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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
7章 知識
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抜殻

 ベルゼビュート達を乗せた馬車は、速度を殺さずに目的地の建物へと近づくとそのまま車体を建物の壁に打ち付けて粉砕した。


 人影の見えない建物の中に、轟音が響き渡る。


 その中で、迅速にサブノックに率いられた騎士達が馬車を下り陣形を整えて整列した。


「既にこの建物から逃れることは不可能だ。大人しく投降するか。ここで死ぬか。好きな方を選ぶといい」


 サブノックが建物内で声を張って宣言する。


 しかし、その声への反応は見受けられなかった。


「では、制圧と行こう」


「はっ!!」


 騎士達が武器を構えて進軍する。サブノックは、一人破壊した外壁の近くに佇むとゆっくりとその視線を右に向かって向けた。


「見えないとでも思ったのか?」


 サブノックが腕を振るとその掌に一本の剣が出現する。それを、何もない空間に向かってサブノックが投げつけると、何かがそこから飛び退くような音が聞こえた。


 剣は、轟音を発して飛んでいった壁へと突き刺さる。


「ロギル殿が戦った相手にもそのような力を持つサモナーが居たな。しかし、見えないからとて匂いが隠せるわけではない」


 サブノックが手の指を開いて握ると、その指の隙間に4本の剣が出現して握られた。


「いつまでも逃げられるものではないぞ」


 先程よりも速度を上げてサブノックは、4本の剣を投擲する。それを左右の腕で交互に行い、止むことのない剣の雨を建物の中目掛けて投げつけていった。


 すると、5投目で剣先が何かを切り裂いて何もないはずの空中に紅い雫が溢れ出す。


「血までは、隠せぬか」


 空中に浮いた鮮血は、足を止めずに物陰へと隠れようとする。


 しかし、痛みに動きを止めた一瞬のうちにサブノックの腕には、弓が握られていた。


「的が見えた今、射るのは容易い」


 その弓から迷いなく矢が放たれる。


 そしてその矢は、走り出そうとしていた何者かの胸を正確に打ち抜いた。


「……ふむ。この死体では、人とは到底思えぬな」


 矢が刺さった建物の壁。そこに、紫の肌をした人のような形をした何かがその動きを停めて現れた。


 サブノックがその死体へと近づこうとする。すると、建物の上層から壁を突き破って何かが落ちてきた。


「ガンナー、というやつか」


 それは、骨の体をした水色の銃を持った魔獣であった。元人であったとロギルは言うが、その体にもはや人であった頃の面影はない。


 骸骨のガンナーは、銃を構えるとサブノック目掛けて乱射する。


 サブノックは、剣を出現させて持ち変えると、弾丸を剣先でいなして弾いた。


「もう一人の銃使いはどうした?隠れているのか」


 骸骨から答えが返ってくることはない。


 その代わりに、骸骨の放った特殊な弾丸が空中で弾けると、巨大な骸骨の騎士の霊獣がその場に出現した。


「ほう。少しは、楽しめそうじゃないか」


 剣を霊獣目掛けてサブノックは投擲する。しかし、剣は霊獣に傷すら付けることが出来ずに弾かれた。


「なるほど。半端な武器では、効かんか」


 霊獣の武器がサブノック目掛けて振り下ろされる。


 それを体に当たるスレスレで回避するとサブノックは、落ち着いた表情で新たな剣を腕に出現させた。その剣は、先程まで投げてきた剣とは見た目もことなり、しっかりとサブノックの手に握られている。


