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武闘大会子供用(後編)

指が乗りました。

― 魔力を高めた二人が激突した。

「《ボルケーノバースト》!」

「《アイシクルウォール・イプシロン》、《フライ》」

クルサが観客などお構いなしに膨大なマグマの奔流(ほんりゅう)を放つも、アルフェーナが分厚い氷の壁を五つ出現させたが、マグマには勝てず蒸発、ほんの僅かにしか遅らせることが出来なかったが、その僅かな時間に空中移動の《フライ》で退避した。

「逃がすかぁあああああああああ!!」

クルサは指をタクトのように上に振り、突き進むだけのマグマを上に昇らせていった。 その結果、噴火の如くマグマが周囲に散乱して逃げ場を失くしていったのだが、アルフェーナは風による促進でスピードをだしてマグマ群を避けながら抜けていった。

「《スモーク》」

アルフェーナは煙幕で姿を隠した。

「ちっ……《フォトンアロー・サウザンド》」

クルサの手から光の矢が束になった極太のレーザーが煙幕に向けて放たれた。当たる直前、煙幕の四方から何か飛び出してのだが、クルサが驚異的な瞬発力(しゅんぱつりょく)で矢の束を四方に分けた。出た直前だったものは煙幕に包まれたままだったが、殺到した矢に貫かれた。

クルサが確認しようと目線を左右に向けた瞬間、四方の煙幕からでなく中心の煙幕からアルフェーナが猛スピードで突っ込んできた。

「なっ!?」

これにはクルサも驚愕(きょうがく)で数瞬固まってしまった。それもそのはずだった、もしクルサが矢を四方に分けなかったらアルフェーナに直撃していたということだったからだ。そのせいでアルフェーナの間近えの接近を許してしまった。

「なんつう綱渡りな!」

奇策(きさく)でしょ?」

奇策が成功したアルフェーナは珍しく笑っていた。それはこれで勝てるから…………ではなくまだまだ楽しめることにたいしてだった。

「アタシは素手もいけるのよ!」

奇遇(きぐう)ね、私もなの」

「「《フィジカルブースト》《アクセル・ブレイン》」」

二人は同時に同じ魔法を唱えた直後、手をクロスして突っ込むアルフェーナと防御態勢(ぼうぎょたいせい)のクルサが激突した。軍配はアルフェーナに上がった。激突でクルサをぶっ飛ばしたアルフェーナは着地するないなや、またもクルサに突進、もう一度突進でクルサを場外に落とそうとしたのだがそれは叶わなかった。クルサがすでに立っていたからだ。

「おらぁあっ!」

立ち上がっていたクルサは突進するアルフェーナにかかと落としを決めようとするも、アルフェーナが振り下ろされる脚を掴み、体の横に流しながら更に自身も腕に力を込め掴んだ脚を振り下ろし、加速(かそく)を付けて顔面に膝蹴りを叩き込んだ。

「ぶべぇへっ!」

「シッ!」

鼻血を吹き出しながら宙に浮いたクルサに対し、アルフェーナは止めとばかりにもう一度顔面に向かって、今度は回し蹴り叩き込んだ。クルサは後頭部(こうとうぶ)からタイルに突っ込んだ。

誰もがアルフェーナの勝利を確信した、だがその考えはすぐに消えた。クルサが何事もなかったかのように飛び起きたからだ。

「上手に受け身を取ったのね。上手いこと」

「アタシも初めて鼻血を出したわ。ありがとっ!……シッ!」

これから会話が続くと思っていた矢先、アルフェーナは至近距離からノーモーションでパンチを放った。クルサも会話の途中で()け反りながらかわし、カウンターでアッパーをするも、上半身を横にずらし避けられた。

