武闘大会 本戦 決勝戦
決勝戦お楽しみに
「逃げずによく来たね君達!しかもどちらも女性とはなんと言う運命のイタズラ。でも許して欲しい女性に手をあげる罪を、僕はどうしても勝たないといけないからね」
アルフェーナと処刑人―――ベレンナが入場して来ると、成金野郎が変にキザなセリフを吐いてきた。
アルフェーナは気にも止めなかったが、ベレンナは怒気を混ぜながら睨んでいた。どうやらトーナメントが仕組まれていたことに気付いているようだった。
アルフェーナは話が早いと喜びながら、今もなにやらしゃべっている成金野郎を無視して、ベレンナに魔力通信を行った。
『あーあー、聞こえる?聞こえたら返事して』
『!?!なっなにものだ!どうやって私に魔力通信を行った!』
『?どうやってって普通に』
『普通にだと!?そんなことあるか、魔道具もなくどうやって私の魔力を解析したのだ、というかお前は誰だ!』
そうなのだ、本来魔力通信を行うには先に専用魔道具を使い通信者の魔力を測定、そこからさらにたくさんの工程を挟んでやっと行えるものなのだ。最近は通信用魔道具があるので廃れてきているのだが、秘匿通信によく使われている。
『それに関しては後で話すわ。それよりも貴女に聞きたいのだけど、どれくらい?』
『な、なにがだ』
『本調子までどれくらい休めばいいの』
『本調子だと?万全なら三十分、即席なら三分だが』
『なら三分で、それまで私は遊んでいるから』
『ちょっ、ちょっとま……』
聞く前に通信を遮断すると、すでに試合は始まっており成金野郎がベレンナに向かっている最中だった。
アルフェーナは成金野郎も速く走り、ベレンナに到達前に横に並んだ。成金野郎は横に現れたアルフェーナに驚いていると、回し蹴りを叩き込まれ、くの字に曲がります吹き飛んだ。
「がはっ!……お嬢ちゃん、なんのまねだいこんなことして」
「いえね、私この人と一時的に同盟を組んだので、同盟相手を守っただけです。すこしの間だけですが」
「!!それは参ったね、こちらの計画が破綻してしまうのでね!」
成金野郎は剣を上段に構えアルフェーナに振り下ろした。アルフェーナはそれを半身になり避けると、足を剣の腹に当て上に向けるとそれを足場に飛び上がり、成金野郎の顎に膝蹴りを叩き込んだ。
「がぽっ!」
綺麗な放物線を描きながら成金野郎は飛んだ。アルフェーナは空中の成金野郎に魔法を放った。
「《エアショット》」
《エアボール》にスピードを上げた程度の魔法を数発当てた。そのおかげどうなのか、成金野郎は顔面から墜落した。
「げぷしっ」
「…………ぷっ、カッコ悪」
「ぐっ!……ぎざまぁ……」
アルフェーナの嘲笑に成金野郎が顔を真っ赤にして睨み付けてきた。
「ぶっ殺してやる!」
成金野郎は手にしたロングソードを水平に振り抜いた。狙いはアルフェーナの首のようだったので、アルフェーナはしゃがんで回避、通りすぎたのを見計らい、足払いでスッ転ばせた。成金野郎は肩から落ちる前に手を着いた、体重が乗ったところに足を掛けて払うとまたも顔面から落ちた。
今度の失態には観客席からも笑い声が聞こえるほどだった。
「よかったわね、これで明日から人気者よ」
「このガキがぁああーー!」
なりふり構わず顔面に突きをしてきたので、顔を傾けて避けると伸びた腕を取り、強制的に立たせた。
「え?」
「そ~れっ!」
立されたことに戸惑っている成金野郎の股間をアルフェーナはおもいっきり蹴り上げた。
「~~~っ!!」
成金野郎は悶絶してしまい蹴られたところを押さえて、今度は顔を真っ青に座り込んでしまった。
「えっと、これからどうしよっかな」
アルフェーナは予想よりいたぶれなく手を後ろで組ながら不満顔をしていた。試合開始からそれほどたっていないのでベレンナもまだ回復中だった。暇なアルフェーナは先程から気になっていたことを審査官に聞きに行った。
「あのーすみません」
「っ!は…はい、何ですかアアチ選手」
「あの男性の名前教えてもらっていいですか?」
「えっと、試合前に言ったのですが……聞いてない?……わかりました、彼の名前はネロト選手です」
「あっそうなんですか。ありがとうございます」
アルフェーナは成金野郎―――ネロトの名前をようやく聞くことができてとても満足していた。
だがそれを聞いていたネロトにしたら、名前を覚えていないと捉えておらず、わざと忘れていると捉えてしまった。
「き、きさま……こ、この俺を……貴族である俺を……バカにするのかぁあっ!」
