クルサvsフーラ
クルサの戦闘です
でも短い!
「はっはっはっはっ!どうしたどうした人間、さっきから避けてばかりでないか!」
「…………」
フーラからの挑発にクルサは答えることなく、繰り出される魔法の数々を避けていた。
上級悪魔であるためフーラが繰り出す魔法はどれもこれも熟練されていた。そのどれもがクルサを殺すために降り注いでいる、普通ならば対処など不可能なのだ。……普通ならば。
タンタタンタッタタン……タタタタタッタタン!
クルサは踊るように軽快なステップで避けていた。しかも辺りは土埃で視界見えにくいのにも関わらず、抉れて足場も苦になく立ち回っていた。
だからなのだろう、その姿でフーラはさらに苛立ってしまった。たった一人の人間すら殺すことができず、魔法すら当たらない、そればかりか自分が引き立て役にされている状況に。だから煽る、そんな内心を悟られたくなくて、だけどそれすら意味をなしていないと態度で示されている、そう見せられたと思ったフーラは正常な判断を出来ていなかった。
だから気が付かなかったのは、土埃の中でクルサの影が二つに別れたところを。
「…………ふぅ~成功っと、なんか呆気ないなぁーこんな簡単だと」
土埃の中で分身と別れたクルサは建物と建物の間に飛び込むと一息ついた。
もとよりクルサはフーラと正面からの戦闘をするつもりはなかった。もちろんそれをして負けると言うことはあり得ないが、ただたんに―――めんどくさかったのだ。だから最初から攻撃せず避けることだけをしていて、分身と交代できるタイミングになったらさっさと変わるつもりであった。なのでフーラの煽りなど、何一つ聞かずに流していた。
実際何を言っていたのか聞いていなかったで返事を返すことも出来ていなかった。なのでフーラは無視されていたと思っているが、実際はもっとだめで、聞いてすらいなかったので無視もなにもなかったのだ。
そんなフーラに興味のないクルサがフーラを生かしている理由は気まぐれでなく、実験……練習のためだった。
「さて頑張りますかね、アルに追い付くため今から苦手なあの練習しますか。ちょうどいい的もあるし」
クルサは足元の地面に魔方陣が現れ、それはすぐに消えた。
「設置完了、次行こ」
クルサは路地裏を駆けた。
●
「くそっくそくそくそくそっ!なぜ当たらない、矮小で脆弱な人間風情が!」
フーラは土埃の中で動き続ける影に魔法を放ち続けていた。
当然フーラはそれが分身だとは気づいていない。
分身も漫画のように実体がちゃんとあるわけではない。時にそこに有り、時にそこにいない、幻覚のような分身、
――――クルサオリジナル炎闇合成魔法《影楼》
限定的にしか使えない魔法。相手に見えにくく、それでも相手から影が見えるような状況でないといけない。だから開発したクルサも使うタイミングがなく埋もれていた魔法だった。
だからフーラのような典型的な自己中キャラによく効いている。血が頭に昇りすぎているフーラにひいまだに実体と分身の区別がついていなかった。
だから周りの魔法の反応に気がつかず、屋根に立っているクルサにも気がつかなかったのだ。
「あらら?まだやってるどんだけよ、ここまでくると驚きを通り越して尊敬の域ね。……そのおかげでこちらとしてはいろいろ楽だったけど」
パンッ!と胸の前で手を合わせ魔力のコントロールに全神経を傾け集中し始めた。
「魔方陣起動、《ファイヤーバード》」
路地裏にフーラを囲むようにでこぼこの円で設置されていった魔方陣から、炎で形作られた予定だった鳥が無数に羽ばたき飛び出した。だがそれは綺麗に羽ばたく鳥でなく、空に昇る鳥の形をした鏃のようだった。
「ありゃりゃムッズ、あの時アルに見せてもらったのかなりすごいことだったんだ。後でコツ聞こ」
