学園入学
やっとの普通回
よろしく
アゾルカとチェザーレとアルフェーナが抱き合っていると遠くからクルサが戻ってきた。邪竜を連れて。
「グァラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「アルー!お待たせぇーー!」
「……バカなのかな?クルサは……《真空壁》、《ミラージュ》」
いきなり隠蔽魔法を掛けていない邪竜を連れてきて、しかもそいつが盛大に吠える、パニック必須のことをしでかしたクルサにアルフェーナはかなり呆れた。
それでもため息をつきつつ尻拭いのため吠える声を広場に届けないように真空の壁で音を断絶し、邪竜の姿を広場の人には見えなくするために幻影を掛けた。
ちなみにこの邪竜、クルサに消し飛ばされたはずなのだが角が一本だけ残ったので、それに再生魔法を使用して体を復元、蘇生魔法で魂を呼び戻してクルサが甦らせていた。
「クルサ、どんだけ禁忌魔法使ったのよ、バレたら打ち首よ?」
「大丈夫だって!バレたらバレたでアルのとこに転がり込むから。それにこの子がバレても捕まる前に王都が無くなるし」
「……それもそうね」
二人の物騒な会話と邪竜のプレッシャーに周りは緊張で汗を流していた。ほぼほぼ邪竜のプレッシャーが原因なのだが。
「それにねクルサ、少しは周りに気を配りなさい。私が遮断しなかったらどうしてたの?」
「それについてはごめんね。でもアルがやってくれって信じてたから」
「嫌な信頼」
アルフェーナは呆れながらも、でも顔は優しく笑いながらクルサに近寄っていった。でも触れる前に邪竜が手で遮った。
「グルルルッ」
「ちょっと大丈夫よ。アルは友達なの!それにそんなことしたら……」
「あら?遊んで欲しいの?」
クルサが邪竜に手を退けるように言おうとしたとき、冷気が立ち込め邪竜の手に薄く氷が張り出しアルフェーナが邪竜を睨んだ。
「キャウウウウウンンンンンンン!!」
怯えた子犬のような叫び声をあげた。巨大な竜が。
「かわいいわねこの子」
「でしょ!アタシも戦っている最中にビビビッと来て、それで相棒にしようと思ったわけよ!」
「名前は?」
「あーそれがどうするか悩んでいるのよ。それにこの子召喚された子だから戻っちゃうかもしれないのよねぇー」
「うんと、それはない。確かに召喚獣は術者の魔力切れか死亡で送還か消滅だけど、クルサは一回この子を消滅させているし、それによって召喚の副作用は無くなる。しかも蘇生だからずっと大丈夫だと思うよ?」
「まじっ!やったーー!」
アルフェーナの説明にクルサが跳び跳ねながら喜んだ。
「なにがいいかなー。……邪竜だからジャー……リュウ、クロ…いっそポチとかタマでも」
「それはやめときなさい」
「グルゥアッ!」
クルサの名前付けが安直な方向に進みそうだったのでアルフェーナが止めると、被せるように邪竜も動揺した声で止めてきた。
「う~ん、アルなんかいい名前ない?神話とかにでてくるのでもいいから」
「そう言われても……なら有名所のニーズヘッグかリンドブルムのどちらかにしなさい」
アルフェーナは前世で見たことがある神話系の本に出てきた竜の名前をあげた。
「ふーんその二つ有名なんだ……足してニーズブルム、リンドヘッグ、どっちがいい?」
「問いかけに問いかけで返さないで……私ならニーズブルム」
「ならこの子の名前は今日からニーズブルムね。よかったねー」
いきなり決定してしまった邪竜の名前、これには邪竜も驚いているのか顎が外れるのではというくらい大きく開けていた。
「なら略してニムね」
クルサが命名そうそう略した。アルフェーナも何も言えなくなっていた。邪竜と同じタイミングで肩を落とした。
「そろそろいいかい?二人とも」
後ろからおずおずといった感じでチェザーレが尋ねてきた。さらにその後ろでは残りのメンバーが苦笑いを浮かべながら邪竜を見上げていた。
「クルサ君、無事でよかった。すごい状況だが…お帰りなさい」
「お帰りなさいクルサちゃん。無事でよかったわぁ」
チェザーレは優しく声をかけ、アゾルカは少しきつめに抱きしめた。
「はい、ただいまです。お二人も無事でなにより」
抱擁を終えたのち、アルフェーナ達は広場に入らず戻らず、自分達の別荘か宿舎に戻ることにした。
ほんとは広場に入っても良かったがアルフェーナが、
「今入っていったら、せっかく潰したプライドを元通りにした成金野郎が絡んできてめんどくさいから行きたくない」
と言ったので戻っていた。チェザーレとアゾルカは元々広場にいたので戻ってもよかったのだが、何分ずっとアルフェーナ達を心配していたので離れたくないそう。
