森と山賊とアルフェーナ
よろしくお願いいたします!
その後アルフェーナは公爵領からさほど離れていないところにある森にやって来た。
「……確か魔物も出るはず」
アルフェーナの目的は魔力量を高め、戦闘力、コントロール力を身に付けていくことだった。
そうして森に入り、奥地に進んでいくと、囲むようにしてゴブリンが十数体現れた。
「「「ぐぎゃっ!ぎゃぎゃぎゃっ!」」」
下卑た笑みを浮かべながら近づいてくるゴブリン達を、アルフェーナはさして慌てもせずゆっくりと見渡すと、両手を広げた。
「《ライトニングサークル》」
アルフェーナを中心とした雷の半球はゴブリン達を飲み込むと、中にいるアルフェーナを除いて雷撃を叩きつけた。
「「「ぎゃああああああああああああああ!!」」」
ゴブリン達の断末魔が響き渡る。一瞬にして殲滅したアルフェーナはまた歩きだした。
それからも、ゴブリン、ホブゴブリン、ウルフ、コボルト、スライム等の低級、中級の魔物を難なく倒していった。
歩きだして数時間した時、いきなり森が終わり、開けた場所に出た。そこは先程の森とは思えないほど異様な場所だった。
まず中心に大きな木があり、そこから森との境界線まで花が咲き誇っていた。
「…………きれい」
アルフェーナは辺りを見渡し、素直な感想を言いながら中心に向かった。口では周りの美しさに感嘆し、緊張を解いているが、手には森のなかで作っていた氷の剣を持ちながら歩いた。
そのまま木があるところまで来ると、後ろを振り返り叫んだ。
「隠れてないで出てきなさい。そのために森のなかを歩きまくって、あなた達を殺しまくったんだから」
アルフェーナが微笑んでいると、周囲の草むら全てが揺れ始め、続々と魔物が現れた。
100を超え500に迫ったところで魔物達の動きは止まったが、森の中にはまだまだ魔物が蠢いていた。
「あらあらこんなに歓迎されちゃって嬉しいわ。そんなに慌てなくても大丈夫よ。一匹たりとも逃がさないから」
そういうとアルフェーナは一瞬だけ全魔力を解放し、自分の魔力で薄くだが森全体を包んだ|。
自分の魔力による感知技法のようなものだ。
「……意外に集まったわね。視た感じもう来なさそうね。ならここら辺で閉ざしましょ。《アイスウォール》」
「「「ぎゃぎゃっ!!」」」
「「「ぐぅるあっ!!」」」
アルフェーナが詠唱すると、取り囲んでいた魔物達をさらに氷の壁が取り囲んでいった。
魔物達は自分達の優位が崩されたことに動揺してしまった。その隙をアルフェーナは逃さなかった。
「はっ!」
「ぎゃっ」
近くにいたゴブリンに接近すると、氷の剣をおもいっきり振りゴブリンの首を斬り飛ばした。
「ジャンジャンかかってきなさい、私はもう誰にも……奪われない、何もかも奪って奪って奪い続ける」
そこから始まったのは、単騎による大軍の蹂躙だった。
接近し、両断、首刈り、突き刺し、さらには
「《ライトニングサークル》《ファイヤーランス》《レインポイズン》《エアブラスト》《アースニードル》」
雷が落ちる半球、炎の槍、紫色をし触れた者に全身麻痺で殺す雨、風の砲弾、地面から無数の針と多種多様な魔法を放ち次々と数を減らしていった。だが魔物達もただ殺られていっていくのでなく反撃も試みようとしたが、アルフェーナが統率力を持つ魔物を先に倒していったため、混乱、そこに範囲型の魔法を放ち殲滅、それをやっていくと魔物の数は、3分の2、半数、3分の1と減っていった。当然アルフェーナの魔力は無尽蔵なわけがないのだが、一向に衰える気配が感じないほどスムーズに放たれ、結果蹂躙は2時間弱で終わりを告げた。
「こんなものかしら、意外と呆気なかったわね。次のお方達は粘ってほしいわね」
死体を踏み抜きながらアルフェーナは森の東側にある洞窟、山賊達の隠れ家に向かうことにした。
◆
「ふぅあ~あ、見張りなんてめんどくせぇな」
「そういうなよ、余計に疲れる」
槍を持ちあくびをしながらダルそうにしている男に、洞窟を挟んで隣にいる仲間の男が諭すようにしていった。
「早く交代して、先日の戦利品とまた遊びたいぜ」
「確かに今回は粒ぞろいだったからな。壊れる前にもう一回したいもんだ」
