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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
8章 隣人
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黒獣

 雨音の中、一拍おいて走り出す。


 胸に込み上げる怒りに確信を覚えながらも、ロギルは冷静に速度を考えながら目の前の男へと駆け出した。


 敢えて羽を使っての加速を使わず、先にアマナの攻撃が男へと到達することを見越して速度を緩める。


 思惑通り、ロギルの背後からアマナの放った矢が男目掛けて降り注ぐ。


 その矢の雨を、男は腕で受け止めて弾いた。


「……」


 男の腕には、黒い装甲のような物がついている。一見するとそれは、腕全体を覆うグローブのようにも見えた。


 しかし、何処かその形状は生々しく、装備品とは違う別の何かを感じさせる。


 ロギルは、そんな違和感を感じながらも部分召喚を行い、いつも通りにナーガの牙から分泌される毒を男目掛けて放った。


 飛散した毒が、雨を蒸発させながら空気中を進み男へと降り注ぐ。アマナの攻撃を受けて動きが一瞬遅れた男に毒は、確実に命中するはずだった。しかし男は、先程までの動きからは、想像も出来ない速さで後ろへと飛び、毒を回避する。


「ふむ」


「……」


 男が懐へと素早く手を入れて銃を取り出す。そのままロギル目掛けて男は、銃を連射した。


 ロギルは、ソフィーの尻尾を手に呼び出すと器用に振るって全ての弾丸を弾き飛ばしていく。そして、男へとムチを扱うようにソフィーの尻尾を叩き込もうとした瞬間、男が踏み込んできた。


 一瞬で懐へとロギルは、男に入られる。いつ振りかぶったのかさえ分からない拳が、ロギルの腹部を貫こうとしていた。


 だが、ロギルの表情は崩れない。その一瞬、ロギルの腹部が光る。そして、その光から腕に部分召喚されていたナーガの頭が飛び出した。


「!?」


 敢えて避けられることを考慮してナーガは、牙を突き立てには行かず、毒を振りまくことに頭を振り抜いて専念する。


 目論見通り男は、あの状況からでも反応して素早く攻撃を中止すると後ろへと下がった。しかし、とっさの反応故に飛ぶ距離が小さい。


 飛散したナーガの毒が、男の体の一部に付着する。


 神さえ殺すとさえ言われたナーガの毒。


 この世で最も威力があるのでは無いかとされるその毒は、男の体をたった数滴の毒によって溶かし、破壊するはずだった。


 しかし、男の体の肉体は、ナーガの毒を受けても煙を上げはすれど、溶けることがない。


「……まさか、神鉄か?」


 神鉄。ナーガ自身がその毒を扱っていて溶けないでいられるように、神をも殺す毒にも溶かすことが出来ない物が有る。


 それは、神鉄と言われ自然界に存在し得ない元素で出来ている神が作った最も有り得ない金属だ。


 その結合力には、最強の毒をもってしても破壊不可能なほどの強さがあり、更に柔軟で破壊後も再結合しやすい性質を持っている。


 存在が有り得ないと人間になら思われる金属であった。


「ちっ!!」


 ロギルは、真っ先に部分召喚を使うと片腕にレヴィアタンの頭を縮小して呼び出し熱線を男目掛けて放つ。


 熱線は、男へと直撃してそのマントを吹き飛ばした。しかし、男が熱線を受け止めた腕を大きく開くと熱線が弾かれて霧散する。


 ロギルは、一度熱線の放出を止めてアマナのいる方向へと飛び下がった。そして、マントの消えた男を観察する。


 熱線で周囲の雨が蒸発した煙の中、男が、いや、化け物が姿を現した。


 それは二足歩行をする黒い皮膚に全身を包まれた爬虫類のように見えた。


 人とは違う長めの顎と鋭い牙が存在し、皮膚の所々にはその体を守る様に甲殻がついている。


 一見すると竜にも見えるその顔の怪物は、ロギルを見つめると僅かに笑った。


「衝撃を受ければ受けるほど体が馴染んでいく。素晴らしい力だ。だが、まだまだ欲するには足りないな。もっと、もっとだ」


 怪物がロギル目掛けて一瞬で詰め寄る。その速度は、先程までよりも明らかに早い。


「ロギるん!!」


 上体を後ろに倒してギリギリ攻撃をロギルは、避ける。ロギルの顔の目の前を化け物の腕が風を切って通り抜けた瞬間、アマナが化け物目掛けて矢を放った。


 近距離でのアマナの攻撃の直撃により化け物は、僅かに吹き飛んでロギル達と距離が空く。


 その時を狙ってロギルは、無理な姿勢のまま着地点を狙って熱線を放出した。


 空中から足がついた瞬間を狙われて化け物も僅かにだが焦ったように熱線を受け止める。しかし、熱線を受けたはずの化け物の体には、傷一つなく熱線を耐え切られた。


「あの体、何処か見覚えがある」


「本当か、レヴィアさん?」


 ロギルの部分召喚したレヴィアタンがそう言う。その瞬間、ロギルの頭に見たこともない映像が現れた。


 それは、レヴィアタンが遠い昔に何かと争った記憶であった。それには、今のように熱線が効かず、ただ戦うには、力押しをするしかなかった。


「ロギル、分かるな」


「ええ、覚悟を決めます」


 制限を解除する。体制を立て直して体にロギルは力を込める。小さくされたレヴィアタンの頭は巨大になり、もう一方の腕には、レヴィアタンの巨大な尻尾をロギルは部分召喚した。


「ほう」


「……」


 笑う。この異質な光景を見ても化け物は笑っている。しかし、ロギルは化け物を睨みつけると、確かな意思を持って腕を構えた。


「お前を、殺す」


「やってみたまえ」


 巨大なレヴィアタンの頭から、制限が解除された高威力の熱線が放たれた。


 それは、ビルの屋上全体を覆い尽くし、逃げ場の無い熱量の津波となって化け物を吹き飛ばす。


「これは、たまらんな」


 規格外に思えた化け物でもこの攻撃を受けて吹き飛ぶことは避けられなかった。しかし、やはりその体には、傷一つ付いてはいない。


「やはり」


「なら、やることは一つですね」


 ロギルは、頭の部分召喚をやめると、背中にソフィーの羽を生やして一気に加速した。


(重い!!)


「我慢しろ!!」


 巨大な尻尾を呼び出したままの加速でも、その速度は衰えない。その速度に任せたまま、ロギルは尻尾を振り抜いた。化け物の肉体が、地に付く前にロギルの攻撃を受けて町の外へと飛んでいく。


 その後を追いかけて、ロギルも町の外へと飛び去った。


 



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