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転生

少し重いです。

ふといつも通りに咲苗は目を覚まし、そして疑問に思った。

(……あれ?私死んだはずじゃ……助かったの?いやあり得ない、あれでは確実に死んでいる。そうじゃなきゃおかしい。それだとこの状況に説明がつかないけど)

咲苗は何度も何度も考えるが、状況がやはりわからなかったが二つきずいたことがあった。一つ目は今自分が目を閉じていることだ。二つ目は声が出ないことだ。いや正確には声はでるが、ちゃんとした言葉を話せないと言うことだ。

(出せる言葉は、う~とか、あ~とか見たいね。まるで赤ちゃんか脳の障害者見たいね。……障害者?)

そこで咲苗はある可能性を思った。あの時本当に助かったが寝たきりになってしまい、尚且つ障害者になってしまったのではないかと。

だがその判断はすぐに消えることになった。なぜならいきなり自分の顔半分に添えるように手を当てられたからだ。そしてその手により瞼も開かれた。

目の前に広がったのは見知らぬ女性のとても心配するような顔だった。

訳がわからず手を伸ばすと、見たことのない小さな手が女性に伸びていくのが見えた。だがその手は咲苗の命令通りに動いているのがわかった。

そして咲苗が全ての情報を精査し、たどり着いた答えが、

(私、赤ちゃんになったんだ。……たしかこれっていわゆる転生ってやつよね?……っと、その前に生まれたばかりの赤ちゃんの仕事をしないとね)

咲苗が思考している間にも、女性の顔は優れず、だんだんと暗い陰が射してった。だから築いた。咲苗が赤ちゃんとしてやらなくてはいけないことをしていないことを。だから大声で、

「ふっ、ふぇええええ!ふぇえええええええええ!!ふぇえええええぁあええ!!!」

泣いた。

すると、咲苗を覗きこんでいた女性の顔がみるみる明るくなっていった。

(これでなんとかなったかな。それにしても転生か)

咲苗は泣き声をあげながら、これからどうなっていくのか考えることにした。

テンプレのように咲苗は公爵令嬢に転生した。そこで咲苗は一つ疑問を覚えた。

出産時、母親である女性の他に人が居なかったのだ。普通医師や手伝いが何人かいるものだと思った。

だがそれはすぐに分かることとなった。どうやら母親は平民の出みたく、公爵家で厄介者のように扱われているようだ。

公爵家息子の父親はこの時出張に行かされていたようだった。()公爵家としては出産を失敗してほしかったようで、廊下を抱かれて移動するとき、メイド達に腫れ物を扱うような目で見られていた。

遅くなったが、咲苗は新しい名前、アルフェーナ・フィン・グラビトンとなった。アルガルネーゼ王国のグラビトン公爵家の長女である。そして、この世界は俗に言う剣と魔法のファンタジーの世界のようだ。

咲苗改めアルフェーナはこれから暗殺があるのではないかと、びくびくしていた。だけどそれは起きなかった。父親が帰ってきたから……と言いたいが違う。母親とアルフェーナは家から放り出されたようだ、金貨を持たせて。

父親に言わなくていいのかと思ったのだが、母親は至極当然のような顔をしていたので、こちらでは普通の事なんだとわかった。

それから母親とアルフェーナは公爵家が納める都市の貧民街、いわゆるスラムで過ごしていくことになった。

母親は慣れた手付きで家を見つけ、家具などを揃えていった。はっきり言って順調に過ごしていた。三年間は。

アルフェーナはスラムを歩いていた。母親譲りの白銀の髪、端正な顔立ち、深い藍色の瞳文句のつけようのない美幼女になっていた。最近になって一人での外出が出きるようになっていたので、アルフェーナはよく家の近くを歩いていた。