クルサはバックステップで逃れようとしたとき、

「――――――」

「……え、ホント?」

「ホントよ、なんなら次の攻撃にそれを証明するような、最大魔法を放つわ。貴方もそうして?」

「…………上等よ。でも最大を撃つなら詠唱が必要よ?そっちはいいの」

「あら、私も今回は詠唱が必要なの。奇遇ね」

「ホントね」

うふふ、あははと二人は笑い出した。一般の観客は一時の休憩(きゅうけい)時に先程の興奮をゆっくり冷ましていたが、魔法にある程度精通しているものから上の者は真っ青になっていた。原因はもちろんアルフェーナとクルサである。

二人は笑いながら会話しているなか、大気中の魔力、先程の魔法で出た余剰(よじょう)魔力や過剰(かじょう)魔力を集めていた。それもものすごい勢いで。

「はは、マジかよ。あんな量を制御してるって言うのかよ、まだ10歳の少女が二人も」

「あんなの少女じゃねえよ。……化け物の一種、竜が化けてるって言われた方が真実に聞こえるぜ」

様々な憶測(おくそく)が流れるなか、彼、彼女等はその場から離れようとしなかった。体がどれだけ危険信号を送り、避難命令を出そうとも、意地だけで残っていた。

それは当然だった。魔法の世界に身を置く者としてはなんとしても見届けたかったのだ。多分個人に置ける世界最高峰の魔力貯蔵と制御、その膨大な魔力でおこなわれるまさしく最強の魔法をその眼で見るまでは。

誰もが固唾(かたず)を飲んでから見守るなか、当の闘技場で向かい合う二人はたわいもない会話を続けていた。だがそれも終わりに向かっていた。

「そろそろオッケーかしら」

「そのようね。まだ心許(こころもと)ないけど大丈夫でしょ」

「なら、撃つのは一発、自身の最大火力でどちらも詠唱必要でよかったかしら」

「いいわよ、付け加えるなら、死んだら自己責任ってことで」

「それくらいならいいわ。では……始めましょ」

「「《魔力増幅回路起動》!《第1・第2・第3回路まで解除》」」

二人は大きく後方に飛び下がると、自身に施した増幅術式を起動、そのため二人の皮膚に紋章が浮かび上がり、服に隠れて見えないが体全体を包んだ。二人は回路によって倍以上に増幅した魔力を収束させ始め、遂に最強の扉を開く言葉を(つむ)ぎ出した。

「我との契約によりて力を貸せ灼熱(しゃくねつ)の王」

「我との契約によりて力を貸せ氷結(ひょうけつ)の王」

奇しくも、二人の魔法は対軍(たいぐん)完全殲滅(かんぜんせんめつ)用戦略魔法(ようせんりゃくまほう)であり、それは個人でなく普通三十人強の宮廷(きゅうてい)魔導師(まどうし)が一週間魔方陣に魔力を注ぎ込み続けてやっと一発撃つことができる超級クラスの魔法なのだが、

「来い!全てを焼き尽くす果てなき灼熱よ、我が俄然(がぜん)を紅く染めよ、」

「来い!全てを停滞させる時殺しの氷結よ、藍白(あいはく)に世界を彩れ、」

二人の周りはどちらも危険地帯の情景に変化していた。

クルサの周りは熱風(ねっぷう)吹き荒れる獄炎地帯(ごくえんちたい)へ、アルフェーナの周りは白く染まる極寒地帯(ごっかんちたい)に変化していた。

クルサは赤々と燃え、手の周りに陽炎(かげろう)が起きるほどの熱量を溜めている魔力を集めてをいた。

「終わりなき(あか)、消えることない(あか)、天空を変える(あか)奔流(ほんりゅう)

アルフェーナは自身以外の周りを凍結(とうけつ)させ、手の周りに青白い魔力集めていた。

「溶けぬ白、呑み込む白銀(はくぎん)、触れし者に終わりを告げる(あお)の世界」

会場の緊迫が最高潮に達し、会場には視認できるほどの魔力が渦巻いていた。そこまで行けば誰しもが危険であると認識できる、だが誰も逃げない、逃げたくない、この結末を見届けるまでは。

