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王都騒動終結

頑張ったぜぇ

よろしく

「かっ……はーはーはー……はーはーはーはー……」

「さすがに何も出来そうにないわね、まぁデンドルムじゃなかったら死んでいるけど」

「てめぇ、邪神様を……呼び捨てに、すんじゃねぇ……」

先程まで凍っていたはずなのに今では大粒の汗をかき、肩で息をして疲労困憊(ひろうこんぱい)の様子だ。

「どうするつもり?一応貴女は殺さないでおいてあげるけど、なんなら王都の外まで護衛しましょうか?」

「ふざけんじゃないわよ!誰がそんな事望むのよ、それともいいのかしら私を見逃して、寝首をかかれてもしかたな」

「デンドルムならともかく、貴女では無理よ、そんな事気にするなら今この場で殺しているわよ」

「…………」

聖女が苦々しい顔で押し黙った。

「そんな顔しないでよ。先程言ったとおり殺さないし、護衛もする、私は貴女に死んでほしくないのよ」

「……どうしてよ、なんでそんな事を」

「私は……私はまた戦いたい、()りあいたい、(ころ)しあいたい、死合をしたい、高みに上りたい、血沸き肉踊る戦闘を楽しみたい!」

アルフェーナは言葉を出す度に笑みが浮かび最後には輝かしい顔になった。

「私はもう一度デンドルムに会いたいのよ。そのためはまだ貴女が必要なのよ」

「なっ!……なら我々【邪神教】に」

「ふざけたことを抜かすな!」

「っ!?!!」

アルフェーナが瞳に怒気を滲ませ怒鳴った。聖女が息を飲む。

「あぁごめんなさい怒鳴ったりしてしまい、でもねあなた方【邪神教】には少なからず因縁があるの。言えないけどね、それに私は誰にも従わない、指図されない、そう決めてるのよ」

「そう……なの……我々は、今回失敗したのね。大作戦だったのに」

聖女が四つん這いで項垂れた。だがアルフェーナはその光景が、

「あぁ我々は大司教様にどうお許しを乞えば、我々はなんと報告をすれば」

聖女の瞳から涙が流れ肩が震えているのに、それがどうにも、

()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()?」

ピクッと聖女が僅かに反応した。そして目尻に涙を貯めながら顔を上げ聞いてきた。

「それはどういう意味ですか?」

「そのままの意味よ、うさんくさい、演技にしか見えない、そんな芝居の完璧なる完成形を見ているみたいな感じよ」

「私が悲しんでいないと?そんなことはありませんわ」

「そう?だって貴女さっき許しを乞えば、報告しなければつていっていたけど」

「そうですが?」

「普通は、叱責や降格を怖がるけど、貴女はそれを恐れていない、そんなことないと確信しているみたいに」

「ちっ……めんどうな」

「だいたい候補とかはいると思うし、そうじゃないとやっていけないでしょ?それでも自身がarってことは、独自任務辺りがあって、それが成功している、みたいなことかな?」

「ちっ、ほんとに勘がいいわね」

聖女が苦々しく悪態をつく。

それから何故かわからないが聖女が独自任務を教えてくれた。どうやら今回は邪神デンドルムを聖女に降ろすまでが、【邪神教】本部としての本来の作戦らしかった。それを支部に直接伝えればいいものを、なぜだか伝達に狂いがしょうじて、邪神の降ろしが邪神の降臨に変わってしまっていたとのこと。

