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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
8章 隣人
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豪腕

 雨で視界が悪い中をレドリアは、駆ける。


 町中の建物の上を次から次に飛び移ってレドリアは、敵の攻撃が飛んで来た地点目掛けて足を進めた。


「うん?」


 レドリアは、ふと前方から自分を迂回するように放たれた光の矢を見据える。


 雨で視界が悪いが、矢自体が光っている為その位置を補足することが出来た。


 その矢は、明らかに自身を狙って放たれているものではないことが、レドリアには、容易に理解できた。


「いけませんね。あくまでもアマナさん狙いということですか」


 進む足を止めはしない。


 だがレドリアは、前方の建物の壁を蹴り砕くと、その破片を、手に持って矢目掛けて投擲した。


 豪腕から放たれた壁の破片が空気を切り裂いて飛び、矢へと着弾する。すると、空中に光と共に轟音と爆発が響き渡って空間の一部を染めた。


「なるほど。範囲攻撃型の矢というわけですか。ならば、アマナさんの邪魔になるでしょうし、通すわけにいきませんね」


 走りながらレドリアは、建物の外壁をその握力と脚力を駆使してむしり取り、目についた光の矢目掛けて投げつける。


 いずれの矢も空中で爆発を起こして消えた。


 矢の爆発を後に、ある程度進むと建物が減り開けた傾斜のある場所へとレドリアは着地する。


 そこには、緩やかな坂があり緑豊かな公園へと続いていた。


 その公園の中からレドリアは、人の息遣いを感じる。


 この大雨の中、誰も来るはずのない公園でだ。


「……」


 速度を上げながらレドリアは、公園へと進んでいく。


 そして、公園の中心部付近に来ると雨を切り裂く音を感じてレドリアは、地を蹴り飛んだ。


 一拍おいてレドリアの居た地点に光の矢が飛んできて、轟音を放ち地面をえぐる。


 レドリアは、その矢の飛んできた方向目掛けて石礫を投擲したが、公園の木々に深々と石をめり込ませるだけで生物を破壊した音は聞こえなかった。


「……弱りましたね」


 レドリアは、そう言って駆け出す。


 落ち着く暇もなく、レドリアの居た地点目掛けて次から次に光の矢が四方八方から飛んできて襲いかかった。


 レドリアは、自身の脚力を駆使して爆発範囲から逃げ延びる。


 それと共に耳をすませるが、レドリアの耳には、雨の音と轟音しか聞こえなくなっていた。


 それは、相手が今まで発していた息遣いを隠したということになる。


 それがレドリアの接近を知ってか、はたまた無意識にかは分からない。だがレドリアは、縦横無尽に軌道を変えて襲い来る矢に相手の位置を特定出来ないでいた。


「……少し、荒っぽくいきますか」


 レドリアの筋肉が肥大する。その豪腕でレドリアは、公園の砂を掴むと勢いよく投げつけた。


 小さな石混じりの砂が、まるで銃弾でも放たれたかのように周囲の景色へと雨を切り裂いて飛んでいく。


 それを数度繰り返すが、矢の攻撃が止む様子はない。


「ふむ」


 それを見るとレドリアは、即座に移動方向を反転して、矢がこちら目掛けて飛んでくる方向に駆け出した。


 爆発する矢を横目に過ぎ去り、あえて危険な矢が飛び交う地点へと迫っていく。


 そしてある程度進んだ所で、矢目掛けてレドリアは、拾っていた石を投げつけた。


「ほぅ……」


 だが、今度は光の矢が爆発することはなかった。


「ここら辺ですか」


 公園の樹木を見回しながら飛びかう矢をレドリアは躱す。


 矢が地面に着弾するが爆発はしない。それを見てレドリアは、周囲の木の一本へと力を込めて拳を叩きつけた。


 あまりの衝撃に木が根元からちぎれるように裂けて上空へと舞い上がる。


 その木の上部に、明らかに自然の物ではない何かが居るのをレドリアは、見つけた。


「やっと捉えましたよ」


 地面にあった小石を足で空中へと跳ね上げて握る。そして、そのままレドリアは、木の上に居た何者か目掛けて石を投げつけた。


「……」


