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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
8章 隣人
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争いを砕く者

 目まぐるしい情報が頭の中を飛び交っている。


 まるで自分が大きな水の中に溶けて消えていくような感覚。全ての境界が曖昧になり、自分すら消えて世界と一つになるような錯覚をロギルは感じていた。


 しかし、何かが体の上を撫でる度に思い出していく。それは、情報だ。自身がロギル・グレイラッドとして見てきた端々の情報がそれが何なのかを教えてくれる。


 共に戦ってきた者。或いは、制約が強く未だに力に触れきれていない者。自身と約束によって結ばれている者。


 その全てが柔らかに自身の皮膚を撫でる様に体を駆け巡って繋がっていく。その中でロギルは、溶け消える自分を思い出すように自己を固めて、自分自身を壊さずにその場所に全てを纏って顕現した。


「ロギるん?」


「へぇ~~、面白いじゃない」


 弾丸をセットし終えたリオーシュが笑う。ロギルの居た空間には、甲殻を纏った青い人型の物体が浮いていた。


 黒かった羽も青く染まり、一見すると鎧を纏った人のように見えるその何かは、目を見開くと遥か先にいる巨大な生物を見つめた。


「行けるの、ロギル?」


「……仕事を始めよう」


 ロギルの腕に青いムチが出現する。そして羽を羽ばたかせると、二枚であった羽が四枚に増えた。


『行こう、ご主人様!!』


「ああ!!」


 羽を一度羽ばたかせてロギルは飛ぶ。風の抵抗を感じさせない速度でロギルは、巨人目掛けて飛行を始めた。


「よし、それじゃあこっちも、始めるとしますか!!」


 リオーシュがシリンダーに指を添えて回す。その瞬間、銃を中心にして何かが歪み始めた。


「これは」


 物体に変化はない。しかし、リオーシュの目に見える銃の形は、歪に曲がってぶれているように見えた。だが、長年培った感とリオーシュ自身が感じている全てを総合してリオーシュは考える。その結果、目に見える物を信じることをやめて、リオーシュは目を閉じて作業に集中することにした。


 その顔に、一筋の汗と笑みを浮かべながら。


「動いた」


 リオーシュの弾の融合が始まった直後、それまで魔力を吸うことに必死になっていた存在がこちらを向いた。空間に更に穴を開けて、そこに新たな吸引口を伸ばしながら巨人はこちらに向かって巨大な腕を伸ばそうとしている。


 本能で察しているのだ。今作られている物が、自身を貫ける物だと。それ故に無理をしてでも攻撃をすることを決めた。


 だが、自身を保つ構成物質を極力減らしたくないが為に更に別の空間に複数の穴を開けてしまったことで周りの景色に異常が生じ始める。


「なんだ!?」


「大地が震えて!!」


「あの空の穴のせいでしょうね。無理やりにところ構わずこの場所に穴を開けて空間を繋げてしまった結果、空間の境界が曖昧になり始めているのだと思います」


「つまりどういうことだ!?」


「仕切りで区切られた別々のものが、仕切りが薄くなったことで一つの空間に収まろうとしているのです。ここと、あの先の空間。その場所が一つに繋がろうとしているのだと私は思います」


「そしたらどうなるんだ!?」


「大地は残っているかもしれませんが、生物が残っている保証はありません!!なんとしても早めに止める必要があります!!」


「つまり、リーダーの作ってる一発にかけるしかないってことか?」


「そういうことです!!」


 巨人の腕が迫る。だが、その腕が何かに勢いよく弾かれた。ロギルが腕を弾き、そのまま空間へと伸びている吸引口へと到達すると、その尽くに打撃を加えて変形させていく。


 その瞬間、大地を揺らすような悲鳴が巨人の口から聞こえた。


 折れ曲がった吸引口を直し、更に複数の腕を体の周りに生やすことでロギルへと巨人は、対処を始める。しかし、ロギルへと巨人は攻撃を加えることが出来ないでいた。圧倒的にロギルの飛行速度が早く、攻撃を当てることが出来ない故に。


『やはり、創世の地を乗せる程の硬さは合ってもその全てが完璧と言う訳ではない。かつて海を支配すると言われた者がいたように。空を支配すると言われた者がいたように、この巨人には、欠けているものがある。全知全能ではない。ならば、如何様にでも対処のしようがあるというもの』


「破壊は出来ないようだが。形を保ったまま曲げるのであれば今の俺達ならば可能なようだな」


『アマナさんの力は、散々見せていただきましたからね。根源的にとはいかずとも、この程度であれば』


「流石だ、先生!!」


 地面が崩壊を始める。引き合わされた空間の穴目掛けて地面が引っ張られ始めたのだ。大地が上へと穴目掛けて落ち始める。


 その一つ一つが引力から解放された順に空へと浮いていく。その現象は、この世界に開けられた穴の数同時に起き始めた。


 世界が境界が曖昧になることで引き裂かれていく。その存在を繋げ始める。


「……まだかかるのか?」


「待つしかありません。私達には、到底真似出来ないことを、リオーシュは、一人でやっているのです」


「賭けるしかないか」


「ええ」


 一度は、ロギルの対処にその労力の殆どを回していた巨人がリオーシュ達を見つめた。


 ロギルを捉えることが出来ない。だが、リオーシュの行動は、止めなければならない。そう思った巨人は、ロギルへの対処をそのままに、体の一部を射出してリオーシュ達へと攻撃を始めた。


「おっと!!」


「飛び道具ですか」


「往生際が悪いな!!」


 ノーマン、レドリア、アマナの三人がそれぞれの武器で飛んでくる巨大な槍のような物体を弾いていく。


 まるで雨のように槍は飛んで来るが、三人の立ち回りには、それらを完璧に対処出来るだけのチームワークがあった。


「おっしゃ、このまま」


 その瞬間、リオーシュの立っている地面が浮き始める。流され、空へと徐々に引っ張られて行く。


「ちっ!!」


 レシアが魔法で結界を作り、地面の一部を切り取って引っ張られていく地表部分から切り離した。結界の中でリオーシュは、唯一人周りに何が起きても自分のやるべき事を続ける。


 銃の歪みが消えていく。歪な形であったものが、まるで最初から用意されていたパズルのように一つの形に収まっていく。


 その時、カチリと音がして銃のシリンダーが一瞬輝いた。


「……出来た」


「出来たんですね!!」


 不安定に空へと消えていく大地の上を、結界を操作してレシアは、懸命に巻き込まれて向こうの世界に引き釣り込まれないように勤めていた。


 その間も飛んでくる巨大な槍を、ノーマン達三人は、払い除け続けている。


 ロギルも、これ以上の巨大化を防ぐ為に全ての吸引口を破壊して回っていた。そんな中で、静かに目標目掛けてリオーシュは、銃を構える。


「……全ての平和を乱す者に永遠の死を下せ。降臨せよ、ラグナレク・ブレイカードラゴン」


 リオーシュがトリガーを引いた瞬間、眩い光を放って一発の銃弾が空へと放たれた。







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