クルサが言ったあの時とは、この前クルサがアルフェーナの別荘に泊まった時、部屋で喋っているときに見せてもらった水でできた鳥を羽ばたかせて部屋のなかを飛び回らせる、魔法コントロールの練習であった。
その時クルサは内心、自分でもやれば出来るとたかをくくっていたのだが、実際にやってみてそれがどれだけ難しいことか実感していた。
「形保つのもキツいのに、さらに羽ばたかせて飛び回らせるなんてムリムリ…………はぁーこんなことならサボらずコントロール取り組んでおけばよかったよ」
クルサは溜め息を着き、項垂れた。
そうこうしていると、さすがに相手も気がついたようだ。
「なっ!?なんだこの矢印は、魔法……なのか?いったい誰が」
「…………気がつくのおっそ」
「貴様なぜそこに!?貴様は今こっちの土埃の……」
先程まで目を向けていた土埃に振り返ったフーラは固まった。見ると土埃は風で晴れており、そこには黒い人型の揺らめく影がたっていた。
「な……なんだあれは」
「私の分身、あれには実体ほぼないから攻撃なんて意味ないのに……それにちゃんと確認すればわかるのに」
「…………」
フーラはなにも言えなかった。こんなことに気がつけなかった己の不甲斐なさ、こんな子供にいいように踊らされていた怒り、その怒りのせいで起こした失敗とそれを招いた自分の愚かしさに失望していた。
「わ……わたしはどれほどおろかな……」
「落ち込んでいると悪いけどいかせてもらうから」
返事を待たずクルサは鏃と化した《ファイヤーバード》達をフーラに突撃させた。
「くっ」
流石と言うべきか、フーラはさっきの愚鈍な状態とはうって変わって危なげながらも《ファイヤーバード》達を避け出した。
最初は危なかったものの途中からは余裕を持って交わし出した。それは当然だった、なぜなら普通の鳥のように空中を泳ぐように飛ぶのと違い、クルサのは言ってしまえば鳥というより矢、ただまっすぐに飛んでくるだけなのだから。
「くっそー、当たんないなぁ。でもやっと……」
ズドドドドドドドドドドンッ!!
「がはっ!」
フーラに火の鳥が命中した。背後から。
「曲げれるようになったよ」
背後からの攻撃はクルサのコントロールによってだ。フーラは前のを避け続け後ろに大量にいった。普通ならそこで消えるのだが、クルサは後ろに向かったものを重点的に操作していた。だから正面からの攻撃は単調にまっすぐだったのだ。そちらに割く余裕がなかったのだから。
「貴様……いつの間に」
「教えなーい」
そこからはただの児戯と変わらなかった。
フーラは背後からを警戒し過ぎて正面からを着弾しだし、避けるのも動きが大きくなりだし魔力消費が増加、そのためすぐに息がきれ疲れてフラフラになりだした途端に、全弾着弾しだした。
最初クルサは下から上に《ファイヤーバード》をコントロールしていたのだが、止めて、囲むようにした魔方陣から真上に飛翔させ上空で中心に、そこからは一つの大群としてフーラに降り注いだ。
それはさしずめ、断罪の柱がフーラを呑み込んだように捉えられる光景だった。
そしてそれは呑み込まれた本人、フーラからしても同じだった。
「ああ……私は神を怒られたのか……」
呆然と焦燥とした顔でそれを見ていたフーラが最後にそんなことを呟いた。
魔方陣の魔力が尽きるまで続いたそれは数分してら消えた。
フーラが浮いていた場所には、体が黒く炭化して事切れていた人型があった。仮にも上級悪魔だったためなまじ耐えてしまったのだろう。
だがその人型は風が吹いた瞬間、炭となって風にのっていった。
「あ~あ、終わっちゃった。楽しめなかったけど暇は潰せたかな……次いこ…………あっちかな?」
クルサは戦闘音が木霊する方向に走り出した。
次回
ベレンナとプラートの戦闘
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