 黒いマントに身を包んだその何者かは、腕を小石へと向けると光の矢を、その腕先から放って破壊する。


 しかし、それは腕というよりは、筒状の銃か何かの先端部のように見えた。


 だが手先がなく中身の骨がないだけで皮膚は間違いなく人間のそれであった。


 その光景を、石を放つと同時に相手目掛けて飛んでいたレドリアは見る。


 既に一度矢を放ち迎撃して隙きができた相手目掛けて、拳を構えてレドリアは迫った。


 勢いに任せてレドリアは、拳を振り抜く。


 だが、拳が命中するはずだった相手の体は、レドリアの拳をすり抜けさせて後ろの木へとその衝撃を逃した。


「!?」


 空中に居た木の破片が、更に吹き飛ぶ。そして、レドリアの攻撃を透かした敵は、近づいているレドリア目掛けて手を構えた。


「ちっ!!」


 筋肉を膨張させてレドリアは、矢の直撃を防ぐ。


 腕にめり込んできた光の矢を、筋肉で弾くとレドリアは矢の衝撃で吹き飛んだ自身の体を捻って勢いを殺し見事に地面へと着地した。


 その目の前に、黒いマントに身を包んだ敵が舞い降りる。


「どうして私の攻撃がすり抜けたのですかね」


 レドリアは、一瞬思考を巡らせる。


 その中で、敵が自身の矢の爆発に巻き込まれることを嫌い、爆発を止めたことを思い出した。


「なるほど。そういうことですか」


 レドリアは、地面に手を這わせて砂を掴む。そして、勢い良く敵目掛けて投げつけた。


 敵が飛び退くが、広範囲に広がる砂の攻撃を躱しきれていない。


 黒いマントの節々が衝撃で破けてその体の一部をさらけ出す。


「やはり、集合体でしたか。一人の生物では、なかったということですね」


 マントの内側には、服を着ていない素肌が見えた。


 しかし、それらは人間のそれに近いが、一体ではなく複数の人間らしい部位がくっついて形を成しており、それぞれ独立した部位としてその一人に見える塊を構成していた。


「さて、全て潰させて頂くと致しますか」


 更に砂を拾ってレドリアは、投げつける。しかし、素肌を晒した瞬間、その生物の一つ一つが裏返って穴の空いている器官部分をレドリアへと向けた。


 その瞬間、敵の部位の全てから光の矢が放たれる。そして、レドリアの放った砂礫を消し去った。


「おや、先程までは手加減していらしたのですか。でしたら」


 レドリアの筋肉が膨らみ始め、その体格が巨大になっていく。


「こちらも合わせねば無作法というところでしょうかね」


 巨大化した腕で地面を掬うと、その土の塊をレドリアは握りしめた。


 その手の中で無理やり固められた土の塊がレドリアの投擲に合わせて拡散し敵を襲う。


 しかし、その破片全てすら避けることもせず光の矢を放って敵は消し去ると、更にレドリア目掛けて光の矢を連射した。


「おっと」


 手の側面で矢の方向をずらしてレドリアは全てを弾いていく。しかし、徐々に放たれていく矢の速度が増し始めた。


「くっ」


 レドリアは、地面を蹴り上げて土を舞い上げる。その土が、一瞬だが光の矢の攻撃を防いだ。


「はあ!!」


 その一瞬でレドリアは、地面を殴る。衝撃で地面が凹み、矢の射線からレドリアを外した。


 だが、矢が空中で方向を変えて直様穴の中へと降り注ぐ。


 穴の中で、幾度かの爆発が起こると、辺りから一切の音が消えて雨の音だけが聞こえた。


 レドリアの死を見届けようと一歩敵が動く。


 その瞬間、地面が宙に浮いた。


 レドリアが、地中から敵の居た場所の地面を持ち上げていた。


 そのままレドリアは、地面に腕を添えて力を込める。


「これは、躱せますかね」


 地面が反転し、地へと自身の頭が向いていることへと敵は気づいた。


 全身から光の矢を放とうとする。しかし、レドリアの行動のほうが早い。


 彼の行動は、既に地面目掛けてくり抜いた地面を叩きつけ、敵を圧死させることだけであった。


 光が収束して矢を作ろうとする。


 だがその瞬間、自身の体がまるでゼリーか何かのように潰れる衝撃を敵は感じた。


 抵抗もなく全細胞が崩壊する。痛みすら感じる暇もなく、辺りに勢いよく飛び散った鮮血を撒き散らして敵は、その生命活動を停止した。


 




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