そんななか二人は、溜めに溜めた力を言霊と共に解放した。

「《灼熱に(カーディナル)染まる天空(エディンスノール)》!」

「《時を止める(エンドゼロ)永久氷河(ブリザードネイアス)》!」

クルサの側からは灼熱が、アルフェーナの側からは氷結が相手側を飲み込もうと暴威(ぼうい)を振るっていた。

実力は……拮抗していた。威力はそれを高めていたクルサが勝っていたものの、制御、精密なコントロールに関してはアルフェーナが勝っていたため、絶妙(ぜつみょう)なバランスで成り立っていた。……成り立っていたのだ。バランスは徐々に傾いていったのだ……アルフェーナの方へ。

確かに実力は拮抗していた、威力だけならクルサが勝っていた、だけどただ放出するだけではダメだったのだ。クルサは放出するだけなため、外側に広がっていった、だけどアルフェーナは制御しコントロールして広がるだけの灼熱の内側を突破していったのだ。そして相性も悪かった。

「そんな!?アタシの魔法は超高温で(ちり)すら残さないのに加え、付属効果(ふぞくこうか)の加速で物質を加速破壊(かそくはかい)できるのよ!なんで押し負けるのよ!」

そうなのだ、魔法にはどんなに下位の魔法にも属性特性(ぞくせいとくせい)と呼ばれる付属効果が付いている。それは簡単なものだがそれがあるため、魔法になるとも言われている。

クルサが得意とする炎系統(ほのおけいとう)の付属効果は加速、対象を加速させるというもののため、下位魔法だと全く意味がないのだが、上位、最上位にいくと対象に強制加速(きょうせいかそく)が起こり、細胞が死滅(しめつ)するという現象が起きる。そして発動させたこの魔法の加速は、近くに入るだけでも体が加速破壊出来る程なのだ。けれど、

「残念ね、相性の問題よ。貴女が加速なら、私は停滞なの、止まった物を加速させたいなら先に動かさないといけないのよ。だけど動かす力の前にその力も止まっていってしまったら、勝つなんて無理なのよ。そもそも拮抗し押し返そうとしている事態がスゴいことなんだから誇っていいわよ」

アルフェーナの魔法は氷系統(こおりけいとう)、その付属効果は停滞、今回の魔法は氷でなく停滞で構築されていると言っても過言でないものだった。だからアルフェーナはクルサに、拮抗しただけどもスゴいと称賛したのだ。なぜなら付属効果を付属でなく主力(メイン)にしていたのだ、付属を付属として使ったクルサに元々勝ち目など無かったのだ。それでも、今この会話中にすらまだ呑み込まれず、更にはほんの僅かににでも押し返したりしているのが異常なのだ。

「これを打ち破りたいなら破壊属性の魔法をぶつけないといけないわよ」

「それはちょっとめんどくさいわね!今から練習しても追い付けるか半々、いえ3分の1くらいの確率じゃない!」

「それもそうね、それよりもう終わりね」

「くそぉおおおおおお!!こうなったら明日付き合いなさい!」

「話かわったわねいきなり………まぁ、午後は駄目だけど午前はいいわよ」

「やくそくよぉおおおおおおおおおおお!!」

クルサは叫びながら氷結に呑まれ吹き飛んだ。

避難していた審査官が急いで駆け寄った。クルサは……打ち身があり、転がったため眼を回しているがそれよりそれ以外なんともなかった。

「勝者アアチ選手!これにより、武闘大会子供用、優勝者はアアチ選手に決定しました!」

会場に優勝のアナウンスが響くも誰も何も言うことなく、静寂が包むなか、どこからか拍手が響き、それは次第に大きくなっていった。

「今回大激闘を繰り広げたアアチ選手、クルサ選手に今一度大きな拍手を!」

会場の外に響き渡るくらいの拍手の音によって、今回の武闘大会子供用は閉会したのだった。







これからもよろしくです

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