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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
7章 知識
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劣化

「ほう。なかなかに面白いことを、最近の人間は考えるじゃないか。いや、その姿では最早人間とは、呼べないかな」


 通路を削り鋭い剣の切っ先をベルゼビュート目掛けて霊獣は向ける。


 そのままベルゼビュートを貫こうと剣を突き出した霊獣であったが、その剣の刀身に何かが一瞬のうちに巻き付いた。


 次の瞬間、霊獣の体は、宙へと投げられる。


 刀身へと伸びているまるで金属で出来たかのような鞭状の物は、ロギルの腕先から光を放って出てきていた。


「ほう、リリスの尻尾がそのように固く鋭くなるとは。本当に普通の型を破った成長をしたのだね。いやはや、見事なものだ」


 ベルゼビュートが空中へと投げられた霊獣へと手を向ける。


 その瞬間、ロギルはベルゼビュートのしようとしていることを感じ取り、空中で霊獣からソフィーの尻尾を離した。


 それを未だ漂っている霊獣の体が、その場で何かに掴まれたかのように固定される。


 そして、ベルゼビュートの握りつぶす拳の動作に合わせて、その胴体が握りつぶされて壊れて消滅した。


「さて」


 ベルゼビュートが指を鳴らす。


 それに恐れを感じたのか銃を持った魔獣は、銃弾を一発地面に放つ。


 すると、その銃弾から辺り一面に視界を奪う大きな閃光が放たれた。


「ふむ。人の知恵だな。それが有効なのは、人が相手である時だけだというのに」


 目を手で庇いながらベルゼビュートは、そういう。


 光が収まって目をロギル達が開けると、そこに銃を持った魔獣の姿はなくなっていた。


「逃がした、訳ではないですよね」


「無論だよ。泳がせているというわけだ。我々は、あれ一人の仕業だとは思っていない。全てを見つけるために案内してもらおうじゃないか」


 少し顔に笑みを浮かべながら路地から大きな歩道へとベルゼビュートは歩き出す。その後に続いてロギル達が歩道へと出ると、サブノック達が馬車に乗ってこちらに来ていた。


「ご無事で」


「当たり前だとも。それよりも、解決は目の前だよ。君達の仕事が始まる。気を引き締めるように皆に言ってもらえるかね」


「はっ!!」


「では、行こう。印をつけて走り回る獲物を狩ろうじゃないか」


 ロギル達が馬車へと乗り込むとベルゼビュートの指示で馬車が走り出す。


 ロギルには、分からないが。ベルゼビュートは、相手の位置が正確に分かっているらしく迷いなく進むべき道を指し示し馬車を導いていった。


「我々は、この街の地図など既に頭の中に入っている状態です。従って、この街で我々から逃げ切るのは余程の力を持たぬ者でなければ不可能でしょう」


 バアルの言葉を聞きながらロギルは、外を眺めながら思う。


 ベルゼビュートの力は、今だ得体がしれなくロギルでさえ躱せはしないだろう。


 そして、澄ました顔で座っているこのバアルも、恐らくベルゼビュートに匹敵、または近しい力を隠し持っている。


 そんな者達を、人が相手に出来るのだろうか。それが、例えレギオンであっても確実に勝てるとは言えないだろう。


「……」


 考えれば考えるほどロギルの頭の中には、恐怖が渦巻いていく。


 しかし、戦うことに慣れたロギルにとって恐怖とは、常に乗り越えてきた馴染みある壁に過ぎないものであった。


 だが、今回の壁には、得体が知れないという超えることを躊躇する何かが混ざっている。


 その何かと恐怖と、それを思い抱いていることを悟られまいとするロギルの感情。それらの気持ちに整理をつけて戦いに集中しようとロギルが周囲に視線を向けたその先。


 そこでバアルは、恍惚とした表情でロギルを見つめていた。


「いいですね。それでいいんです。恐れは正しい。信じなさい。貴方の魂が、態々警告してくれているのですから」


「……」


 隣にいるのは、まるで少女のような体をした堕天使と名乗る魔獣である。


 その体は、華奢で愛らしく、脆くすら見える。


