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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
8章 隣人
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到来

 都市周辺の村人達が消えて数日、何もせずに居た訳ではないが消えた村人達の行方は、依然として見つけることが出来ないでいた。


 レギオンを支える研究部門のチームスタッフや、国自体が派遣した専門家達がそれぞれの視点で独自に捜査したがその痕跡を辿って村人が連れて行かれた所を突き止められないでいる。


 それには、理由があった。


 それぞれの専門家は、早々に魔法の痕跡を発見した。


 しかし、それがあったのは、村の地面に対してであった。


 一見して何も変わっていないような地面。しかし、それは見た目だけでここ数日の間に村人の居た村の地面は、何かによって作り変えられたか、掘り起こされていた可能性が高いという結果が出た。


 つまり村人は、地面を通して連れて行かれた可能性が高いということになる。


 しかし、魔法の痕跡を発見しても地面は全て既に土で塞がれており、それらを掘り返して痕跡を辿っていき村人達の行方を探るのは、とても困難なことであった。


 しっかりと魔法の痕跡が残り続けているのならそれも可能だろうが、時の流れと共に痕跡は徐々に消えていくものである。


 今、僅かな痕跡を追って少数の国が組織したチームが時間をかけて行方を追ってはいるが、痕跡が消え去る前に村人達を見つけられるのかは、難しいところであった。


 その間にも時間は流れていく。


 あれから、村人が消えるという事件は起きていない。


 それでもロギル達は、警戒を緩めなかった。


 皆、学校生活で日常を感じながらも何処か違う空気の流れる毎日を過ごしている。


 日常の影で、ロギル達は人知れず鍛錬に励み、そして静かに始まっているであろう言い知れぬなにかにそれぞれが備えていた。


 そして、その時がやってくる。


「……ひどい雨だな」


「最近、降ってなかったからな。その分が一気に来たのかも」


「まぁ、たまにはこういう日もあるか」


 都市を囲む防壁。その待機所で兵士達が外を眺める。


 防壁の外、都市の中共にその日は、近年でも稀に見る量の大雨を迎えていた。


 降り注ぐ雨によって景色は遮られ、晴れの日であれば遠くまで見えていた景色も今は、雨のカーテンの前にその姿を隠している。


 周囲の物音は、降り注ぐ雨音にかき消され、異常な音と臭いがしようとも誰も気づけないでいた。異常そのものが近づくまでは、誰も。


「……おい、あれ人じゃないか?」


「こんな雨の日に来る人間がいるのか。それとも、急ぎの用かな」


「そういえば、都市外で人の捜索をしていた人達が居たな」


「ああ、帰ってきたのか。なら出迎えないとな」


 雨を避けるためか黒い布で全身を覆った人物達が防壁へと近づく。


 訪問の理由を尋ねるため、兵士も一応の警戒をしながら雨の中歩く人々に近づき声をかけようとした。


 しかし。


「えっ?」


 防壁の下でその様子を眺めていた兵士は見た。


 駆け寄った兵士の頭が、一瞬のうちに体から離れて空に舞うのを。


「……て、敵襲だ!!」


 叫びに気づいた待機所の兵士達が武器を手にとって集結する。だが、その時には既に叫んだ兵士の体が袈裟斬りに切りつけられていた。


「っち!!」


 訓練で培った力を発揮して即座に賊目掛けて兵士は斬りかかる。だが、圧倒的な賊の攻撃の速度に両腕が剣を振り切る前に両断された。


 その光景を確認しても兵士達は止まらない。その一瞬に敵を切り伏せようと全ての兵士達が恐れを捨てて前へと出る。


 しかし、悲しいことに賊一人に傷一つ彼らは与えることが出来ずに、その職務を全うした。


「……」


 族の腕らしきところから血が滴り落ちる。切られた兵士達の血だ。


 賊一人の後を追って同じような黒い布で全身を包んだ者達が防壁の下へと到着する。


 そして、防壁を抜けて街へとその足を進めようとした。


「……おっと、悪いが通行止めだ。いや、通しはしてやるよ」