 サブノックは、その剣を霊獣の武器目掛けて全力で振り下ろした。


 すると、霊獣の武器にヒビが入って粉砕される。サブノックの持っている剣は、刃こぼれ一つせずにその形を保っていた。


「頑丈な剣だろう。切れ味はそこそこだが、この硬さが気に入っている」


 折れた武器を振るって霊獣は、サブノックへと攻撃を仕掛ける。しかし、サブノックはその攻撃を剣に体重を乗せて大きく弾くと床を蹴って前へと飛んだ。


「力では私が勝っていたようだな」


 剣を霊獣の頭目掛けて振り下ろす。サブノックの持った剣は、まるで斧でも打ち付けたかのように霊獣の頭を叩き割った。


 その瞬間、ガンナーが銃弾をサブノックの攻撃の隙を突いて放とうとする。


 しかし、そのガンナーの体を何かが高速で蹴り抜いた。余りの衝撃に建物の壁へとガンナーは叩きつけられる。


 その光景を、翼を消して地面に着地したロギルは眺めていた。


 無言でロギルは、腕にソフィーの尻尾を出現させて構える。


 ガンナーは、起き上がることもせずそのまま人間においては、無理な体勢で易々と銃を構えると、そのままロギル目掛けて霊獣の出現する弾丸を射出した。


「……放つ前に止めろ。だったか」


 霊獣の弾丸は、銃から放たれた時点で既に起動することが決まっている。


 その起動の際の僅かな時間の間に弾は、銃の内部から外へと撃ち出されて目標へと近づき実体を顕現させる。


 撃たれた時点で霊獣の出現を止めることは、不可能であった。


 だが、それでも霊獣が顕現するまでには、少しの時間がある。


 その僅かな時間。その間にロギルは、迷うことなく地面を蹴ると一瞬背中にまた翼を出現させて前方へと加速した。


 銃弾が、内包した魔力を外へと溢れさせて霊獣を構築し始める。


 その横を、何でもないことのようにロギルは、あっさりと通り過ぎて行った。


 ソフィーの尻尾を加速と共にロギルは、振り下ろす。その斬撃で、ガンナーの持っていた銃は、その骸骨の体ごと真っ二つに両断されて地面へと散らばった。


「……手応えがないな。こいつの体の構造故か、それとも」


 地面へと霊獣の弾丸が空中から落ちる。魔力を扱うものがこの場から消えたことで、霊獣はその制御を失い顕現することが出来ずに消えた。


 その光景をロギルは、振り返って確認する。ソフィーの翼と尻尾を消すとロギルは、笑顔で近づいてくるサブノックへと歩み寄った。


「また腕を上げたようですな。ロギル殿」


「いえ、ソフィーのおかげです」


「確かに、以前とその力は桁違いだ。しかし、それは扱うロギル殿との息が合ってこそその力を発揮している。以前とキレが明らかに違うのは、私の見間違いではありませんぞ、ロギル殿」


「そう言っていただけると嬉しいです」


「さて、片付いたようだね。ご苦労諸君」


 馬車から、そう言ってベルゼビュートとバアルが降りてきた。


 二人に向かってサブノックは、姿勢を正して礼をする。すると、そのタイミングで騎士達が上層から捉えた魔獣らしき者を1名運んできた。


「コイツだけか?」


「あとは、止むを得ず」


「そうか」


 その魔獣の顔は、口が裂け、尖った歯が並んだオーガのように見えた。その明らかに人とは、呼べもしない何かに向かってベルゼビュートは近づく。


「それで、君達はこれで全部かな?」


「……」


 魔獣からの返答はない。ベルゼビュートは、腕を持ち上げるとその腕で魔獣の頭を殴りつけて粉砕した。


「!?」


「抜け殻だな。人の感情は残っていない。操り人形か。鍛えた人の体を使ってこれを作り上げたな。非道で、面白味のないことをする」


 返り血でベルゼビュートの服が汚れる。だが、立ち上がってベルゼビュートが指を弾くと汚れは消えていた。


「サブノック君。君の報告にあった銃使いが一人いないようだが」


「はっ、もしやこの結界内には」


「いないだろうね。どうやら、先の失敗の時点で既に逃げたようだ。となると、奴が実行犯か。不快だな。この場で殺せないことが不服で仕方ないよ」


「如何いたしますか?」


「我々への人間界での活動許可は降りないだろう。最近は、皆平和主義だからね。我慢するしかないだろう。まぁ、一応言ってはみるけどね。期待は、しないほうがいい」


 そう言うとベルゼビュートは、ロギルに視線を向けた。


「後はそっちに任せることになるだろう。悪いね」


「いえ、俺達の仕事ですから」


「そう言ってもらえると助かるよ。さて、撤収と行こうか」


 残った遺体を、騎士達が回収して馬車へと乗せる。ロギルも馬車へと乗り込み、歯切れの悪いものを感じながらもその場を後にした。





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