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25.第一の祠 ②

「ようやく最深部ね」


おどろおどろしい彫刻が施された石門に二つの灯台。

いかにもこの先、ボスがいますよっていう雰囲気。


「準備はいいかしら?」


「はい」


「ええ」


二人の返事を確認したあと、私は門に手を掛ける。


「今度こそ援護お願いしますね」


「任せなさい」


重苦しい見た目と刃裏腹に、片手でポンっと押すだけで扉は開いた。

開いたのと同時にユウジは駆ける。

廊下の内装と同じく石でできた空間。

それはとても広く、例えるなら学校にある体育館ほどだった。

室内には物がなく、天井部に魔石でできた照明があるだけだった。


「なにも……いない?」


彼が部屋の中央に踊りでたというのにも関わらず、攻撃される気配がない。


「もっとよく確認して!」


現在、私とユリは門の一歩手前で待機している。

これは安全を考慮しての事だ。

もしもユウジが襲われ予想以上の戦力に遭遇し、撤退する事になった場合は容易に逃げられるようにだ。

だが敵は現れない。


「魔眼にも反応はないわね。多分安全よ」


ユウジに続いて私達も室内に入る。

三人が中央に到着した、その時だった。


「扉が!?」


勢い良く閉まる扉。すぐに開閉を試みようにもびくともしない。

さらには天井から声が聞こえてくる。


「次代の巫女よ、よくぞ参られた。我は試練なり。始まりの巫女に任された使命、今果たさんとする。さあ、健闘するがよい」


天井にある魔石が、細かな粒子となって物質を構成する。

球体であったそれは形を変え、円柱に二本の触手を生やした魔物に変わり果てた。

陶器のように白く艶やかな表面。民族、神話、歴史、多種多様な題材をモチーフとして描かれた彫刻。芸術品のようなそれは、私達が討たねばならない試練の魔物だった。


「散開ッ!」


試練の魔物が目の前に降り立ったと同時に触手が襲い掛かる。

私達はこれを回避し、緊急時に備えるためのフォーメーションを組む。

剣士であるユウジを先頭に、後方では私とユリが控える三角形型。

魔物は油断を与えず、次々と触手を波のように繰り出す。


「く、一撃一撃が重いッ」


ユウジは何度も襲い掛かる触手を刀で受け流す。


「お姉さま!」


「ちょっと待ってて!」


ここで彼を守ろうと土壁を作るのは愚作だ。触手の動きは直線ではなく指向性を持っている。すなわち、壁を作ったとしてもそれをすり抜けて攻撃される。それだけではなく、彼の退路や進路を阻んでしまうデメリットが存在する。

では、どうするのが最善か。


「――なっ」


魔眼が捉える試練の魔物に反応あり。

頭の中で策を練っていたその時、魔物のオーラが揺らめいた。


「魔法!」


魔法陣が展開し、そこから無数の氷刃が発射される。

そこらの魔物が使う魔法とは比べ物にならない。

魔法陣展開から発射まで一秒未満。これは魔導士の中でもかなり優秀な部類だ。

あらかじめ動作が見えていた私はこれを土壁で防ぐ。


「うそでしょ」


手は抜いていないつもりだったが、氷牙を防いだ土壁には大きな亀裂が入っていた。

ほぼノータイム発射かつ高威力の魔法を使い、ユウジが舌を巻くほどの触手。

ちょっと強すぎじゃない?