ひどく高いプライドに響いてしまったようだ。悪い意味で。だからしょうがなかったのだ、そのあとにしてしまった、
「…………?」
人差し指を顎に当て、なにもわからない顔をして首を傾けたことでネロトのプライドと理性を繋いでいた糸が、ブチッと切れてしまったのは。変えようのない運命だったのだ。アルフェーナ風に言うなら、必然だったなのだろう。
「もう……いい……大会なんぞもう知るか、俺はきさまをこの場で殺してやる」
表情が抜け落ちた顔でアルフェーナを睨んだネロトは、淡々と殺害宣言を投げつけ、先程とは打って変わった精練された動きで、身体強化と斬撃強化を同時に行い素早く接近してきた。
(あら?まるで別人みたいな動きね。本気を出したのか、はたまたキレた方が頭が冷えて強いのか……多分後者の方だと思うけど、これですこしは楽しめるかしら)
アルフェーナは笑いながら分析している最中斬撃が放たれてきていた。それをギリギリで避け続けさらに挑発しようとしていたのだが、ネロトは乗らずただ斬る、斬る、斬ると繰り返していった。
「あらあらつまらないこと、もう少し楽しみなさいなっ!……と」
軽口を叩いているといきなり大降りで振られたのでバックステップで距離をとった。
「黙れ、きさまと話すことなどひとつもない。すぐに死ぬ者と話す趣味など俺にはない」
「そう?……でもそうかしらね、そろそろいい頃合いかしら」
「なに?…………だがそれよりもきさま、またしても、またしても俺を無視しやがって!」
アルフェーナがいきなり時計を見て何かを確認していることにいぶかしむが、ネロトはそんな疑問より死合中に余所見をされたことに激しい怒りが沸いてきていた。
「死して詫びれ!」
「嫌です」
ネロトが剣を上段から振り下ろす前にアルフェーナは接近すると、腹部にアッパーを叩き込むと、悶絶して下がってきた顔の側面にに回し蹴りを直撃させぶっ飛ばした。
「……がはっ!……ぐあっ」
「いい加減退場してください」
リングアウト間際にネロトは剣をストッパーになんとか踏みとどまったが、いつの間にか接近していたアルフェーナにだめ押しに蹴られ退場した。
「さてと、決めていた時間ぴったり過ぎたので始めましょう」
「ははっ、そうだな時間と約束は守らないとな」
先程まで回復に努めて……いや努めさせられていたベレンナが苦笑しつつ立ち上がり、レイピアとエストックを両手に構えた。
「その二つって予備?でもそれだとすぐに終わっちゃうよ、腰のやつ使って欲しいなぁ」
「すまないね、こいつはまだ抜けないんだ。あぁ物理的にでなく場所的に、ここだとちとまずい。予備ですまないが我慢してくれ」
「う~ん仕方ないか、ならがんばってねお姉さんっ!」
言うや否やアルフェーナはベレンナに視認できる程度の速さで接近した。
「っ!はぁっ!」
ベレンナは間合いに入るないなや眼に向けてレイピアの刺突を放つが、アルフェーナはなんなく避け腕を捕ろうとするも横からエストックの横凪ぎを後方に飛びかわした。飛んだため滞空時間が出来てしまい着地時にレイピアとエストックが迫って来たので、空中を蹴り一回転してベレンナの背後に着地した。
「え?うそ……かはっ」
「止まっちゃダメだよお姉さん」
目の前で起きた驚愕なことに硬直してしまったベレンナの無防備な脇腹に斜めからの踵落としを見舞った。
踵落としを受けた甲冑は凹み、ベレンナは数メートル飛んだ。追撃も出来たのだがアルフェーナはあえてせず待つことにした。ふらつきながらも立ち上がったベレンナは悔しげに呟いた。
「ぐっ、やるわねホントに、私では勝てないわよ」
「わかりませんよ?やってみたら偶然……いえ必然的に勝てるかも」
(そんなことは絶対あり得ないって自分自身が一番わかっているのでしょ?アアチ選手)
その証拠のように応答したアルフェーナの顔には不安、動揺といった感情は現れていなかった。
「お姉さん、そろそろ本気……というか現在出せる全力で来てもらえますか?」
「…………」
アルフェーナの発言にベレンナは悔しげに顔をしかめた。なぜならベレンナも思っていたからだ、全力は出せても本気は出せないと。
全力と本気は似ているようで違う、全力は今現在の最大の力を発揮する事、本気は万全からの出し惜しみをしないこと、とベレンナ及び達人級の人物達が考えていたことだった。その領域に到達していない者達にはわからないことなのだが。もちろんアルフェーナはわかる分類だった。
「そう、なら全力で……行かせてもらうわっ!」