ぎゃはははははっ!!と二人の下卑た笑い声が当たりに響いた。するとそれに反応するように、
「それ、私も混ぜてもらっていい?」
質問する声が響いた。
「っ!!誰だ!どこにいる!」
「ちっ!だらけすぎたかっ!ここまで近づかれて気付かねぇとは!」
男二人は手に持った槍を構えて、辺りを見渡した。
「……見つけたか」
「見つからねぇ、くそっこっちの魔力感知に引っ掛からねぇとなると、さっきのは声だけ飛ばしたのか?」
「あら違うわよ?私は最初からここにいるわ」
「「っ!うらぁっ!」」
真横から聞こえた声にさせ二人は姿を確認せず、手だけを動かして全力で薙いだ。だが槍は何にも当たらず空を斬り壁に当たった。
「ざ~んねん私はここよ?」
二人は恐る恐る声のした方に振り返るとそこには、まだ歩けるようになったばかりの子供が立っていた。
異様だった。この場に似つかわしくない人物が居たことよりも、男二人はこんな子供が目の前に入るのに、先程から自分達の魔力感知に認識されないことにだ。目の前の子供が幻覚なのかと思うくらいに。
「トル、情報優先、ボスに伝えろ、ここは俺が死守する」
「……了解、任せたぜアゼ」
アゼと呼ばれた先程まで愚痴を呟いていた男は子供ーアルフェーナに槍を向け構えた。トルと呼ばれた男は槍を岩壁に立て掛けると、
「《フィジカルブースト》」
身体強化の魔法を使用して、猛スピードで洞窟の奥に消えていった。
「連れないわね、どうせ逃げられないのに」
「嬢ちゃんあんた何もんだ?迷子なら家まで案内するぜ。特別に無料で」
それからアゼは自分でも驚くくらい下手に出て交渉しだした。端から見れば三歳児にゴマを擦っている卑しい大人に見えるが、等の本人は羞恥なんぞ関係ないとばかりに交渉を続けている。それも長くは続かなかった。
「……そろそろ報告し終わったかしら?なら行かせてもらうわ」
アルフェーナはただ待っていただけなのだから、洞窟内での準備が終わるのを。
「……後悔するぜ?準備がちゃんとすれば俺達は騎士団の一個中隊に匹敵する自負がある。それでもく……」
アゼはそれ以上言葉を紡ぐことが出来なかった。アルフェーナが歩くと同時に氷漬けにしてしまったからだ。
「お勤めご苦労様。通らせてもらうわ。ついでにこの槍貰うわね」
アゼに聞こえるはずはないのだが、アルフェーナは呟いたのち、トルが置いていった槍を手にして洞窟に入っていった。
◆
「迎撃態勢を取れ!急げや!」
「てめぇらは三番目の横穴行って待機だ!敵が来やがったら問答無用で殺せ!」
洞窟の最奥の広間のようになっている場所では怒号が響いていた。誰もが武器を取り走り回り、指示を受けた場所に向かっていた。だが、中央で椅子に腰を下ろしている男だけはただ静かに出入口を睨み付けているだけだった。
筋骨隆々で、肌は日に焼けたように褐色、スキンヘッドで顔には炎のように揺らめいている刺青が彫られていた。服装も山賊の長見たいな格好だった。腰にはマチェットとカットラスを差していた。
「ボス、今回の襲撃どう思いますか?」
ボスと呼ばれた椅子に座る男に隣に立っていた中年男性が話しかけた。
中年男性はローブを纏っており唯一出している肌は顔のみ、肌の色は少し焼けただけの乳白色であった。手には身長と同じくらいの杖を持っていた。
「う~ん、考えられるのは西の奴等だがガキ使うなんざらしくねぇ、同じ理由で北と南の奴等もらしくねぇ。最後にスラムの奴等だが、こっちに干渉してくるメリットがねぇ。考えてみたが八方房がりだよ。そういうレゼはどうなんだ?」
レゼと呼ばれた中年男性は顎に手を当てると少し考え、確認するかのように呟いた。
「どれでもない……ですかね」
「うん、根拠は?」
「それは……」
レゼが口を開く前に、通路から悲鳴が響いた。暫くして服の端や髪に少し凍結した部下が恐怖に顔を塗りつぶして現れた。
「お前どうし……」
「ボス!早く逃げましょ、あらゃ勝てねぇ!化け物だ、迎撃に向かったやつ全員が氷漬けにされた。誰も勝てねぇんだ!だからはや……」
「あら?連れないこと言わないでよ。せっかく来て上げたんだから。うふふっ」
「ひっ!……あがっ」
通路から現れたアルフェーナは、わざと逃がした男を一瞬で凍らせた。
「嬢ちゃんが襲撃者か」
「えぇ、貴方は?」