それに外にアルフェーナ達を探しに行く許可を貰っておるのですぐに戻ったらいろいろ面倒になるからとのこと。
別荘に歩いているなか、隣のクルサが語りかけてきた。
「そういえばアル、アルは五年後に学園に入学するんでしょ?」
「そうよ。長いようで短い時間よ」
「アタシさ現在在学中なのよ。だから学園内でやってほしいことあったら言って。ある程度なら頑張るから。その代わり長期休暇の時遊ぶか泊まらせて家に」
「それならいいですか?」
「えぇいいわよ」
「私もいいよ」
クルサからの質問にアゾルカとチェザーレは二つ返事してくれた。
「いよっしゃあっ!これであの家に帰らなくてすむ!」
「やっぱり……ならクルサ、学園で……するてめの…………いて」
「わかった、頑張るよ。無理でも怒らないでね!」
「ハイハイ」
そうこう話していると別荘に着いた。
「アル、アタシの部屋に来て。学園に着いてたくさん話してあげる」
「わかったわかった……ところでクルサ、友達いるの?」
「ひどっ!」
そんなやり取りを後ろでチェザーレとアゾルカが微笑みながら見ていた。その日アルフェーナとクルサは夜遅くまで話し合っていた。
●
王都騒動から早五年が経過した。あの日は五年たった今でも大きな爪痕を王都と災害家族の心に爪痕を残していた。
あの日広場で歓声を受けていた成金野郎ことネロトは、悪魔から民を守ったとのことで英雄扱い、王族警護の守護騎士になっているとのこと。ただし一緒に悪魔を倒したアルフェーナの【竜帝】傘下のグレムトは表彰等を辞退、現在は『竜眼師団』にて情報収集をしている。
あとベレンナとプラートなのだが、ベレンナは騎士団所属のためそちらに戻っており、プラートも【カフデス教】司祭として仕事を頑張っているとのこと。二人は今もアルフェーナとクルサとの交流があり、時々集まっている。
そのアルフェーナとクルサなのだが、クルサは学園通いなので長期休暇でないとアルフェーナと会えていない。どうやら武闘大会のことは学園ではいっていないとのこと。そんな友達もいないとのこと。
アルフェーナはこの五年でさらに【竜帝】を大きくしており、平行して強さも更に磨いていた。冒険者にはまだなれないが魔物は大量に狩っていた。
そして五年だ、五年たったということはつまり、
「とうとうアルも入学かー。面倒にならないようにしてよー」
そんなことをアルフェーナの向かい側に座ったクルサが呟いた。
ここはグラビトン領のアルフェーナの実家の庭、そこにはクルサの他にベレンナとプラートもおり一緒にお茶をしていた。
「そういやアルフェーナは学園に通っていなかったな。理由はともかく今年からか……大丈夫か?」
「失礼でしょプラート。アルフェーナも頑張るわよ」
プラートとベレンナが会話しているのだが、
「二人とも、何が大丈夫で頑張るのか聞かせてもらおうか」
アルフェーナが二人の不安げな言葉を追及した。
「それは……まぁ」
「いろいろよ、いろいろ」
追及に二人は曖昧に答える。アルフェーナは更に追及しようとしたところで家からアゾルカとチェザーレが現れた。
「アルフェーナ、三人ともお前が非常識にならないようにしてほしいと思っているんだよ」
チェザーレの言葉に曖昧な言葉を発した二人が顔をすごい勢いで背けた。
「…………ちょっとあっちで遊びましょう」
「いわいやいや、今日はこれから買い物だろ!?汗は掻きたくないかなぁー……と」
「そそそそうよ!そう思うわよねクルサ!」
プラートとベレンナはアルフェーナとの遊びの回避のため慌ただし、クルサに救いを求めた。
「アタシはどちらでも……」
「クルサも遊びま……」
「あれ!そろそろ出発の時間じゃない!?こうしちゃいられないわ、日がくれ前に買い物済ませましょ」
「「そうしようそうしよう!」」
クルサも遊びに付き合いたくないので、アルフェーナの声を遮る大きな声で提案を言うと、ベレンナとプラートはすぐさま乗っかってきた。そしてすぐさま立ち上がり門の方に向かって歩きだした。
「調子のいいやつらめ……お父様、お義母様。これから買い物に行ってきます」
「「いってらっしゃい。気を付けて」」
「はい」
お辞儀をするとアルフェーナは三人の後を追った。
ちなみにアルフェーナはアゾルカのことを「アゾルカ様」ではなく「お義母様」と言うようになっていた。
初めてそうよんだときはアゾルカは号泣してしまい、さらに宴会を催そうとまでしてしまうほど喜んでいた。今では落ち着くまでになっているが、それも最近になってからだ。
話が脱線したが、アルフェーナ達は街に行き買い物をしだした。大体はクルサが必要なものを買うのに三人が付いていき、色合いなどをプラート以外が話し合って買い、買ったものをプラートが持つとそんなふうにしていた。