瞬時に身体強化と脚力強化を行いアルフェーナに突っ込むと、到達前にレイピアの刺突を行い、そのまま手放した。
「ひゅ~……面白い、返すねこれ」
アルフェーナは口笛を吹きつつ投擲?されたレイピアを指で挟んで受け止め、再投擲した。
それを首を傾けて避け、エストックを下から顔に向けて斬り上げた。それを体を反らして避けると脚で顎にアッパーカットをくらわせた。
「っ!……小さな爆発 《スモールボム》」
どうやら意識が飛びかけていたベレンナは朦朧とするなか爆発魔法で牽制して距離を開けようとした。その目論みは上手いこと成功した。
爆発に警戒する芝居で距離をとったアルフェーナ、そのせいかターゲットを失った《スモールボム》はその場で爆発。ベレンナは吹き飛ばされたのだがその衝撃で意識を失わずに済んだ。
「かはっ……けほっ、けほっ……」
「う~ん全力……には違いないけど、私的にはやっぱりそれ、使って欲しいな……使えないなら、次の一撃で決めるから」
最後にすこしの怒気をはらませアルフェーナは告げた。ベレンナはその怒気を当てられ、頬を冷や汗が伝い、甲冑の下には鳥肌が浮かんだ。
「それはそれは……でもどれだけ言っても使えないんだ。だから……私の最高の一撃を貴女に与えよう」
ベレンナにはわかっていた。今から行う一撃では絶対に勝てないと、腰の剣を使えばあるいは勝てるかもしれないと、だけどベレンナは使わない約束したあのときまで。
「負けるなんていつぶりかしら……我が願いに交応せよ水の大精霊」
自称気味に笑ったのち、足元から水が吹き上がるなかベレンナは詠唱を始めた。
「その一撃岩を砕き、道を作り、後に川となる、人の願いを込めて突き進む、先に待つ大海目指して、砕き貫け!《ウンディーネミューラフルール》」
吹き上がった水はベレンナの頭上で巨大な水球となっていき、詠唱終了と同時にアルフェーナに向かって流れていく……はずだったのだが、ベレンナは魔力で強引に現状維持を続けながら次の詠唱を始めた。
「我が力、無駄をなくして圧縮され剣と融合されたし、さすれば止めるもの現れず願いは叶う《コンプラストソードエンチャント》」
詠唱の合間から圧縮されだした水球はとうとう拳大までの大きさになった。水球はレイピアとエストックの間に来るとその二つに吸収された。すると刀身が青く光ったのち激流が纏われた。
「ふぅー……手加減できないから……死んだらごめんねっ!」
ベレンナが突撃してきた。刀身が触れた地面が抉られる。
「はぁああああああああああああっ!」
ベレンナが打てる最大の攻撃であった。普通ならば大怪我所死んでもおかしくなかったのだ。……普通ならば。
「少しみくびっていました。なので私も礼儀をもってやらせていただきます」
アルフェーナは今大会初めて驚愕した顔になったが、すぐに真剣な顔つきになった。そして左手の平をベレンナに向けて詠唱した。
「作りを理解し強固な繋がりとしろ《パルツ》」
「ここで体に強化魔法?」
アルフェーナは体全体に強化魔法を使った。そのせいで体の魔力回廊が輝き浮かび上がっていた。
「どうなっても知らないわよ!ぜぇあっ!」
ベレンナは肩口をレイピアの切っ先で貫いた……と思ったのだか手応えがなく、目の前に立っているアルフェーナがどうして透明になって消えていくのかわからなかった。
「!??!!??!……何がどうなって」
「忠告よ、わからないからってその場で立ち尽くすのはだめ、わからなくなったらすぐに前後左右のどちらかに跳ばないといけないわよ」
「かっ……」
いつの間にか背後に回っていたアルフェーナがベレンナの首筋に手刀を当て昏倒させた。剣からは魔法が霧散した。これにより勝者が決定した。
「勝者、アアチ選手!」
その時今までにない歓声が鳴り響いた。
●
「さっすがアル、あそこまで魅せてから倒すなんて粋なことするわね」
「もう少し褒めてもいいわよ?」
試合後担架で運ばれる二人を見ながらアルフェーナは控え室に戻り、そこにやって来たクルサと今回のこと話し合っていた。
「あぁ~今日で大会終わりか、ねぇ後で遊びに行ってもいい?」
「えぇいいわよ。私からも招待状を出しておくわ……もっとも今日はまだこれからだけど」
アルフェーナは最後クルサに聞こえないように呟いた。
「うん?なにかいった」
「いいえ、それよりそろそろ終了式になるから私は行くわ」
「あっ……そうね、わかったわそれじゃまた後で」
「また後で」
二人は手を振って別れた。
