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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
8章 隣人
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凶兆

 悪いことが起こる前には、僅かながらにも何か変化が起きるものだ。


 それが大きいものであればある程、その変化は色濃く残るだろう。


「……ここも同じか」


「人の気配が感じられねえ」


「近いとはいえ、2つの村が同時にですか。しかし、争った形跡がありませんね」


「死体すらない。明らかに獣の仕業ではないな」


「ああ。目的のある奴のしたことだろう。犯人が欲しがっているのは、人その者だってことか」


 ロギル達は、都市の外にある周辺の村に来ていた。


 既にそこには人影がなく、人が住んでいたと思わしき生活感の残る住居だけが存在している状態だった。


 一つ一つ声をかけて生存者がいないかロギル達は確認するが、誰もロギル達の声には応えない。


 数十分後、何の成果も得られぬまま、ロギル達はその場を後にした。


「……なぁ、運転って難しいか?」


「うん?いや、そうでもないが」


 ロギルは、車を運転しながらノーマンに答える。


 舗装されていない道を走っているので、車は小刻みに揺れていた。


「やっぱり便利だよな、これ。運転に慣れてないロギルでもこの速度を安定して出せるんだもんな。俺は、走ったほうが早いけど、こういうのもいずれは扱えたほうがいい気がするよ」


「俺は、飛んだほうが早いけどな」


「そうか。ロギルには、それがあったな」


「ふむ。私は、あまり速度が出せませんからね。校長に今度習えるようにお願いするべきでしょうか」


「そうしたほうがいいと思う。まして、こんな状況じゃな」


「早く駆けつけられれば、変わる状況もあるかもしれない、か。そうだな。レドならすぐに覚えることが出来るだろう。習うといい」


「では、帰ったら早速提案致しましょう」


 実際、ロギルが車の扱いを覚えたのは、半日に満たない練習をした結果でのことだった。


 この世界では、まだ免許というものが正式には出来ておらず。道路交通法も制定されていない。


 よって、少ない練習時間でロギルは、車を運転するに至った。


 だが、これでもロギルなりの安全運転で走行している。


 ただ、ロギルが何が起きても対処できると判断している速度でなので常人のそれと比べれば、その速度はかなり早い方に入るのだが。


「……結局、何人いなくなったのかね」


「村の人々ですか?」


「いや、俺達の組織さ」


「……リオーシュに聞いた話では、連絡が取れなくなった者は、分かっているだけで30になるらしい。それとは別に、消息をたっている者が20名。合わせて50名が今は見つかっていないようだ」


「多いよな。なんで今まで気づかなかったんだか」


「潜入という調査を行っていた者もいるしな。それどころか、偵察に出たまま死ぬということも俺達にはあり得る。なんせ常人では、対処できないような物事が起こった地にたった一人で行かされることもあるからな。その上、死んでも誰もその人間を探さない。俺達は、無いはずの組織の人間だからだ。身元も、所属も謎のまま俺達は死ぬ。そのせいだろうな」


「だからって、これか。いや、そうだよな。普通探されないはずなんだよな。俺達は」


「そうだ。レギオンを知っている者は、身内以外は死ぬ。そういう決まりだ」


「それで今回は、共喰いってことか。身内が敵か。嫌な感じだ」


「ですが、消息をたった者の中でレギオンに成った者は少ないとも聞いています。そこだけが救いでしょうか」


「と言っても、5人だけどな。十分多いだろ。俺達が6人であることを考えれば」


「裏切り者にも、一つのレギオンチームがいると考えるべきか。はぁ~、気が重い」


「安心しろ。恐らく、もう既に人の形をしてはいないだろうからな」


「それって安心できるのか、ロギル先生?」


「善人を殺すわけじゃない。なら、気が楽だろ」


「……なるほど。そうかもな」


 車がなだらかな道に差し掛かったことでロギルは、アクセルを踏み込む。


 車は、速度を上げて行き交う人々がいなくなった道を、ただひたすらに突き進んでいった。


「まぁ、今は何処も危ないって感じでさ」


「それでここに来たんだね」


「そう。多少は顔を知ってる人が居た方が、やっぱり安心でしょ」


 そうミッチェは言う。


 彼女の前に座るサシャは、久しぶりに現れた修行仲間の前に飲み物を入れたコップを置くと、テーブルにおいてあったお茶菓子も同時に寄せて勧めた。


「ありがとう。しかしサシャ達は、こんな所にいたんだね。上手く先生やれてる?」


「えっと、多少はね」


「ってことは、まだ自信は無いわけだ」


「うん。ロギルみたいには、まだ」


「いや、そこよ。あのロギルが先生でしょ。驚きだって」


「ああ、それはあるかも」


 コップの中のお茶を一口飲んでミッチェは、お茶菓子をつまむ。そして、食べたお茶菓子を残ったお茶で一気に流し込むと席を立った。


「さて、仕事に私は戻るよ。これから空き教室の清掃活動だって。楽な仕事で嬉しいよね」


「楽?」


「ここに来る前は、組織の管理下のレストランで料理作ってたんだ~。それに比べるとお昼が特に楽かな」


「そんなところもあるんだ」


「まぁ、そこも楽な方らしいんだけどね。それよりもこっちにして正解だったよ」


 ミッチェは、相談室のドアに向かってから一度振り返る。


「あ、ロギル帰ったらまた顔見せに来るから、相手よろしく」


「うん」


「……それと、他の連中の居場所も聞いたんだけど答えてもらえなかった。消息が切れやすい立場だからって言ってたけど、あれは……」


「……分かった。私達も気をつけないとだね」


「うん。何かあったら私の部屋に泊めてあげるから、いつでも来なよ。ここの地下に部屋もらったからさ」


「え、いいなぁ~。分かった。ありがとね」


「じゃあ、また午後に来るね」


 そう言うとミッチェは、相談室を出ていった。


 その数秒後、明らかにミッチェが出ていくのを待っていたようにアマナが部屋に入ってきた。


「昔なじみとの会話は済んだ?」


「午後も来るって」


「午後は、いつもの連中が来る。余計なこと言わないように気をつけるんだぞ」


「うん。ロギルも帰ってくるしね」


「ああ、問題はあったが午後には帰ってくるだろう」


「……、人、消えてたの?」


「ああ、全員残らずな。これで5つも村が今月に入ってなくなったことになる。人工は、多くないが。それでも合計で200人前後の人々が突然居なくなったことになるな」


「昨日までは、普通に居たはずなのに」


「そこだよな。私が見た限りでは、消える前に視界を遮断するために周囲を暗闇にする魔法を意図的に使われている。アーチャーの遠目を知っているやつがいるんだろう。間違いなく敵側にもいるだろうな。私と同じレベルの力を持っているやつが」


「それで、どうするの?」


「この周囲に村は、もうそんなに無い。目印をつけておく。これで連れ去られてもある程度は辿れるだろう。だが、もし次は、村を襲うことが目的じゃなかった場合」


「場合?」


「この都市が戦場になる可能性が高い。気を引き締めておいてくれ。私達が居ない間、この学校を守るのは、サシャ達なんだからな」


「うん、分かった」


「……そうならないことを祈りたいが、嫌な予感がする。こういう時は、当たるもんなんだよな。嫌な予感って」


 外の天気は、晴れ渡って穏やかな風が吹いていた。


 しかし、その景色とは裏腹にアマナは、何か得体のしれない不安のようなものが迫ってくるのを感じていた。





 

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