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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
8章 隣人
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招き

 少し前、国が派遣した少数精鋭の行方不明になった村人探索チームは、大雨の中なのにも関わらずその探索効率を上げに上げていた。


「次は、上に続いてるわね。当りが近いんじゃない!?」


「やっとですか。努力の実る瞬間って良いですね。元気が湧いてきます!!」


 2人は、それなりの大声で喋っている。しかも至近距離で。


 それは何故か。


 それは、今現在二人の目の前で、大型の掘削ドリルが絶賛稼働中だからである。


「おっしゃ~~!!そのまま掘り抜け~~!!!!」


「しかし、よくこんなの思いついたわね!!」


「キリって知ってますか!?小さい穴を開ける道具です!!それを、回転させると奥に沈んでいきます!!そこに掘った物を逃がす溝を作っただけですよ!!!!」


「理屈は分かっても、こんなのすぐ作ろうと思わないでしょ!!」


「あはははは!!これが魔学の力ですよ!!さぁ、魔力痕跡が失われる前にじゃんじゃん進みますよ!!」


 そう、国が派遣した調査チームとは、リオーシュとレシア、そしてその手伝いのレギオンスタッフである。


 国家の安全に関わる重要自体であるとこの自体を報告したリオーシュに対して国は、巨額の資金を提供した。


 その結果、レシアの資材コスト度外視の掘削機開発があっという間に進み、既に有り得ない程の長距離を掘削して進んでいた。


「おっ、開けましたね!!」


「掘削機停止!!!!」


 魔力の供給がスイッチ一つで絶たれてドリルがゆっくりと止まる。


 ドリルをつけられた急開発の大型車がレシアの操作で一旦後ろへと下がり始めた。


 それに合わせて後ろで掘削された土を魔力パイプで吸い上げていた作業スタッフも一緒に後ろへと下がっていく。


 その更に後ろでは、別のスタッフ達が魔石を使って穴の補強工事をしていた。


「どうです?」


「明らかに何処かの空洞ね。ここで周囲の魔力反応は、途絶えているみたい」


 端末を片手に見ながらリオーシュは、そう言った。


「一応それの感度、今までのどれよりも広いですけど、もうちょっと周囲に寄って見てもらえます?そのほうが確実なので」


「……明らかにこっちに何かある感じね」


「穴の向こうですか?」


「……そろそろ本業の時間かしら」


 そう言ってリオーシュは、ヘルメットと保護ゴーグルを外す。


「あ、それも貴重品なんでこちらに。皆さんに持って帰ってもらいますので」


「はいはい。あと、この耳栓もね」


「まぁ、無いよりはマシって感じでしたかね」


 そう言ってレシアも耳栓とヘルメット、保護ゴーグルを外した。


「さて、行きましょうか」


「明かりは、任せて下さい」


 レシアが魔力でつけた明かりを頼りに、リオーシュ達は洞窟の中を進む。


「静かね」


「嫌な感じです」


 空洞にやけに足音が響く。他の音も聞こえない中、ただ2人は、歩みを進めた。


「……」


 腕を伸ばし、唐突にリオーシュがレシアの歩みを止めさせる。


 そして、ゆっくりと銃を構えた。


「……フレア」


 トリガーをリオーシュが引く。すると一発の銃弾が放たれて空中で大きな火の玉となり、放たれた方向目掛けて飛んでいった。


 その火の弾丸が、突然空中でかき消える。


 それを確認するとリオーシュは、別の手に握った銃を構えて素早く連射した。


 何かに銃弾が当たり、弾け飛んだような音がする。


 その音の手前、その何もないハズの空間に、突如として血の雨が降り注いだ。


「何か、居たんですか?」


「見ての通りよ。ロギルの言ってた透明になれる敵ってところかしら。一匹じゃないみたいだけどね」


「それが居るという事は」


「ここで当たりね」