「本来は本部で降ろすはずが、降臨させると変わって伝えられた、そのせいで私がここに派遣されることになってしまった。ほんと運がない」

「そうね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

アルフェーナの言葉に聖女は疑問を持った。恐る恐る見るとアルフェーナはニヤニヤと笑っていた、まるで頑張ってやったことが成功したかのような笑みだ。

「…………まさか、貴女なの?」

「あら()()かしら?」

アルフェーナは笑みを崩さない。まるでイタズラに気がついてほしいかのように。

「まさか貴女が間違った情報を?でもそれでも支部を任される幹部にバレないようにするなんてどうやって」

「うふふ大当たり~、でも最後のは次までの宿題よ、頑張って考えなさい」

聖女は苦々しく俯いた。

「それで?このままだと誰か来て貴女捕まっちゃうよ?」

「くっ……なら不本意だけど、私が指定する場所に運んでくれるかしら。報酬は払うから」

「りょ~かい~、ちょっと荒っぽいけどいいかしら……よっと」

「きゃあっ!?」

アルフェーナは聖女を抱き上げた。お姫様抱っこで。聖女もそれにはびっくりしてしまったようだ。

それから聖女は以外と大人しく、アルフェーナは指定されたところに聖女を運んだ。

建物に入る、どうやら貴族の屋敷のようでかなり広い。まだ歩けないようなのでお姫様抱っこのまま二階に(おもむ)きある部屋を開けた。中は家具がなかったが、部屋の中央に巨大な魔方陣が書かれていた。