 防壁の中。雨の中にその男は佇んでいた。たった一人、男は雨の中で賊達に視線を向ける。


「全員あの世に送ってやる」


 ノーマン・ステイラス。彼は、自身の腕に剣を出現させてそういった。


 族の一人が即座にノーマンを見据えると斬りかかる。その速度は、とてもではないが人の反応できる速度ではない。


 雨が、賊の腕先に存在する刃物によって両断されてそのままノーマンの首へと迫る。


 だがノーマンは、自身の剣でその斬撃をどうという事も無げに止めた。


「軽いな。早いがそれだけか?」


 賊が足に力を込めて刃を進ませようとする。


 しかし、その間に賊は、足元に違和感を感じた。


 踏ん張っていた足の膝から下が、両断されて離れ離れになっていた。


「片腕の剣だけ見てたら危ないぞ。最も、既に手遅れだが」


 踏ん張るすべを失った胴体が、抵抗すら出来ずにノーマンに両断される。


 そして、その人とはかけ離れた容姿の体を、雨降りしきる中に晒した。


「……一応元人っぽい体をしているな。まぁ、筋張って、ムキムキで角生えてるし、腕が刃物になってるけど多分そうだろう」


 ノーマンは、心の中でその死体を前に詫びる。助けられなくて済まなかったと。


「助けられはしなかったが、せめて、俺が止めてやるよ。静かに眠りな」


 様子を見ていた賊達が動き出す。一斉に飛びかかり、ノーマンを切り伏せようと迫る。


 しかし、そのどれよりもノーマンの動きは速かった。


「……」


 無言で飛びかかる賊達の間をノーマンは走り抜ける。そして防壁の下で剣を持った手を垂れ下げると、賊の体が斬撃によって分解され地面へと落ちた。


「で、こいつらを率いてるのが、あんたってことでいいのか?」


 防壁の外へとノーマンは、視線を向ける。


 雨の中、剣を持った人物がノーマンの声に呼ばれたかのように出てきた。


 ノーマンの前でその人物は静かに剣を抜く。


「へ~~、あんたはちゃんと手があるのか」


 その言葉を言い終わる前に、賊の剣はノーマンの眼前へと迫ってきていた。


 しかし、慌てずにノーマンは一歩身を引いて上段からの斬撃を躱す。


「……」


 無言で剣を振り下ろした賊を仕留めるためにノーマンは腕を動かした。


 両手に持った剣で左右から挟み込むように刃を打ち下ろし斬りつける。


 賊は、素早く後ろへと下がると降りかかる2本の剣を1本の剣で受け止めた。


「……早いな」


 手を止めずに両腕の剣を交互にノーマンは繰り出して賊を切り伏せようとする。


 だが賊は、適切な距離を保ち一本の剣でノーマンの太刀筋を捌いて後方へと飛び退いた。


「……はぁ~、弱いふりってやつか?それが最高速でもないのに、限界のふりをしてるってわけだ」


 そう言ってノーマンは、剣を構え直す。


「こっちは急いでるんでね。付き合えないんだよ。悪いが、早く終わらせてもらう」


 そう言うとノーマンの体がその場から消えた。


 それを見て、賊の体もその場から消える。2人の居た地面には、圧倒的な力を掛けられ踏み抜かれた痕跡だけが残っていた。


 防壁の外壁。


 その壁を、雨音に紛れて何かが這い上がっていく。


 その何かが都市の防壁の上に辿り着き都市へと降りようとすると、何かに顔を撃ち抜かれた。


 緑の光の矢が、都市へと侵入しようとする者を全て居抜き撃ち落としていく。


 アマナは、一人建物の屋上で都市の全方位を見渡して都市へと侵入しようとする人が変異した魔獣への対処を行っていた。


「……」


 外壁に目を向けるアマナ目掛けて閃光が迫る。


 それは、赤い色をした光の矢であった。それがアマナ目掛けて飛んでくる。


 その矢の接近を、アマナは見向きもせずに都市の外を見つめていた。


 赤き矢が迫る。アマナへと矢が到達しようとしたその瞬間、赤い矢が何かに殴られてその存在を消した。


「居ましたね」


「レドリア、そっちは頼んだぞ」


「ええ、お任せください」


 矢の飛んできた方角を見定めてレドリアが飛ぶ。


 アマナは、一人静かに休みなく防壁を登ってくる大群を一人で相手にし続けた。








 



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