Ⅰ バイト探し
入りが長くなってしまった……
真新しいスーツに身を包み、柳城春は面接会場となっている部屋の待合室で自分の番を待っていた。
大学が決まり、一人暮らしが決まり、柳城春はバイトを探していた。せっかくバイトをするならこれからの自分にとって役立つものが良いと思って探していたところ、偶然目に留まったものがあった。
“情報処理・通信バイト”
未経験者歓迎!
これピッタリじゃん!勉強したい事も沢山あるし!
情報工学科。これが春の大学で所属するところである。デジタル化の進む現代には必要不可欠な学問である。
そのため、このバイトであれば自分の技術を十分活かしていけるのでは、と考えたっけかであった。
早速ホームページに載っている電話番号に電話かけた。面接を要するとの事で現在に至る。
髪の色派手だったかな〜と数日前に明るいブラウンにしたパーマのかかった髪をいじっていた。
バイト内容が専門のため、応募者も少ないようで、春のほかに数人いるだけだった。
「4番の方ー」
「はいっ!」
部屋に入ると前に1人の男性が座っていた。歳は30後半ぐらいで前髪を掻き上げたいかにも出来る男というような人が座っていた。
「椅子にお掛けください。」
「っはい」
ヤバイ、見惚れてた。この人と働けたら楽しいだろうな。
「履歴書に沿って進めていくね。そのあと2、3点質問するだけだからリラックスして答えてね」
「じゃあ、まず名前から……」
15分ぐらい経っただろうか。履歴書に書いてある事を順番に丁寧に確認していった。
「君は城西大学の情報科に入るか、このバイトにはいいね」
「はい、自分のスキルアップに繋げられたらと思ってます」
「では、最後に質問していいかな?リラックスして答えてね。わからなかったら、分かりませんでいいから。」
その言葉に少なからずも身構えてしまった。
答えられなかったら落ちるよね?情報系の専門の問題だったらどうしよう…
「では…この建物に入ってからこの部屋に来るまでに窓はいくつあった?」
「え?…は?…」
「わからなかったらわからないでいいんだよ」
いや、なんでやねん。と心の中で一応ツッコミをしておく。情報系関係ないし。
そもそも窓の数って…
「えーっと覚えてない…よね。…今までの人で答えられた人居ないしな」
後半なんか聴こえましたけど、答えられる人居なかったんかい!
「無理する事ないよ。じゃあ次の問題行こうか。」
「29です。」
「え?」
「窓の数、29です。建物の入り口から入って右側の空間に2つ。そのまま奥に続く廊下に10。階段の途中に2つ。待合室に来るまでの廊下に10。待合室に5。計29です。」
「………」
あれ?変なこと言った?面接官だまちゃったよ。あれ?
「君は全て覚えて居たのか?」
「えぇ、まぁ。小さい頃からどうでもいいところまで覚えてしまって…勉強面にもいかせれられれば良いんですけど…」
小さいころから他の人からしたらどうでもいいところに目がいく。これはもう一種の才能じゃないのかと春は自己完結している。
たまたま同じ電車に乗った人の癖だったり、情景だったり…
ただ、勉強であまり役に立った事は無い。
「…そうか」
今の間なんですか!?なんか考えてるみたいだし
「じゃあ、最後にもう一つ質問いいかな?」
「はい」
「君は…………………………………………」
面接は無事終わった。最後の質問の意図は全くわからなかったが、多分大丈夫だろう。
この時はまだ知らなかった。このバイトが……であることを
次は面接官サイド行きます