その日も歩いたあと家に戻ると、母親とフードを被った人物が話していた。

「ーなとっ!………~ふざけ~っ!ーーーなさい!」

話し合いではなく口論をしているのがわかったアルフェーナは、家に入らず様子を伺った。そして目撃してしまった。

「……あっ」

フードの人物に母親が斬られるのを。血を吹き出しながら倒れていくのを。

フードの人物はまるで最初からそれが目的だったとばかりに母親を斬り、すぐさま家を出ていった。

アルフェーナは物陰に隠れてやり過ごすと、急いで家に入った。

「お母さん!」

「アル……フェー……ナ……よかっ…た無事で」

アルフェーナは母親の脇に膝立ちになり、最近練習している回復魔法を掛けた。

だがそんな事は意味がないことだとわかっていた。なぜなら足元に広がっている血だまりだ。明らかに致死量を超えているのがわかった。

「アル…………そんなことまで……出きるようになって、嬉しいわ」

母親は血に濡れた手をアルフェーナの頬に当てた。

アルフェーナは尚回復魔法を掛け続けていた。涙を滝のように流して。

「もういいのよ。もういい……危ない! ひぐっ!」

母親が魔法を止めさせようとしたとき、いつの間にか部屋に入ってきていたフードの人物がアルフェーナに剣を振り下ろしていたのだ。

母親はとっさに気付き、アルフェーナに覆い被さり剣から守った。だがそれで母親は生き絶えた。ただでさえ重症のところに攻撃を受けたのだ、生きていられるわけがないのだ。

「お…かあ……さん?」

「ちっ、めんどくせぇことしやがって。……ぺっ」

フードの人物ー声からして男は死んだ母親に悪態を付きながら唾を吐きかけた。そしてアルフェーナを殺すべく剣を振り上げた。

だがここでフード男はミスを犯した。アルフェーナの今の心境を計りかねた事と、アルフェーナの実力を見余ったことだ。

剣を振り上げた直後、その手は動かなくなった。正確には家の中が氷で覆われ、体が動けなくなってしまったのだ。

「なっ……なにが起こって……ひっ!」

突然の変化に戸惑い、辺りを見渡しながら氷の発生地点を見たフード男は悲鳴を上げた。そこには半分の髪を母親の血で濡らし、憤怒の表情でフード男を睨み付ける子供……いや鬼がいたのだ。

「……ない……さない……ゆるさない……ゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない」

「やっやめてく」

これまで幾度もの修羅場を潜り抜けてきたフード男だが、アルフェーナの顔に怯えた……のではなく、その体から溢れる異常な魔力量に怯えたのだ。

「ゆるさない!!凍てつきやがれ!《コキュートス》」

アルフェーナは全魔力を解き放ち、家どころか半径50mを凍らせ、巨大な氷柱を作った。幸いにもフード男が人避けの結界を張っていたため周囲に人はいなく、死亡者はフード男と母親の二人だけだった。

アルフェーナは魔力を使いきりその場に倒れた。数分後すぐさま目を覚ました。アルフェーナはゆっくりと体を起こそうとするも、重くなった母親を退けることが出来なかった。いやしなかった。

だけどこのままでは寒さで死んしまうので傷付けないようにゆっくりと横たえると、まず凍っているフード男に、

「《アイスソード》」

氷で作った剣を当て粉々に粉砕した。続いて暴走して行った周りの惨状を、元に戻した。ただし水が大量に残ってしまったが。

「お母さん」

アルフェーナは母親に近づき頬に手を添えた。帰ってくるのは先程の凍えるような冷たさではなく、人が死んだとわかる重く悲しい冷たさだった。

「……ごめんね。でもこれからもずっと一緒だよ。《アイスボックス》《スライス》」

アルフェーナは氷の箱で母親を囲うと、箱の中に氷の刃を出現させると、箱の中を高速回転させて、母親をミンチ……以上、液体になるまで切り刻んだ。

液体にした母親を今度は一滴残らず集めて球体にした。氷の箱は解除、血の球体を手元に寄せると、凍らせた。

そして球体を抱えてこの場を立ち去ることにした。

「うっ……ひくっ……あぁああ……うあぁああ……」

球体を持って泣きながら走った。どこに行くかわからず、ただ走り続けた。

前世の記憶を持つ分、目の前で母親が死んだショックと、怒りに任せて人を殺したことにたいしてのショックで、アルフェーナは押し潰れそうになっていた。

だから走った。それを振り払うように、なにも考えたくなくて、でもそんな逃げを無くすために母親を……球体にして抱えたのだ。

いつの間にか足は止まり、その場に立ち尽くしていた。空を見上げると、曇っており、いまにも雨が降りそうだった……いや降りだした。

雨に濡れてもアルフェーナはその場を動こうとはしなかった。どんなに土砂降りに変化しようとも動かず、雨に当たり続けた。

端から見れば何か大切な物が無くなりどうしようもなくなり、諦めた人のように見えるが、アルフェーナの眼は何も諦めておらず、むしろなにかを決め決意した眼をしていた。

「生まれ変わっても一緒だよ、《輪廻着色》」

アルフェーナは球体を融解させ液体に戻すと、血が着いている髪の方を球体で包むと、球体を髪に取り込ませていった。

髪の半分が紅くなるのではなく後ろ側に三本の線が入ったように染まった。これでこの紅色は酸化して黒ずむことも無くなったが、永遠に……以上に来世もそのまた来世もずっと取れなくなった。先程の使った魔法はそういう能力なのだ。

「転生したからってゆっくりと努力していたからこうなったんだ。だからもう胡座をかかない、全部手に入れて、私がもう奪われないように、これからはずっと奪い続ける、邪魔するのは……消していこ…………あは……あはは……あははははは」

アルフェーナは笑いながら力強く歩きだした。ここから、加藤咲苗は前世の名前を捨て、アルフェーナ・フィン・グラビトンとして生きていくと決めた。





まだまだ幼少期続きます

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