーナとクルサの姿は屋敷の門の前にあった。
二人とも黒のレースをあしらった上着、中に白のブラウス、紺のロングスカートに黒のタイツをといった服装だ。これが魔術学園の制服のようだ。
「時間もいいみたいだし行きましょ」
「そうね、いやー今日から学園生活の再開かぁ。初日から面倒ごとは嫌だから、なにも引きつけないでねアル」
「それはわからないわ。そうかも知れないし、そうじゃないかもしれない。神のみぞ知るってところね」
そんな雑談をしながら二人は学園に向かいだした。本来貴族の生徒は馬車を使い向かうものなのだが、今回はアルフェーナきっての願いで徒歩通学となり、なし崩し的にクルサもそうなった。
そのため街道を歩いていると多くの馬車が通過していった。そんな光景を横目で見ながら二人は会話していると、とうとう魔術学園に到着した。
「ここが……」
「そう、二大学園の片側にして魔法専門の学園、魔術学園よ」
門は三メートルほどなのだが、両脇に重厚そうな鎧ゴーレムが控えていた。侵入者撃退用のゴーレムなのだろう。
見上げながら門を潜ると、アルフェーナは更に顔を見上げた。そこにあったのは一言で言うなら城だった。
(いや、城とは違うかも。テレビや雑誌でしか見たことないけど、どっかの国にあるサンクトペテルブルグ?だっけ、それに似ている。色は真っ白だけど)
学園は上部は3つの塔に別れて下部が連結されている感じになっている。よく見ると、正面からは塔に見えるが横から見るとかなり後方にまで続いている。
「どうよアル、言うなればここはハリ○タの学園よ!」
クルサがどや顔で言ってきた。だが例えはかなり的を射ていた。校舎に二人出歩いていくが、登校時間にも関わらず誰も歩いていなかった。
「登校の時はいつもこんな殺風景なの?」
「そうよ、だいたい校舎の中にある馬車乗り場まで運んでもらってだから、ここ歩くのなんていないいない。もしかしたらアタシ達が初めてかもよ?」
「つまらないこと。こうゆうふうに話ながら行くのが登校の醍醐味なのに」
校舎に着くとすぐに掲示板に向かった。クラスを確認するためだ。
「アタシはっと……あっ、あった」
「こっちもあったは……同じクラスではないみたいね」
「残念。でもアルはエルザと一緒見たいね。ゲーム通りよ」
クルサはBクラスで、アルフェーナとエルザはAクラスになっていた。
「休み時間遊びに行くから」
「気長に待っているわ」
二人はそれぞれのクラスの前で別れた。クルサはドアをバンッ!と開けて気楽に入っていった。
アルフェーナもさして緊張せずにドアに手をかけると、クルサと対照的に普通にカラカラと開けた。
さぁここからどんな物語が始まるのか誰も知らない。もちろん当のアルフェーナにも。クルサにも。エルザにも。
次回もよろしく!




