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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
8章 隣人
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壁越

「……もうちょっと丁寧に下ろせ」


「いや、ここまで背負ってきたんだからこれぐらい許せよ」


 ふらつく足でアマナは、立ち上がろうとする。しかし、完全には立てないのか四つん這いの状態でその動きを止めた。


「二人だけで来たのか?レドリアは?」


 ロギルは、アマナに手を貸して立ち上がらせる。ロギルの言葉にノーマンは、自身がやって来た方角を見つめた。


「もうちょっとしたら来るんじゃないか?俺が早すぎたからな」


「私は、分かれてから見てないが、誰かレドリアを見たのか?」


 アマナの言葉にノーマンとロギルが顔を見合わせる。


「俺は、見たぞ。最後に遠距離攻撃をしていた敵の残りの討伐を任せて別れた」


「俺も見たな。外壁にいる敵を、切ってたら助けに来てくれた。あと、何故か日焼けしていた」


「ああ、そうだな。何故かちょっと肌が褐色になっていた。いつの間に焼いたんだろうか」


 そんな話をしていると一台のバイクがやって来て止まる。皆が視線を向けるとそこには、上半身裸で肌が所々焼けたレドリアが乗っていた。


「お待たせ致しました」


「それで、なんで肌が焼けてるんだ?」


「恥ずかしながら敵の攻撃を筋肉で直接受けてしまったので、このような色に」


「お前の筋肉まじで凄いな」


「焼ける程度で済むのか。しかも髪はなくなっていないな。どういう理屈だ?」


「受け方の問題でしょうかね」


「腕の筋肉で頭をかばった形か。なるほど、それなら納得だ」


「それで、この後はどうするのでしょうか?」


 ロギルを支えに立っているアマナに、ダンタリオンは視線を向けている。そして近づくと、アマナに向かって手をかざした。


「……何をする」


「いえ、実は貴方の力には、前から興味がありましてね。観察させて頂いておりました。今、貴方は力を使いすぎて消耗している。そんな所では、ありませんか?」


「ああ、そうだが」


「その気だるさ。私が治せるといったら、どうします?」


「先生、そんなことが可能なのですか?」


 ロギルの言葉にダンタリオンは、頷く。


「ええ。アマナさんの疲れは、実は彼女自身の力が一時的に供給を制限されている状態であるから起きているものです。しかし、どうやらその制限は、アマナさんが力を得るためにした契約の範囲外で行われていることのようですね」


「なんだと?」


「力を与える約束はしたが、無制限にとはいかないということのようですが、これは良くないかと。何かを奪ったなら、契約はそのまま履行されなければならない。ですから、私が枷を外しましょう。ただ、外しっぱなしも危険だと思うので一時的にですがね」


「出来るのか?」


「ええ、さんざん見させて頂きましたので、ここをこのように」


「おお?」


 ダンタリオンが空中で指を振る。その瞬間、アマナがロギルの手を離して自身の力で自立した。


「お~~、体が軽い。力もまだまだ使える感じだ」


「一時間程にしておきました。さて、最後の準備を始めましょう」


「最後の準備?」


 リオーシュが首をかしげる。


「言ったはずです。位相の違う空間とこちら側から破壊してやる必要があると。それを最も効率的に成すには、二つを攻撃できる性質を持った攻撃を生み出すのが最適な攻撃となるでしょう」


「……私に、融合しろって言うの」


「話が早くて助かります」


 リオーシュは、ポケットから弾丸を取り出す。そして、自分以外の5人にその弾丸を一発ずつ投げて渡した。


「どうせなら皆の力をありったけ込めてやりましょう。その方がいい威力が出るわ」


「いえ、恐らく融合を開始した段階であちらもこちらを攻撃してくるでしょう。その攻撃を凌ぐ力は、残しておいてください」


「ふ~~ん、じゃあそれで」


「これ、どうやるんだ?」


「魔力を込めればいいわよ。それでなんとかなるでしょ」


「えっと、こうか?」


 ノーマンがそう言って弾丸を握って力を込めると、弾丸が輝き始める。他の三人も同じ容量で己の魔力を弾丸に込めた。


「おっと、ロギル様は、暫しお待ちを」


「えっ、はい」


 動きを止めたロギルにダンタリオンは、跪いてロギルを見上げる。


「ロギル様、命をお賭けになる覚悟、ございますでしょうか?」


 仮面越しの瞳でロギルをダンタリオンは、真っ直ぐに見つめる。その視線にロギルは、目を逸らさずにただ答えた。


「ああ」


「では、こちらの準備を始めましょう」


 ダンタリオンが立ち上がって手を自身の頭に添える。


「ベルゼビュート様、聞こえますでしょうか?」


『やぁ、その声はダンタリオン君だね。久しぶりだね、元気にしてるかい?』


「ええ。早速で申し訳ないのですが、ロギル様の願いを聞いて頂きたい」


『ほぉ、それは面白い提案だね。こちらに空いた次元の穴と何か関係はあったりするのかな?』


「はい。お聞き届け頂ければこちらで対処致します。如何でしょうか?」


『まずは、内容を聞こう。何を僕にさせる気なのかな?』


「ロギル様の枷を外して頂きたい」


『……大雑把過ぎるね。どういう風にかな?』


「我々とより深く繋がり、その力の全てを我が物として扱える程にして頂きたい」


『それは、ロギル君に人間を辞めさせるということかな?』


 ベルゼビュートのその言葉には、重い圧力が加わっていた気がした。しかしダンタリオンは、止まらずに話を続ける。


「ベルゼビュート様、人間には人間の強みがございますが、その可能性も一足飛びでは、越えられぬようにされているものがございます」


『そうだね』


「その可能性の壁を、今壊すお力添えを頂きたい。それだけでございます」


『なるほど。ロギル君の力を伸ばせと、そう言いたいのだね』


「おっしゃる通りです」


『分かった。ただ僕がやるのではなくバアル君に任せようじゃないか。僕がする程のことでもなさそうだからね』


「……分かりました」


『では、ロギル君に伝えたまえ。うっかり人を辞めてしまわないように気をつけたまえと』


「承知致しました。では、失礼致します」


 ダンタリオンは、話が終わるとロギル見つめた。


「よろしいですね?」


「ああ、聞こえていたよ先生。俺は、先生を信じる」


「ありがとうございます」


 ダンタリオンが頭を下げる。その瞬間、ロギルの体がいきなり力を失って地面に倒れた。


「ロギるん!!」


「待って下さい。今は、邪魔をしてはいけません。始まっているのです。力の変質が」


 僅か5秒間、地面に突っ伏していたロギルは、ゆっくりと立ち上がると姿勢を正して巨人を見つめた。


「行きましょう」


「はい」


 ダンタリオンと、ソフィーの姿が消える。そして手に持っていた弾丸に魔力を込めるとロギルは、リオーシュに投げ渡した。


「それじゃあ、あれを何とかするとしましょうか」


「ああ」


 ソフィーの羽を部分召喚してロギルが空へと浮き上がる。そして、その体が光を放って変質を始めた。






 



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