 だが、今のロギルには、隣に座っているものがどうしても、見た目通りの少女だと感じ取ることが出来なかった。


 そう、もっと大きな、何か得体の知れない……。


「足が止まったな。着いたようだね」


「総員、戦闘準備」


 サブノックの言葉で、騎士達が姿勢を正す。


 その言葉にバアルからロギルは、目線を外すと軽く息を吐いて肩の力を抜いた。


「おや?」


 短くベルゼビュートがそういったのが聞こえる。


「向こうにいい目をしている者がいるようだな。魔力の流れに住む虫の力を借りた力か。脆弱な」


 その瞬間、馬車が衝撃で揺れた。


「まさか、アーチャーか!?」


「矢の雨を人間一人で降らすとは、まるで神の血を引いた超人のようだな。だが、その程度ではそよ風程度にしか僕は感じられないぞ。さて、どうする?」


 ロギルが外へと目を向けると光の矢が馬車を避けて地面へと突き刺さっていく。

 

 馬車の上にある何かに矢は弾かれているとロギルは感じた。そして、その何かは、恐らくベルゼビュートが生み出している。


「ほう、近づいて来るか」


「……サブノックさん、ここは俺が」


「ロギル殿、しかし」


「残りの連中を片付けてください。そうすれば、俺も安心して帰れます。ここで逃す方ような事態には、したくない」


「いや、二人程度我々で」


「いいじゃないか、ロギル君に任せるとしよう。僕もロギル君の力には、興味があるからね。この僕が認めようじゃないか」


「……頼めるか、ロギル殿」


「ええ。では、後を頼みます」


 馬車の後部からロギルは、飛び降りる。そして、背中にソフィーの羽を部分召喚してそのまま飛び立った。


「ほ~~、この馬車を追い抜くとは、なかなかの速度だ」


 空を直進するロギル目掛けて光の矢が空を切り迫る。


 しかしロギルは、その尽くを、ソフィーの尻尾を上手く使って弾き、あるいは機動を逸らして空を獲物目掛けて直進していった。


 敵との距離が縮まるに連れて弾く矢の間隔が短くなっていく。だが、ロギルの動きに迷いはない。


 敵のアーチャーへとソフィーの尻尾が届く寸前まで距離を詰めたその瞬間、建物の影から何かが横から飛び出してロギル目掛けて突進してきた。


 それを、もう片腕にレヴィアタンの細く小さくした尻尾を呼び出してロギルは、その攻撃を防ぐ。


 空中で一回転して攻撃して来た者の攻撃を逸らしながらその姿を見ると、その人物は、皮膚が全身赤く変色し魔力で出来た剣を持っていた。


「……魔獣化したブレイダーか」


「ウアアアアアアアアアア!!!!」


 咆哮を上げて剣を持った魔獣は、ロギルから離れて地面へと着地すると再度ロギル目掛けて駆け出した。


 ロギルは、それに構わずアーチャーへと目を向ける。


 アーチャーは、マントで顔を隠しているがその腕は、羽毛で覆われている。そして、鋭い鳥のような目がマントの下に光っていた。


「分かりやすくて助かるな。先生」


「ええ」


 ロギルの近くに魔法陣が出現すると、その魔法陣からアーチャー目掛けて光の閃光が放たれる。


「!?」


 その瞬間、アーチャーの手元がぶれて矢の狙いが逸れた。次の矢を、感覚で撃とうとしたその瞬間には、アーチャーの魔獣の頭は、ソフィーの尻尾の一閃で切断されて空中を舞う。


「アアアア!!!!」


「早いが動きが直線的すぎるな。振りも遅い」


 剣を持った魔獣の手首にソフィーの尻尾が巻きつく。そして魔獣は、そのまま空中へと跳ね上げらた。跳ね上げられた衝撃で、魔獣は体の制御を失い無褒美な状態となる。


「レギオン、という程でもない、と言ったところか」


 落下を始めるその瞬間、魔獣の五体をソフィーの尻尾が通り過ぎていく。


 地面に魔獣の体が落ち始めると、その体がバラバラに分かれて周囲へと落下を始めた。


「うちのアーチャーは、視界に頼らなくても撃てる。ブレイダーは、もっと動きが機敏だ。あいつらを見てると、アンタ達はそこまで辛い相手には、感じられなかったかな」


「やるもんだね」


 ベルゼビュートが、一人そう呟く。


 ロギルは、羽を使って空へと飛び上がると、先へと進んだ馬車目掛けて自身も風を切り進み始めた。




 

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