「ユウジ! 撤退よ!」


「扉が開かないのに撤退ってどこへですか!」


「いいから引きなさい!」


触手に向かって土壁を飛ばして彼へ撤退の手助けをする。

私達は室内の端へ避難する事に成功する。


「やっぱりね」


「どういう事ですか?」


「恐らく、あの触手には届かない範囲が存在する。ほらあのようにね」


あんなに煩わしく動いていた触手は動きを止め、本体の中へと収納される。


「ではどのように攻撃するのですか?」


「それは魔法の出番よ。ここから狙い撃ちしてボコボコ」


「え、もしかして僕の仕事これで終わり!?」


「ええそうよ」


今の私、すげえいい笑顔してると思う。


「あの魔物の攻撃方法は触手と魔法。それも氷魔法のみ。べらぼうに早くて強い雷魔法を撃ってさえこなければ私達のか――ユリッ防御!」


魔力を過剰投入しつつも魔法陣を展開し、土壁を作成する。

それに合わせてユリも水壁を出現させるが、あちらの方が早かった。


「――ッ!」


試練の魔物が魔法陣を発現させたのとほぼ同時に、私の土壁に衝撃が加わる。

土壁は爆散し、貫通してきた雷光が丁度のタイミングで水壁と衝突する。


「お姉さまのサンドウォールを受けてこの威力ですか!?」


やっとのことで、試練の魔物が放ったライトニングは消滅する。


「怪我はない?」


「大丈夫です。しかしお姉さまの魔法を破るなんて……」


すかさず砂嵐を起こし、視界を遮る。


「また撃ってくるかもしれないからユリはウォーターウォールを。ユウジは待機」


「はい」


「わかりました」


これで時間が稼げるはず。

さっきから計算が狂い続けている。

あの魔物の厄介なところは攻撃方法の豊富さだ。

魔法と触手の両方を相手するのは難しい。だから距離をとり、触手を封じた。

これで敵は氷牙しか放てず、私が守ってユリが遠距離攻撃をすれば勝てるはずだった。


「来るわ!」


魔眼は敵の姿を捉えたままで、登場した時から一歩も動いていない。

さらに視界は砂嵐によって悪く、敵の位置が把握できるこちらが完全に有利だ。

だが。


「グッ――」


二発目の雷光。

威力は変わらず、土壁を貫通して水壁に防がれる。


「どうやら、あの魔物はこちらが見えているみたいね」


恐らく魔眼と同類の能力。

でなければこんな悪条件の中で真っ直ぐこちらを狙えるはずがない。

しかし何とも不可解だ。

何故あの魔物はライトニングが使えるのにも関わらず氷牙を放ったのか。

何故連続で魔法を撃ってこないのか。

ライトニングの有用性は私達の様子を見れば一目瞭然。

だがそれをしてこない。

氷牙は様子見? ライトニングが本命? 魔法の発動にはクールタイムが必要?

まてまて、冷静になるんだ私。

これは巫女の為の試練。


「来るわ!」


三発目のライトニング。これも容易く私の土壁を突破してくる。

やはりそうだ。あの魔物は魔法を発動させるのにクールタイムがある。

体感にして60秒。

であれば、この間に攻撃すればいい。


「ユリ、念のためにそのままウォーターウォールを発動しておいて」


「かしこまりました!」


「ライトニング!」


お返しとばかりに雷光をお見舞いする。

この魔法を受けて無事だった魔物なんて存在しない。結構魔力食うからね。無事で済んでもらったら困る。

しかし、私の期待は無下に終わる。


「む、無傷……!?」


直線を描くと思われていたライトニングは予想に反し、試練の魔物に直撃する寸前で歪曲して壁をえぐる。

魔法がコントロールを無視するなんて……こんな現象は見たことがない。

脳裏に浮かぶのは、魔法無効化の文字。


「だとしたらまずいわね……来るわ!」


四発目のライトニング。威力は一定。増加や減少も起きない。当然土壁は破壊される。


「アザミさん、どうしますか?」


「そうね。うかつに近づけない、魔法が効かない。となると……はぁ、認めたくないわね」


「ふっ任せてくださいよ」


はい、今日一でキモイの入りましたー。

でも妹のユリは微笑んでいますー。

だから見せ場を作りたくなかったんですー。


「触手は僕が相手します! お二人は魔法を!」


「わかりました!」


「はいよ」


案の定触手は先行するユウジの下へ。


「魔法くるわ!」


魔眼でオーラを確認しつつ、展開した魔法陣を判断。今度は雷魔法ではなく氷魔法。


「ユリ!」


「はい!」


彼女は水壁を呼び出し、飛んで来た氷牙を防ぐ。

触手は剣士を狙い、魔法は魔導士を狙う。

触手を封じられればライトニングを使用する。


魔眼で見える魔物の魔力量は変わらない。おそらく無限。

さらには魔法無効。

うーん、試練なんだから何かしらのテーマがあるはず。

となると今の行動は正解のはず。

不正解だったら触手と魔法で、後衛を狙い撃ちするはずだからね。

さすがに試練の魔物もそこまで馬鹿じゃないと思う。

ゴブリンぐらいの知能を持つ魔物なら必ずする戦法。

防ぐ準備をしていた私が馬鹿みたいじゃないか。

防御に徹しながら接近し、私とユリが室内の中央に達した時だった。


「色が……変わった!?」


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