それからアルフェーナは闘技場出入り口にやって来ると、すでに何名かいた。全員が不服顔で睨んでいたが綺麗に無視した。その態度に苛立った一人の男が絡んできた。
「おい嬢ちゃん、あいつらにいったいどれだけ貢いだんだ?黙っててやるから俺達にも寄越せよ」
やはりと言うべきか、アルフェーナの勝利が賄賂によるものだと決めつけていた。そして口止め料として払うように迫ってきていた。
「……くだらない、負けたのはあなた達自身が悪いんでしょ。そんな価値観私に押し付けないで」
「てめぇ調子に乗るな!」
男はいきなり殴りかかってきた。後ろから迫る拳を見ないで避け、通りすぎた腕を取り推進力を上手くいなして簡易的な一本背負いを行った。
「うわぁああああっ!……がふっ」
「黙っていろ」
背中から叩きつけると踵で顔を踏み抜いた。
アルフェーナの容赦のなさに他の選手が後退すると、廊下から見知ったもとい試合した者と試合を見た者が現れた。
「止めなさいあなた達、この子は実力で優勝を手にしたのよ、言い掛かりはみっともないわ」
「そうだぜ、俺を倒したこいつを正面から打ち破った奴に、てめぇら程度で勝てるかよ」
現れてのはベレンナと、準決勝でベレンナと戦った武闘神官が現れた。
「さっきぶり、頚大丈夫?」
「えぇ大丈夫よ。後遺症もなし、手加減してくれたんでしょ?ありがとう」
「初めましてだな。俺はプラート、一応こんな格好だが神官についている」
「知ってる、というかそれ見ればわかる」
「こいつか……だがそれでもいい洞察力だと思うがな……まぁよろしく」
武闘神官―――プラートは手を伸ばし握手を求めた。
「そう、よろしく」
アルフェーナは握手に応じた。
「……あの男は来ていないの?あの成金野郎は」
「え、……あぁ確か医務室で膝を抱えていたぞ?貴女にやられたのがかなりのショックだったようだ」
「そう、軟弱だったのね……これから大変だけどよろくくね」
「?……あぁよろしく」
「授賞式に緊張してんのか?まぁ気楽に行けよ」
ベレンナとプラートはアルフェーナの最後の言葉がこれから起きることに対してのことなどわからなかった。
アルフェーナはそれだけ伝えるとそのまま入場していった。入場に対し拍手が降り注いできた。
選手達は表彰台の前に整列した。
「諸君、今大会をおおいに盛り上げてくれたことに感謝する。それではこれより授賞式をおこな……」
ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオッンンン!!!
王都城門から爆発音が響いてきた。
「なっ……いったい何が……」
ドゴォオオオオッン!……ドゴォオオオオオッン!……ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオッンンン!!!
続けて三連続で爆発音が響いてきた。
「いったい何が起きていやがる!」
「わかんないわよ!でも四方から爆発音が聞こえたってことは……」
「たっ大変です!王都城門が四つ全部が爆発により破壊されました!」
通信結晶から連絡を受けた委員会員が大声で叫んだ。それにより会場内が騒がしくなってきた。
「パニックにならないだけいい方ね……ねぇお姉さんとお兄さん方、これからどうした方がいいかしら?」
アルフェーナは後ろで状況の把握に努めていたベレンナとプラートに聞いた。
「そうね、私は城門に向かって敵を倒した方がいいと思うけど」
「賛成だ、その方が俺に合っている」
「そう、ならいこ……」
「あらあら?もっと喚いて嘆いて混乱してくださらないと私は困ってしまいます」
謙遜響くなか、その声は大きくなかったが誰の耳にも聞こえた。声をした方を見ると、空中に佇む神官服姿の女性がいた。怪訝そうな口調でプラートが訪ねた。
「なにもんだてめぇ」
「ふふっ、あなた方に名乗る名などありませんが……これだけ言っておきます。あれは私達が起こしたこととだけ」
「てめぇ!」
女性に対してプラートが怒鳴った。
「少しやり過ぎよ?【邪神教】の聖女様?」
「っ!?……ちっ」
いつの間にか跳び上がっていたアルフェーナが女性―――聖女に向かいエストックで斬りかかっていた。
「あれ?あれって……え、えぇいつの間にか」
それはベレンナからいつの間にか抜き取っていたエストックだった。
「貴女、ふふっ楽しめそうね。また会いましょ」
「…………」
聖女はそのまま飛び去っていた。それをアルフェーナはそれをめんどくさそうに見続けていた。
次回王都騒動