そうこうしていると日が傾きだした。
「これくらいかな、買うのは」
クルサは店からでるとそういった。三人は何も持っていないが、後から出てきたプラートは腕一杯に紙袋、顔が見えなくなるくらいの荷物の山を抱えて出てきた。心なしかよたよたとふらついている。
「ここからは馬車にしましょう。ちょっと知り合いに頼んでくるわ」
そういうとアルフェーナは街道を走っていく振りをして裏道に入り、そこで待っていた【竜帝】の部下達に馬車の準備を頼んだ。
頼んだ後三人のもとに戻ると、しばらくして馬車がやって来た。荷台に荷物を積み、馬車に乗り込むとそのまま屋敷に戻ることにした。
馬車の中では学園についての話し合いをしていた。でも話し合いも屋敷に着き終わった。
クルサとアルフェーナは馬車から降りたが、ベレンナとプラートはそのまま帰るようで乗ったままだ。
「じゃあね二人とも。学園生活頑張りなさい」
「何かあったら駆けつけてやるからよ。その時は近くの教会に手紙を出させろ」
「なら私は騎士団の駐屯所にでも」
「わかった。そうならないように頑張るけど、その時はよろしくね」
「今度の休みも集まるから、その時連絡に使うわ」
最後のクルサの発言に全員が笑った。
その後解散すると、アルフェーナとクルサは屋敷に戻った。
●
お茶会から一ヶ月が過ぎ、とうとうアルフェーナの学園への出発日になった。
「よいしょっと……これで全部」
「アルフェーナちゃん、忘れ物ない?」
「あったら今から買ってくるが」
「はい私は大丈夫です、お義母様、お父様」
そういうとアルフェーナは屋敷に視線を向け、釣られてアゾルカとチェザーレも視線を向ける。そこには、
「やっばぁああああいっ!教科書失くした!あれ、服は入れたけど下着……それに美容系の道具はどこに」
「クルサ様、今言ったのは魔法袋に収納したのでは?」
「そうだった!でも……あれとあれとあれは入れてない!どこにやったっけぇええええええええええええ!!」
クルサと執事が大慌てで荷物の点検、収納、点検を繰り返していた。そうクルサは前の日か直前になってやりだす人なのだ。
前日に点検だけにまで終わらせていたアルフェーナと違い、最後まで大慌てでやっているクルサは今現在涙目だ。まぁ自業自得なのだが。
そして出発予定時刻ギリギリになってクルサがいろいろはみ出したバックを両手と肩に下げやって来た。
「だから言ったじゃない、準備しなくていいのかって」
「いや……あの……ね………ちょっと休ませて」
息も絶え絶えにクルサが馬車に座った。
アルフェーナも今は説教出来ないので馬車に乗ると、遠くから一台の馬車がやって来た。気配感知には知り合いが来ることがわかった。
「クルサ、お見送りよ」
「だれが?」
疑問符を浮かべるクルサを尻目に馬車は後ろに停車すると、中からベレンナとプラートが降りてた。
「間に合った?」
「えぇ、クルサのお陰で」
そんなイジリにクルサは手を上げ答えた。
「やっぱり……ほら大丈夫だったでしょ?どうせクルサが遅刻するんだから」
「ほんとだな、助かったぜ」
「遅刻してないわ!」
二人のイジリにクルサがツッコむ。……いやいや十分遅刻ですよクルサ。
それからしばらく談笑した。なぜならクルサの荷物を執事とメイド達がまだ運んでいたからだ。かなり適当にぶん投げて積んでいったので荷台はごちゃごちゃになっていた。
だがそれも終わりとうとう……と言うよりもやっと出発出来るようになったので、アルフェーナとクルサは馬車に乗り込んだ。
「気を付けて行っておいで二人とも」
「病気にならないようにね」
「手紙出せよ、待っててやるからな」
「右に同じく。後問題起こさないようにね」
「「「左に同じく」」」
最後にフラグ見たいなことを言ったベレンナに三人が同意したのに二人が文句を言おうとしたら馬車が発進した。だから窓を開けて、
「覚えていなさいよみんな!アタシが泣かしてやる!」
「下に同じく!それではいってきまぁああああああす!」
アルフェーナとクルサが日の光降り注ぐなか馬車に揺られ学園に向かった。
●
それから数日馬車に揺られ街道を進んでいると、クルサが何かに気がついたように窓を開けた。
「アル、見えてきたよ」
その言葉にアルフェーナが窓から顔を出すと、遠くに城壁が見え、その内側に都市が見えてきた。
「あれが……」
「そう、あそこが学園のある国、学園都市国家バーバルナリヤよ」
見えてきた都市にアルフェーナは心を踊らせた。これから始まる学園生活とそこでの出来事に。
学園での新キャラ達をどうかよろしく