 リオーシュは、そう言いながら奥を見据えている。


 透明な何かから吹き出した血で出来た水溜りは、静かに地面の窪みへと溜まっている。しかし、それが突如として何かに踏まれたかのように跳ね上がった。


「分かりやすくていいわね」


 魔力で射出した弾を瞬時に作り上げて装填する。そのままリオーシュは、流れるように何もない空間目掛けて銃弾の雨を降らせた。


 そして、また何もない空間に血の雨が吹き荒れる。


 だが、それと同時に銃弾が何かに弾かれた音が、さっきよりも近くから聞こえた気がした。


「レシア」


「はい」


 レシアが杖を構える。するとその目の前に大きな火の玉が一瞬にして構築された。


「燃えろ」


 空中に静止していた火の玉は、その言葉と同時に射出される。


 血を撒き散らしていた透明な化け物を火に巻きながら、近づいてきている何者かに巨大な火の玉は直撃した。


 燃え続ける火の玉から逃れることもせず、それはこちらへと歩いてくる。それは、人間の骨のような顔をした、全身が骨で出来た化け物であった。


「リーダー」


「ええ。しかも、銃を持ってる」


 その骸骨は、リオーシュ目掛けて銃を構える。そして、引き金を引いた。


 空中で放たれた弾丸は、魔力を収束させてその本来の形を成す。


 それは、青い炎を纏った首なしの騎士の形をしていた。


「……ファントムキング」


「知ってるんですか?」


「ええ、ちょっとね」


 リオーシュは、放たれた霊獣の弾丸がわざわざファントムキングであった事に何かのメッセージのような物を感じざる負えなかった。


 自分の師であるビブルが、自分である証とも言えるファントムキングをリオーシュの前で使ったことに自分がここに居るという事を知らせたかったのではないかと感じた。


「……少し、下がってて」


「はい」


 リオーシュは、レシアにそう言うと銃のシリンダーを回した。


「火の煌めきよ、遥かなる天より来たりて邪悪を滅せよ。ソーラードラゴン」


 言葉と共にリオーシュの銃から弾丸が放たれる。


 放たれた弾丸から炎が溢れ出し、輝ける光として収束していく。そして、熱線を放つ一体の光り輝く龍を形作った。


 首なしの騎士が、持っている武器を振り上げてソーラードラゴンを攻撃しようとする。


 しかし、それよりも早くファントムキングに飛びかかったソーラードラゴンは、ファントムキングを組み伏せるとその口から放った熱線で、その体を焼き尽くしていった。


 その熱線は、銃を持っていた骸骨の化け物も巻き込んで焼き尽くしていく。


 骨の体が燃えていく中で、骸骨の化け物が、静かにリオーシュに向かって手招きをしたのが見えた。


「……師匠」


 ソーラードラゴンが魔力を使い果たして消える。その後には、ファントムキングも、骸骨の化け物も残っては居なかった。


「進むわよ」


「は、はい」


 その後、何事もなく奥深くへと2人は進む。そして、最奥で2人は見つけた。


「……」


 そこには、大きな空間が広がっていた。それは穴だった。だが、普通の穴ではない。


 穴の中では、無数の人骨が蠢いている。まるでこの穴から出してくれと言わんばかりにリオーシュ達のいる足場目掛けて腕を振り上げて伸ばし、足掻いていた。だが、彼らはその場から動くことが出来ない。


 足が、下半身がその穴の一部になっているからだ。無数の骨で出来た巨大な穴の中に建造された体。その一部に。


「流石は、死霊王、と言ったところですか」


 そこには、無数の骨で出来た大きな体が横たわって居た。そして、その体は紛うことなく生きている。


 全身に埋め込まれた無数の骨達の動きからその巨大な体が動くということは、容易に想像が出来た。


「さて、わざわざ私を呼んだということは、ケリをつけろということですよね。師匠」


 穴に向かってリオーシュは、銃を構える。


 その瞬間、穴の中にある巨大な骨の顔に紫の大きな炎が灯った。





 

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