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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
8章 隣人
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7弾

 洞窟内に響く振動。


 それは、武器を向けた者に対しての警告か。それとも嘆きの声か。


 深い穴の底から、ゆっくりと巨大な骸が体を起こして2人の立っている道の前に立ちはだかる。


 そして、その眼球の無い眼で確かに骸骨はリオーシュを見つめると、その体の中から一斉に何かを取り出した。


「……冗談でしょ」


「あれって、銃ですよね。しかも」


「ええ、ガンナーが使う、霊獣の弾を撃ち出す用の銃」


 それが巨大な骸骨の体に植え付けられている無数の骸骨が体から取り出して構えた銃の正体であった。


 その数、数を補足するのが面倒なほど多い。向けられた銃口の数を思えば、機関銃を向けられることよりもとてもまずい状況であると言えるだろう。


「レシア、手抜き禁止で」


「はい」


 その瞬間、一斉に骸骨達が銃のトリガーを引いた。


 一つの狂いもなく弾丸が射出され、全身を骸骨で形作った騎士の霊獣が無数に射出される。


 その瞬間、レシアがリオーシュよりも一歩前に出て杖を突き出した。


「狙う必要がなくて助かります」


 レシアの杖先から、拡散するように無数の魔力で出来た光線が渦を巻いて前方へと広がっていく。


 そのレーザーを受けて、いくつかの霊獣は姿をかき消したが、後方に存在する霊獣達が力に任せて歩みを進めてくると徐々に霊獣とリオーシュ達の距離が縮まっていった。


 レシアの魔力も無限ではない。発動時が魔法の威力の元も高い地点であり、レシアが長く放てば放つ程、魔法の威力は徐々に衰えていく。


 通常の人間であればこれほどの威力を数秒維持出来るだけで驚異的であるが、レシアはそれを数分以上保たせる事が出来る。だが、常時同じ量での魔法の出力を続けるのは難しく。レシアでさえ、魔法の威力の減衰を発動を長引かせた上で抑えるのは不可能であった。


 しかし、今レシアが魔法を途切れさせた瞬間、リオーシュ達に対処不可能な数の暴力が押し寄せてくるのは明白である。


 故に、レシアは威力が少なくなっていこうとも出来るだけ魔法を維持し続けた。


「校長!!どうします!!」


「こうするのよ」


 リオーシュが、虹色に輝く弾丸を取り出して銃へとセットする。その数6発。


 そして構えると、レシアが魔法を使っているのにも関わらず銃をぶっ放した。


「世界を食らう龍の力を見よ。オーバーワールド・ドラゴン」


 6つの銃声が連続して放たれる。


 七色に光り輝く龍が、その空間に六体魔力を纏って解き放たれた。


 レシアの魔法が止むと同時に、七色の龍が洞窟内を駆け抜けて一瞬にして敵の霊獣の大群をかき消していく。


 そして最後に、巨大な骸骨目掛けて龍達は、その体に残った魔力を全てブレスとして吐き出した。


 骸骨の一部が、あっという間にブレスを受けた部分から崩れ落ちて消えていく。


 しかし、それと同時におかしなことが起きているのをリオーシュは、見た。


 崩れ去った肉体が、ブレスの攻撃がその位置から外れた瞬間に修復されていくのが見えた。


 その修復があまりにも早すぎて、壊したと言うよりは、ブレスで照らされた部分のみ向こう側が透けて見えていたかのようにすら思えるほど有り得ない回復速度であった。


 オーバーワールド・ドラゴンの攻撃は、まだ続いている。しかし、何処を攻撃しても消し飛ばしても巨大な骸骨が倒れ消える様子はない。


 リオーシュは、その光景に全身を一瞬で消しきらなければ倒せないのではないかと思考した。


「……はぁ~~。無理する必要があるってことかしら」


「手は、有るんですね?」


「事前に用意したオーバーワールド・ドラゴンの弾6つ。これ以上無いって言いたいけど、有るわよ」


 懐からリオーシュは、一発の弾丸を取り出す。その弾丸を、指で弾くと落下してくる位置に銃のシリンダーを合わせて装填した。


 その色は、紫。これまでにリオーシュが使ったことのない弾の色をしていた。


「そんな弾、ありましたっけ?」


「師匠にね、修行終わりに貰ってきたのよ。ファントムキングの弾をね。それを、研究した成果ってやつかしら」


 空いた空間にもリオーシュは、弾を詰めていく。ソーラー、ストーム、タイダルウェーブ、ライトニングストライク、メテオライト、そしてライフの弾。


 7つの弾がシリンダーへと収まると、銃を構え直してリオーシュは、シリンダーを回転させる。


「フュージョンバレット」


 7つの弾丸が一発の弾丸へと重なっていく。しかし、今までと異なりリオーシュは、融合の間顔を苦痛に歪めていた。


「大丈夫ですか?」


「あの紫が厄介でね。私に向いてないのよ。作り方が。まぁ、出来るけど」


 通常、弾作りをガンナーは事前に行う。それこそ科学の実験でもするかの様に一発ずつ丁寧に作っていくものだ。


 しかし、リオーシュはそれの短縮に成功した。彼女は、感覚で魔法を操り弾丸を補充する。


 だが、この紫の弾丸は、他人が作った物を解析し作った物であり、リオーシュでさえ無理やり性質を寄せて作った物であってその作成を感覚のみで再度行うことは難しく、まだ簡単には出来ない状態であった。


 それを、更に融合させるのである。


 リオーシュの頭の中は、今、融合していく魔力を爆発させないように必死に対処している。


 いつもより長い時間を消費して融合が終わると、リオーシュの額には大粒の汗が流れていた。


「……さて、行きましょうか」


 銃を構え直す。狙いを定めて、巨大な骸骨の顔部分へとリオーシュは、銃口を向けた。


「……」


 その瞬間、何故か巨大な骸骨の動きが止まる。そして、まるで抵抗をやめるかのように、その大きな体の腕を両脇に伸ばしてリオーシュを見つめた。


「撃って来いってことでしょうか?」


「いえ、殺して欲しいんでしょう。人の平和を守ってきたんだもの。魂が亡くなっても不服なんでしょうね。今の立場が」


 リオーシュが、トリガーに力を込める。


「あなたは悪くない。安らかに眠ると良いわ、師匠」


 一発の弾丸が、銃口から放たれる。その弾丸は、白い光を放つと真っ直ぐに骸骨の頭目掛けて飛んでいき、その外殻を貫いた。


「ワールドエンド・ドラゴン」


 リオーシュの呟きと同時に閃光が迸る。


 骸骨の頭が消し飛んで、一匹の白き龍がその場に姿を現した。


 龍の咆哮が、洞窟内に響く。その瞬間、周囲に龍から溢れ出た魔力が広がっていき一面を白く染め上げる。


 視界が覆われ、周囲の風景が一色と化した瞬間、光が晴れて存在していた巨大な骸骨がその姿を消していた。


「……帰りましょう。ロギル達が気になるわ」


「はい」


 洞窟を2人は戻って行く。


 その時、リオーシュは何かが聞こえた気がして振り返った。それは、リオーシュには、感謝の言葉のように聞こえた。


 しかし、振り返っても何もおらず、レシアは聞こえた様子もなく歩き続けているので、リオーシュもまた前を向いて歩き始めた。




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