「俺はここのボス、ゼンドルってもんだ。嬢ちゃんは?」
「私はアルフェーナ・フィン・グラビトン。でも追い出されたから今はただのアルフェーナよ」
「……目的はなんだい」
「話が早くて助かるわ。私の要求は……あなた達を私の下に付きなさい。有り体に言えば勧誘よ」
「……断ったら?」
「そこの男みたく、私以外洞窟にいる全員を氷漬けにする」
「……ボス、この子ならできちまう。俺達になんの抵抗もさせずに」
レゼは額から大粒の汗を滝のように流していた。緊張してではない、今目の前にいるアルフェーナの魔力量を感知して、その膨大さに震えているのだ。
アルフェーナもその事に気づいているが特に気にせず、妨害することもなかった。
ゼンドルは少し考えたあと、椅子から降り横で膝をつき頭を垂れた。レゼも慌てて同じ態勢になった。
「嬢ちゃんに従うぜ。今日からあんたの部下だ」
「そっ、ありがと」
アルフェーナは椅子に歩いていき座った。
「それじゃこれからのことを話すね」
それからアルフェーナはこれから何をしていくのかをゼンドルとレゼに話した。それを聞いた二人は眼を見開いて唖然とした。
◆
(くそっ!とうとう俺にも年貢の納め時か)
茶髪の中年男性が両手を後ろで縛られながら、両脇を固められ洞窟内の歩いていた。この男は森の西側を拠点にしていた山賊のボスであり、つい先日捕虜にされたものだった。
(この森の山賊を全部壊滅させた奴等はなにがしたいんだ?俺なんか山賊界隈じゃ下も下だってのに)
男が物思いに更けていると、洞窟内の奥の広間に着いた。
(なんだあの嬢ちゃんは?……それに先に壊滅した東北南のボス連中じゃねぇか!生きてたのか)
広間の中央の椅子に座るアルフェーナと、その周りのゼンドルと、三十歳手前頃の女性と、ローブを着た五十歳頃の男性が控えていた。男が通路から現れるのをアルフェーナが気付き声をかけた。
「あら来たみたいね。貴方名前は?」
「…………」
「名前は?」
「…………子供に言う必要があっがぁああああああああ!!……いってぇ!何しやがるミーゼ!」
ミーゼと言われた控えていた女性が連れられた男の腕を捻り地面に組伏せると、怒りのこもった眼で呟いた。
「お嬢様に口答えするなバカが。さっさと質問に答えろ、さもなくば両腕を折る」
「わっ……わかった!わかったから手を離せ、これじゃ話せねぇ」
ミーゼは渋々といった感じで手を離しアルフェーナの脇に戻った。
アルフェーナは何もなかったかのようにもう一度質問した。
「お名前は?」
「……西側山賊ボス、トリソウだ」
「私はアルフェーナ・フィン・グラビトン。現在は貴族じゃなくなっているからアルフェーナでいいわよ」
「アルフェーナ、俺をどうするつもりだ。それになんで壊滅した三方向の山賊ボスが居やがるんだ」
「それはねぇ~」
「ここらは俺が喋っても?」
ゼンドルが脇により伺いをたててきた。
「いいわよ、分かりやすく説明してね」
ゼンドルは頷くと、トリソウにこれまでどんなことがあったか、壊滅ではなく合併したのだとその事について説明していった。
「なるほど、つまりお前らはそいつに敗北して醜く従っている弱者ってわけか。傑作だなおい!俺としのぎを削っていた奴等がこんなのだったなんてな!」
「てめぇ言わせておけば!」
「……なに?貴方は私の家族をバカにするの?」
アルフェーナが口を開いた瞬間、辺りの気温が下がった。脇に控えていた三人は平然としているが、対面で冷気が乗った殺気とプレッシャーを直に感じているトリソウは、顔を青くしてガタガタと震え始めた。
「ねぇどうなの?」
「…………」
再度の質問にトリソウは、先程までの態度を取れず無言になってしまった。アルフェーナはそんなトリソウをしばらく見たあと、つまらなそうにため息を付いた。
「もういいわ、あとのことは任せるから一ヶ月後の話をするわよ」
「「「はい!」」」
アルフェーナの言葉に三人は嬉しさを全面に出して頷いた。事情を知らないトリソウだけがその場で取り残されていた。
「まず一ヶ月で準備を終わらせて一気に…………」
今日この時後に世界最強最悪と言われる犯罪組織の産声があがったのだ。
次話は遅れるかもしれないです。
すみません