「あら珍しい、転移の魔方陣なんて本のなか以外で見たことないわ」

「まさか知っているなんて」

「まぁねぇー」

アルフェーナが珍しく得意気な顔をした。

聖女を魔方陣の中央に降ろし、アルフェーナは壁際に寄った。寄ったのを確認すると聖女が魔方陣に魔力を流しだした。すると魔方陣が輝きだし、魔力の光の粒が浮き出した。

「やっぱり便利ねぇ魔方陣、詠唱が必要ないんだから」

「貴女ねぇ、この魔方陣はそうだけど普通の魔方陣には詠唱必要よ?……まさかだけど」

「私はやりません」

「反則ね……ふふっ」

不意に聖女がほがらかに笑った。

「どうしたの?」

「いやねぇ、さっきまであんなに殺しあっていてのに、今は会話を楽にしている。こんなにもおかしいことないでしょ?」

「……そうかしら?私の部下達はもともと敵であったし、こんなものでしょ?」

「ふふっ変なの……そろそろ転移するわ。ねぇ、名前教えて?」

「そういえば私達は名乗りあっていなかったわね」

輝きがましだした魔方陣の中と外にいる二人が、これから数多の戦場で顔を合わせる二人が名乗りをあげた。

「グラビトン公爵家長女で犯罪組織【竜帝】のボス、アルフェーナ・フォン・グラビトンよ」

「【邪神教】特異聖女にして『神降ろしの神子』、名前は……プナリア、プナリアよ。次は負けないから」

「えぇまたね。【邪神教】では受けないけど貴女個人としては私達【竜帝】は依頼受けるから、何かあったら言いなさい」

聖女は返事をすることなく光に包まれ消えた。だけど消える直前微笑んでいたように見えた。

これが後のアルフェーナの腐れ縁となる聖女プナリアとの邂逅(かいこう)、戦闘、名乗り、最初の別れであった。

「もう終わったの?」

「クルサ、来てたの」

屋敷を出るとそこにはクルサが壁にもたれかかって待っていた。

「殺さずに帰すなんて、なんかあったの?」

「どこから見てたのよ」

「アルがあの女をお姫様抱っこしながら通路歩いているところから」

どうやら途中からのようなので、アルフェーナがなぜその事をしたのかは知らないようだ。

「気まぐれよ、なかなか居ないじゃない?私達クラスって、敵さんにも一人くらいいてくれないと面白くないでしょ?」

「ふーん……まぁそんなとこにしといてあげる。私はてっきり突然現れたら得体のしれない魔力の主をあの女が知っているから、殺さなかったのだと思ったけど」

歩きだしながらそんな的を射たことを口にしたクルサに、アルフェーナは苦笑しつつも、その事を誰にも言わないということを遠回しに伝えていることにたいして感謝した。

「ふふっ……待ちなさいよクルサ。急かさないで」

早足で立ち去ろうとするクルサに駆け足で近寄った。

「このイベントはゲームにあったの?」

「えっ?……いやいや無かったわよ。ゲームは15歳の学校からだから、多分冒頭や中間の会話の時喋っていたかもしれないけど、そんな細かいことは覚えていないわよ」

アルフェーナの質問にクルサが過去を思い出しながら答えた。それに対してアルフェーナがボソッと、

「……役立たず」

呟きそれに反応してクルサが、

「なんですって!!」

と怒声をあげながら飛びかかってきた。それを闘牛士(とうぎゅうし)のように軽やかに避けつつ、歩みも止めない。そんな感じで進んでいった、進む先は避難場所の中央広場。

そんなふうに騒ぎながら歩いていくと、先の方から歓声が聞こえてきた。二人は(いぶか)しげに首を傾けて、頭にハテナマークを浮かべながら進んでいった。どうやら歓声は向かっている中央広場からしているようだ。

「もう悪魔がいなくなったことわかったのかな?」

「確かに悪魔はもういないけど、それは私達クラスじゃないとまだわからない情報よ?英雄でも現れたのかしら」

雑談をしながら向かうと、人だかりが見えてきた。魔力感知と気配感知で見るとなにやらドーナツ型になっていて、穴の中心の人達に歓声を浴びせているようだ。

「よく見えないから上がるわよ」

「ちょっと待ちなさいよ」

二人は軽やかに屋根に飛び乗った。そこから見ると見知った顔が見えた。

「あら、あの人達こんなとこにいたの」

「知り合い?」

「知り合いっていうか、武闘大会の決勝戦の片方と、初戦に遊んだ人よ。クルサも片方はあっているはずよ」

中心にいたのは、アルフェーナとの初戦後に街中で絡みセルネに叩きのめされたグリムトと成金野郎ことネロトだった。

ネロトはともかくグリムトは【竜帝】に仮で入っていたはず、なのになぜここにいるのか。

『姫様、よろしいですか』

『セルネ?いいタイミングね。聞きたいことがあったの』

タイミングよくセルネから通信が入ったので、これ幸いとグリムトのことを聞こうとすると先手を打たれた。

『グリムトの件はただの戦力チェックなので問題ございません』

『それならいいけど……あなたどこからか見ているでしょ』

『偶然です。それよりも報告が、まず今回の戦闘での死者はゼロ、怪我人が新人に多く出ておりますが概ね大丈夫です』

『そう。今はそれだけ聞けれればいいわ。もっと粘密な報告は後で聞くから。今から王都のメンバーはグラビトン領に戻るように準備、三日後には出発出来るようにしておくこと。これが新たな命令ね』

『はっ、迅速に進めさせていただきます』

こうして通信は切れた。すると隣のクルサが質問してきた。

「誰と話したの?」

「あっ、わかった?部下というか家族みたいやつよ。それで片方がどうしてあそこにいるのかわかったけど、もう片方の成金野郎がいるのかわからないまま」

「なんとなくわかると思うけど、多分避難してたんでしょ?弱いから」

「え?決勝には上がって来てたはずよ?」

アルフェーナの発言にクルサがヤレヤレといった感じで首をふった。

「つい数時間前のことのはずなんだけど……確かあの人……八百長してた人じゃなかったっけ?」

「そうだっけ?」

アルフェーナの記憶にネロトのことは既になくなりかけていた。

「まぁアル出しいいわ。そんな弱い人が下級悪魔とはいえ、その大軍の中に飛び込むなんて出来ないわよ」

確かにそうなのだ、ネロトのランクは多く見積もっても5、運良く相手を続けていたとしても、数十分で飲まれてしまう程度の力量なのだ。

そんなふうに話ながら広場を眺めていたら、後ろから声をかけられた。

「嬢ちゃん!こんなとこにいたのか!……となりの子は」

「貴女決勝の……どこにいってたの?そっちの子は巨大な魔力を感じた瞬間いきなり飛び出していくは、周りにいた下級悪魔共はいなくなるはで大変だったのよ」

振り向くと女性騎士のベレンナと武闘神官のプラートが近寄ってきていた。

「あれ、お兄さんお姉さんどうしたの?それと……あの子は?」

ベレンナとプラートの登場にクルサが疑問に首を傾げ、それからキョロキョロ周りを見渡して何かを探しだしていた。

「あの子?……邪竜ならあの場所に居たままよ?」

「俺達じゃどうすることもできないから放置している」

「えぇっ!それはかわいそうだよ!アルちょっとごめんね、今からペットを迎えにいってくる!」

クルサは珍しく慌てて飛んでいった。

「気を付けてねぇ~」

それをアルフェーナは軽い感じで手を振って見送っり、ベレンナとプラートに向き直った。

「それでさっきの質問だけど、さっきまでいたのはあなた達が感じた巨大な魔力の目の前で、それと交戦していた、それだけよ。それとそっちのお兄さんは初めまして。グラビトン公爵家長女のアルフェーナ・フォン・グラビトンよ、よろしく」

「【カフデス教】司祭の冒険者ランク8、武闘神官のプラートだ、よろしく」

アルフェーナとプラートはガッチリと握手した。

「【カフデス教】ですか。しかも司祭様とは恐れ入ります」

「ありがとうよ。そんでベレンナ、決勝のって言うと…この嬢ちゃんは準優勝ってところなのか?お前さんが優勝の」

「なにいっているのよ、その子が優勝、私が準優勝、しかもお膳立てさせられて、私の本気を軽くあしらうくらいの実力よ」

「は?」

ベレンナの発言をプラートの頭は理解することができなかった。

「いやいや嘘だろっ!?この嬢ちゃんが優勝者!しかも本気のお前を軽くあしらわうだと?なんか冗談かなんか?」

「そんな面白くもない冗談言わないわよ。ほんとのことよ、それで話戻るけど交戦していた巨大な魔力の相手ってなんだったの?」

「そう!そいつのことだ!いったいどんなやつだったんだ?闘技場に現れたあの女とは感じた魔力が違ったが」

「それはね……」

アルフェーナは聖女との戦闘から、聖女が邪神を降ろしてからの邪神人格時との激闘とその決着を話した。すると二人はフルフルと肩を振るわせながら叫んだ。

「邪神の降臨!?」

「しかも領域を使って撃退!!???!嬢ちゃん領域使えんのかよ!」

「そこじゃないでしょ!邪神よ、じゃ・し・ん!世界が滅ぶとまではいかなくても王都は壊滅じゃなくて地図から消えているわよ!?」

二人が喧しく口論を始めた。当の本人であるアルフェーナを置いてけぼりにして。

ため息をつきつつ振り返り広場を見渡しても、先程と変わらず歓声が響き、しまいにはネロトコールまで鳴り出していた。もう一度ため息をつくと、待ち望んでいた気配が向かって来るのがわかり笑った。

しばらくすると二人が飛び上がってきた。

「アルフェーナちゃん!無事ケガない!?」

「よかったよアルフェーナ……ほんとによかった」

着地した瞬間アゾルカが血相を変えて近寄ってきて、体を隅々まで触れてケガがないか確認していて、チェザーレは近寄らぬものの口調は本気で心配しており、そしてこの上なく安堵しているのが伝わってきた。

「あぁよかった、ほんとによかったよぉ~。心配したんだからぁあ~」

泣き出すアゾルカの背中に腕を回して抱き締めながらアルフェーナは優しく呟いた。

「うんありがとう。ありがとうございます……そしてただいま、お父さん、お母さん」

最後の発見に二人は目を見開き凝視するも、嬉しくなり笑うとアゾルカは寄り一層強く抱きしめ、チェザーレも二人を包むように抱きしめた。

「「お帰りなさいアルフェーナ(ちゃん)」」

この言葉でアルフェーナにおける今回の騒動は終結した。


次回はどうするか悩む

でもがんばるからよろしく

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